「うわ何だこの部屋」
「何がですか?夜神くん」
「わざとらしいよ、竜崎。昨日までこんなモノなかったぞ」
「ああ、コレですか。映画を観ようと思って取り寄せたんですよ。壁一面のスクリーンと音響設備。映画館並みの映像とサウンドをお楽しみいただけます」
「どこの商品売り込み文句だよ?…映画観るの?」
「はい。今世間で話題になっているらしいですよ。夜神くんも一緒に観ませんか」
「映画なんて悠長に観てていいの?」
「これも捜査の一環ですよ。市場調査と心理分析を兼ねています」
「…今の日本人はどういう思いでこの映画を観るのか?って考えてるのか…」
「犯罪傾向も見えてきますよ。犯罪は常に社会情勢と共にありますからね」
「僕は純粋に観るけどね!」
「またまた、わざとらしいですね夜神くん」
「何でだよ。これ、ちょうど観たいと思ってたんだよ。最近捜査本部に足を運ぶことが増えたからなかなか時間取れなくてさ」
「それはちょうど良かったです。あ、コーラとポップコーン、ハンバーガー、ポテトなど色々用意してありますのでご自由に」
「何そのアメリカナイズされたピンナップ」
「映画といったら定番でしょう?これらのものを口にしながら映画鑑賞」
「僕は飲まないし食べないよ。映画に集中したいからね」
「ええっ!映画観る人はすべからくコーラ飲んでポップコーンを頬張っているものじゃないんですか」
「んなワケないだろ。竜崎は映画観る時コーラ飲んでポップコーン食べるのかい?」
「コーヒーとお菓子は私の友ですよ」
「あ、今すごく可哀想な発言聞いちゃったけど、聞き流しておくよ。竜崎が定番に入らないなら、他人も入らなくて当然だよね」
「愛と勇気だけが友達の正義の味方と一緒にしないで下さいね。そういう意味じゃないですから!」
「そっちの正義の味方の方が友人圧倒的に比べるまでもなく多いよね。わかってるよ」
「友人は夜神くんがいるからいいですよ」
「え?……、うん、そうだね。プロテインだね」
「寒いギャグを人様からパクるのはやめてください。まぁ、飲み物食べ物はお好きにどうぞ。さっさと観てしまいましょう。その為に夜神くんを呼んだんですから」
「映画一緒に観たかったが為だけに僕を呼び出したのか!」
「夜神くんは、私の初めての友人ですから」
「僕を呼び出す理由にそれを持ってくるな。意味わかんないよ」
「ツーシートですし、始まったら部屋は照明落としますし、締切ますし、密室に二人っきりになります」
「…嫌な表現するなよ」
「友人とでもないとやってられませんよね」
「一人で観ればいいんじゃないかな?」
「ここまで用意した私の好意を無にするとおっしゃるんですね」
「なんでそんな高圧的なのかが僕には理解できないんだけど」
「では訂正します。友人と一緒に映画鑑賞を、一度やってみたかったんです」
「え…あ、そう」
「今まで友人、いませんでしたから」
「……」
「映画、一緒に観ませんか?」
「…わかったよ竜崎。一緒に観よう」
「…と、いうことにしておきます。ではこちらに座ってください」
「お前…!」
「はいポチっとな。カーテンも自動で閉まりますしセッティングもリモコン一つで自由自在です。いい世の中になりましたよね」
「金持ち特権発動しまくりだな…」
「Lで良かったと思いますよ」
「……」

ガサガサ。
バリバリ。
ボリボリ。
じゅるるー。

「……」

ガサガサ。
バリバリ。
ボリボリ。
じゅるるー。

「……」

ガサガサ。
バリバリ。
ボリボリ。
じゅるるー。

「うるさいよ竜崎!!映画に集中できないだろっ!!」
「ええっ!?映画館では日常ではないのですか!?」
「二人しかいないしここ映画館じゃないしめちゃめちゃ近距離で音させられたら気になる!」
「わがままですね…わかりました、可能な限り静かにしておきます」
「頼むよ…せっかくシリアスで盛り上がっているところなんだから」
「人死にすぎですよね」
「話しかけるな!」
「…はい…」
「……」

ひた。
さわさわ。
さわさわ。
ゴソゴソ。

「……」

しゅるしゅる。
さわさわ。
ゴソゴソ。

「…さっきから何触ってるんだぁーーーー!お前ーーーーっ!!」
「映画といったら痴漢!恋人の情事!お約束のシチュエーションじゃないですか!」
「痴漢にあったこともなければ情事を目撃したこともないし、お前とは恋人同士でもないッ!!そもそもこの映画はポルノでもなければ恋愛映画でもない!!推理サスペンス映画だっ!!変態行為は断固拒否する!僕を巻き込むな!大人しく映画を観させろ!喋るな!動くな!食べるな!」
「…映画の選択を間違えたということですね」
「根本的にお前の思考が間違ってる!」
「暗い密室に二人っきりで、映画鑑賞というこの環境。心理学的に見ても展開としては悪くないはずなんですけどね…」
「何か言ったか」
「次はロマンポルノものでも観ましょうか」
「黙れ馬鹿。観ないよ」
「夜神くんの心理は難解ですね」
「僕の心理なんか理解してもらわなくて結構だ。ああああああもう!一番いいところを見逃しちゃったじゃないか馬鹿!もっかいあとで観るからな!!」
「犯罪者の心理は良く見えるんですが、友人の心理って見えませんねぇ。私もまだまだ勉強が足りません…」
「さっきから指くわえてブツブツ何言ってるのか知らないが、お菓子食っていいから喋りかけないでくれ。頼むから」
「真剣ですね夜神くん…」
「ストーリーモノは目を離すと流れが切れるからイヤなんだ。ちゃんと全体を見て理解したいんだ」
「なるほど。それは理解できます」
「理解できたら黙ってて」
「…はい…」

サク。

「……」

グサ。
ズズ…。
サク。

「……」

「あ、終わりましたね」
「竜崎全然集中してなかったけど…興味ない映画だったのか?」
「いえ、事前に観て内容は理解しています」
「……」
「興味があるのは夜神くんの反応でした」
「……」
「これ、差し上げます」
「…映画の中でやってたお菓子の串刺しか」
「なかなか上手く出来てますよね。美味しそうです」
「……」
「あ、もう一回観るんでしたよね。ジュースとお菓子の補充はいりますか?」
「ははっ!僕はもう帰るよ」
「え?あ、待ってください夜神くん!?」
「映画館で観た方がマシだと気づいたよ。竜崎と今後一緒に映画鑑賞することはないと思うけど、まぁいい経験になったよ!じゃぁね!」

「待ってください夜神くーーーん!!!」

好意とセクハラは紙一重。

WEB拍手お礼11-祝!デスノ映画公開!編。

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