「…トリノオリンピック…」
「え、何だって?竜崎」
「今年はトリノオリンピックありましたよね」
「金メダルすごかったね」
「夜神くんいつの間に見てたんですか?私捜査してたのでニュースでしか見てませんよ」
「…お前が資料見ながらケーキ食べてる間、皆で見てただろ…」
「そうでした。私が捜査しているのに、皆テレビ見てましたね」
「オリンピックくらい見てもいいんじゃないか…四年に一度なんだし」
「そう、それで思ったんですが」
「何?」
「今年オリンピックあったのに2月は28日までしかないんですよね」
「……」
「カレンダー見ておかしいと思っ…、なんで笑ってるんですか?」
「トリノオリンピックは冬季、29日まである年にあるのはまた別のオリンピックだろう」
「…わ、わかってますよ!さっき、その後に「気づきましたけど」と付け足すつもりだったんですよ!」
「そうか…」
「笑いすぎですよ夜神くん。感じ悪いです。私馬鹿にされるの嫌いです」
「馬鹿にはしてないが、馬鹿だなとは思った」
「……」
「Lでもそんなうっかりミスをするんだな、と思ったらちょっと親しみわくね」
「嬉しくありませんよ」
「僕のケーキあげるから、怒るな」
「怒ってはいませんが、ケーキは頂きます」
「そうか、もう2月も終わりなんだな」
「今日28日ですしね」
「2、3日分損した気分になるよな、2月って」
「そうですね、ただでさえいくら時間があっても足りない状況で、31日までないのは困ります」
「いい一年になるといいなぁ」
「キラを捕まえますよ」
「そうだね」
「で、今日28日なんですよね」
「そうだよ。明日は3月1日だよ」
「そうですね…」
「何だよ?」
「いえ、夜神くんは今日も一日捜査ですか?」
「当たり前だろ?と言うよりそれ以外やることないし」
「何か言うことはないんですか?」
「…何もないぞ?」
「あるでしょう?」
「僕、何かしたか?」
「一応キラ候補として夜神くんの事は色々調べたんですが、今日言うことありますよね」
「今日は僕の誕生日だが、別に言うことはない」
「それです」
「…誕生日アピールして欲しかったのか?」
「プレゼントが欲しければ、あげないこともありませんよ?」
「ははっ!いらないよ」
「夜神くんは無欲ですね」
「手錠外してくれ、とか、一人にしてくれ、とか言った所で叶わないんだろ?」
「それは無理です」
「一日何も考えずにごろごろ寝ていたい、とか」
「それは構いませんよ」
「…嘘だよ。そんなことしても僕が耐えられそうにない」
「基本的に真面目で規則正しいですからね、夜神くんは」
「ぼんやり時間を過ごすってもったいないよ」
「そうですか?ボーっと過ごすのも悪くないですよ」
「やることなくて暇ならそれもいいかもしれないけどね」
「やること山積みの合間にボーっとするのが通の時間の使い方です」
「…通って…」
「で、特に欲しいものとかないんですか?夜神くんは」
「うーん」
「大抵の物は買えますよ。…あ、この施設の設備がどうの、とか公的なことは別の話にして下さいね」
「私的な物で欲しいもの…思いつかないな。ずっとここにいるから不自由は不自由でももう慣れたし。今となってはそれほど不便も感じなくなったし」
「そうですか…ケーキやその他の物は捜査本部の皆さんとワタリが揃えます」
「え、皆でお祝いしてくれるの?」
「最初は何もする予定なかったんですが、松田とミサさんがうるさくて」
「…ああ…」
「ホントはプレゼントも予定になかったんですが、まぁ捜査協力もして頂いてることですし、年に一度くらいなら何かあげてもいいかと」
「竜崎らしいな」
「で、ホントに欲しいものないんですか?」
「竜崎の命」
「それは自白ですか?」
「ははっ!そんなわけないだろ。キラならそう言うかなと思ってね」
「夜神くんがキラなら、これが最後の私からのプレゼントになるかもしれませんよ。欲しいものを言うなら今のうちです」
「僕が捕まるから?」
「そうです」
「竜崎が死ぬからかもしれないね」
「それもあるかもしれません」
「でもね、本当に欲しい物はないんだよ」
「私の命はあげられませんしね」
「それはもういいよ…そうじゃなくて、」
「物は思い出になりますよ」
「物でなくても思い出にはなるよ」
「記憶力のいい夜神くんなら、それもありかもしれませんが、風化しますよ」
「竜崎の事も?」
「…夜神くんがキラなら、風化しないかもしれませんね」
「僕はキラじゃない」
「なるほど、夜神くんが欲しいのは思い出ですか」
「生ぬるい思い出、いいね。何物にも代えがたい僕だけの記憶だよ」
「私は記憶より記録の方を信じますが、まぁそれもいいでしょう」
「曖昧になるからいいんだよ。溶けてぼやけて甘くなる」
「お菓子みたいですね」
「いつか、今日この日のことを思い出して、楽しかった、と思えればいいと思うよ」
「その程度の思い出が欲しい、と?」
「その程度で十分だよ」
「無欲ですね。夜神くんが望むなら、」
「望むなら?」
「…いえ、私もその程度のお菓子みたいな記憶の一部になれれば結構ですよ」
「竜崎がそんなこと望むなんて、らしくないね」
「夜神くんの誕生日だからですかね」
「…竜崎の誕生日は?」
「15月36日」
「それどこぞのきらきら星人が言ってた誕生日だな。30歳まで行ったら20歳まで毎年若返って行くという」
「イゼルローンの諸星あたる氏のことですね。何もかもが懐かしい…」
「なんか宇宙戦艦ヤ○トが混じってるぞ」
「今の若者は知りませんよそんなこと」
「どちらも名作だよ…それはさておき、竜崎は全部謎なんだな」
「Lですから。素性がバレるようなことは明かせませんよ」
「素性もわからない人から物をもらうことは絶対できないね」
「それは告白と受け取っても?」
「寝言は寝て言え」
「…私がキラに殺されたら、わかるんじゃないですか」
「…僕がお前の名前を知って、殺すから、か?
「どうでしょうね」
「ああ、じゃぁ僕への誕生日プレゼントはキラを捕まえることにしてくれよ」
「それは私の目的であって、プレゼントと呼ぶには不適当ですよ」
「キラを一緒に捕まえて、15月36日生まれのお前へのプレゼントにもしてあげるよ。それで満足?」
「結局、めぼしい物は思いつかなかったってことですね」
「いや、だから物はいらないって…、何笑ってるんだ、竜崎?」
「いえいえ、プレゼント、プレゼント…いい言葉ですね、私好きになりました」
「…ああそう…よかったね…」
「さて、パーティー始まるまでにこの資料読んじゃいましょうかね」
「僕はデータを検索するよ」
「そうだ、肝心なことを言い忘れていました」
「何?」
「誕生日おめでとうございます、夜神くん」
「ありがとう、竜崎」

何もない毎日でも、変わりない毎日でも、記憶は続く。

…生きている限り。

WEB拍手お礼07-HAPPY BIRTHDAY to you編。

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