龍の殺し方。

その瞬間を、見届けたい。   目を覚ますと、そこは廃墟だった。 「…何でだ」   一人がけのシンプルな木椅子に座らされ、上半身を横に傾いだ状態で目覚めた桐生は腰の痛みに顔を顰めた。長時間同じ姿勢でいた為に、筋が硬直して痛

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上手と下手

超えられない壁。   沖縄の春の日差しは本州での初夏に相当する。四月も下旬になれば海で泳ぐことができ、照りつける日差しは肌を焼く程に強く痛い。   視界に飛び込む景色全てが陽光に刺され輝いて見える鮮やかな色彩は、慣れたと

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憧れの代償

その視線の先を知りたい。 「納得いかねぇ」 「何が」   バーカウンターの上に乱暴に置いたグラスの氷が音を立て、ぶつかり踊った琥珀色の液体が跳ね黒檀の上へと飛び出した。   淡い照明に照らされ艶めく液体は鏡面仕上げのカウ

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素直なひねくれもの

それは一つの宝物。  抜き身の刃に手を沿わせ、その刃先を確認しようと顔を近づければ磨き上げられた側面に映りこんで笑う己の姿にさらに笑う。   玉鋼、銑鉄、包丁鉄からなるそれは叩き延ばし折り返しながら鍛錬を重ねて不純物を取

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閉ざされた世界

 クリスマスイヴの神室町に、雪が舞う。   未だ建設中の高層ビルに吹き付ける風は、剥き出しの鉄骨の間をすり抜け冷たく肌に突き刺さった。   計画通りに龍司を倒してくれた桐生の前に姿を晒せば、驚愕の表情を浮かべて先代を務め

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いつか叶う夢

欲しいものと、なくしたくないもの。  東城会本部の門を潜った先には大勢の組員が、建物入り口まで両脇に並んで到着を待ち構えていた。進むに従い、恭しく腰を折る黒服の壁が増えて行く。事前連絡の賜物であったが、連絡なしに来れば文

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青春教室

若いんだから、しょうがない。  そろそろ西日が眩しい時間だった。   真上を見れば昼の青空が広がっていたが、正面に視線を向ければ落ち始めた太陽と共に、橙から赤へと色を変えていく鮮やかなグラデーションが見て取れる。   緩

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最後の聖域。

「冴島、アンタに聞きたい事がある」 「何や、どないしたんや桐生。改まって」 「……、………だよな?」 「ん?何やて?聞こえんかった。もぉちょいでかい声で頼むわ」 「真島の兄さんの関西弁、変だよな?」 「……」 「……」

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薄情者の愛

理解できないということは、理解したいということだ。  一面ガラス張りの向こうに広がる夜景は、美しいの一語に尽きた。   神室町にあって一際高いこのミレニアムタワー最上階の眺望を遮るものは何もなく、建設中の神室町ヒルズが出

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コンビニはお好き?(大×桐)-02-

 コンビニで買った安物のロープが軋んで音を立てた。   桐生が自らの身体の下敷きになった両手を動かしロープを外そうと試みているようだったが、簡単には解けないようにできている。関節を外しでもしない限り、外れることはない。

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