「日本は」
「え?」
「桜を愛でる風習があるんですよね?夜神くん」
「花見のことか?外国はやらないんだっけ」
「桜のみを愛でることはないですね」
「日本の国花だし、馴染みは深いよ」
「さっき大学へ来る途中、公園にシート引いて陣取っているスーツ姿の男性をたくさん見かけました」
「ああ、それ新入社員がやらされるやつだね。かわいそうに」
「会社を挙げて花見をするんですか?仕事もせずに?」
「親睦会も兼ねてやるところが多いらしいよ。この季節、夜に桜の名所に近づくと大変なことになるから気をつけてね、竜崎」
「流河です、夜神くん」
「ああ、そうだった」
「酔っ払いの喧騒に巻き込まれに行くほど酔狂ではありませんし、そんな所に行こうとも思いませんから大丈夫です」
「あ、そう」
「しかし花見と言うのはもともと貴族の楽しみだったということですが、現状は嘆かわしいですね」
「まぁちょっとね、花見にかこつけて騒ぎたいだけだろ、と思うことはよくあるけどね」
「日本はさすがに国花というだけあって桜が多いので、綺麗だとは思いますよ。一斉に咲いて一斉に散るのは潔い」
「桜は日本人の死生観の代名詞らしいよ」
「死生観ですか…西行ですね」
「よく知ってるね。死ぬなら満開の桜の下で死にたいというやつだね」
「夜神くんはどうですか?」
「僕?僕は普通に老衰で寿命を全うして自宅のベッドの上で翌朝妻が気づいたら死んでいた、というのでいいよ」
「…本気で言ってるんですか?」
「どれだけ望んでも、いつ死ぬかわからないんだし…あんまり考えても仕方ないんじゃないかな」
「そっちの方が夜神くんらしいですね」
「僕らしいってどんなだよ…そういう流河はどうなんだ?死に方に望みでもあるのか?」
「…キラとしての問い、じゃないですよね?」
「僕が聞いたらなんでキラになるんだろうな?」
「キラ候補ですし」
「じゃぁ聞かないよ」
「…私はよく死について考えますよ。仕事柄いつ死んでもおかしくないですし、キラ事件の捜査をしている今は毎日考えます」
「自分の死に方について?」
「ええ、キラに殺されるならいつ、どんな状況かと思って」
「不健全だなぁ」
「いえ、読みきれれば逆手にとってキラを捕まえることが出来ます。自分の命と引き換えに、なんて安っぽいヒロイズムは持ち合わせてませんよ」
「じゃぁ世界の名探偵Lが考える自分の殺され方とは?」
「キラがすぐ目の前にいる状況で、私の死を見届けてくれるでしょうね」
「…なるほど」
「私はLですからね」
「知ってるよ」
「夜神くんが、私の死を見届けてくれるんでしょうかね」
「僕はキラじゃないから、その場にはいられないんじゃないかな」
「それは残念ですね」
「…で、流河は桜に興味があるの?」
「何故ですか?」
「いや、突然桜の話なんかしてくるから」
「ああ、そうですね。夜神くんは桜はお好きですか?」
「嫌いじゃないよ」
「そうですか。今日捜査本部の皆さんが花見をしたがっているので、夜お暇なら来ませんか」
「捜査本部なのに、気楽だなぁ…」
「ここ数日大きな動きもないですし、数時間なら構わない、と私が許可を出しました」
「そう…じゃぁお邪魔しようかな」
「それはよかった。桜で有名な屋敷を貸切りましたので、多少騒いでも大丈夫ですよ」
「…金持ちだな」
「Lですから。染井吉野が綺麗なところらしいです」
「…染井吉野、と言われても桜の違いはよくわからないな。色くらいしか」
「色々種類あるようですね。私もよくわかりませんが」
「バラ科サクラ属落葉高木または低木…」
「といえば?」
「梅かな?」
「林檎とか」
「…林檎ね」

え る し っ て い る か 。

「死神が好物らしいですよ。夜神くん」
「へぇ…死神って本当にいるのかな?」
「キラが林檎を好きなのかもしれませんね」
「なるほどね」
「夜神くんは林檎はお好…」
「嫌いじゃないよ。やっぱりそう来るのか!」
「キラ候補ですし」
「もういいよ。じゃぁ今日の花見には林檎たくさん持って行くから、皆で食べてくれよ」
「どういう意趣返しなのか理解できません…アップルパイにして下さい」
「今食ってるそれは何だ?」
「アップルパイですね」
「流河の方が林檎好きなんじゃないの…?」
「甘い物なら何でも好きですよ」
「ああ、そうだったね…」
「今日の花見、楽しみですね」
「そうだね…」

桜の木の下には、死体が埋まっているとかいないとか。
桜の語源は古事記に出てくる神様の名前から取ったとか。
穀霊が鎮座する場所を表す「さ」「くら」だとか。
色々、いろいろ。
桜にまつわる話は多い。
一斉に咲いて、一斉に散る。

キラとLの戦いは、どちらか片方だけが、散る。

WEB拍手お礼08-サクラサク編。

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