キミスタ!-最終話-

「…なんだこれ」  締め切られたエントランス前に人だかりができており、何かと近づけば紙が一枚、貼られていた。「社員各位」から始まるそれは倒産しましたのお知らせであり、手続きは弁護士を通してくれというものだった。 「…は?

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キミスタ!-04-

 アリーナを貸し切って行われるキミスタ!握手会は、ランキング上位から下位まで、詰めかけるファンが集中しすぎないように計算され、組み合わせをばらけさせて二十名一組とし、ほぼ隔週というこまめな周期で開催されていた。  残り一

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キミスタ!-03-

 一ヶ月以上間を空けて、久しぶりにソラとリクの背中を通勤途中の道すがらで発見した。  あれからキミスタ!は見てもいなかったが、ソラの推しであるカイリや母親の推しであるレオンのことを思い出し、また一定の距離を保って後ろを歩

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キミスタ!-02-

 ティファとエアリスに癒される。  残業で疲労困憊した頭と身体を引きずりながら家路へと向かう電車の中で、クラウドはスマホを開いて「今日指定の推し」であるティファのブログを見ていた。    キミスタ!専用サイトでのみ見られ

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キミスタ!-01-

 窓から入ってくる風が爽やかに部屋を一巡し、頬を撫でる心地良さにクラウドは午睡から目を覚ました。  揺れるカーテンの隙間から覗く窓外は雲一つない晴天であり、どこまでも続く青の眩しさに目を細め、手元の時計を確認する。  午

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とある休日の過ごし方。

 遠くで蝉の鳴き声がする。  昼に差し掛かった時刻の空は雲一つなく、遮る物のない陽光は質量を感じる程の灼熱の塊となって地上へと降り注ぎ、眼下に広がる街は反射光で白く揺らめいて見える。  遙か遠くを見やれば魔女が根城にして

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うち払う、熱を。

  朝から突き刺すような強い熱を発していた陽光は、夕方には黒い雲に覆い隠され見えなくなった。   周囲が少し暗くなったなと思った時には涼しい風が肌を撫で、空を見上げれば遠雷が煌めき、数秒後には激しい音が身体を駆け抜けそこ

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最終兵器彼氏-04-

  言わねばならないことがある。   レオンには知って欲しいが、受け入れてもらえなかったら殺してしまうかもしれなかった。   言うか、言わないか。   もしこのまま親しくなっていけるのならば、言わねばならない。   もっ

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最終兵器彼氏-03-

  一日の業務を終了し、事務所を閉め住居部分に足を踏み入れた瞬間スイッチが切り替わる。   明かりをつけ、開きっぱなしのカーテンを閉めて、着替えを取り出し風呂へ行く。   舗装されていない荒地を走る事が多く、舗装されてい

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最終兵器彼氏-02-

  翌日、朝一番で依頼主の元へ向かう為にバイクを出そうとしたザックスは、事務所の前で佇む男に気がついた。 「あれ、レオン?」   鍵を開け、ガレージのシャッターを開けて声をかければ、レオンは初対面時と同じ穏やかな笑顔で会

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