世界は碁盤の目で出来ていて、周囲は生命に溢れている。 帰りの車中もずっと少年は虚ろな瞳のまま、目を合わせることもなければ口を利くこともなく、飯食って行くかと問うても反応はなかった。 「腹減ってねぇか?」 と尋ねても
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世界は碁盤の目で出来ていて、周囲は生命に溢れている。 帰りの車中もずっと少年は虚ろな瞳のまま、目を合わせることもなければ口を利くこともなく、飯食って行くかと問うても反応はなかった。 「腹減ってねぇか?」 と尋ねても
続きを読む世界は碁盤の目で出来ていて、周囲は生命に溢れている。 翌日、同じ時間に再び風間はアパートを訪れた。 柏木には怪訝な表情をされたが、あの少年が気に掛かっていた。 あれからひたすら睨みつけられ、会話は成立せず、子供
続きを読む世界は碁盤の目で出来ていて、周囲は生命に溢れている。 「失礼しやす、親父」 応えを確認し扉を開いた先、デスクに陣取り書類を見ていた男が顔を上げた。 「おう柏木、どうした」 親父と呼ばれた男はまだ若い。三十代前半
続きを読む世界は碁盤の目で出来ていて、周囲は生命に溢れている。 築数十年を経て錆びきった鉄階段を上がり、ひび割れだらけのコンクリートの通路を歩く。手摺りは赤茶色の塗装が剥げ、触れれば細かく砕け黒ずんだ内部の腐食部分が指先に残った
続きを読む錯覚と倒錯の狭間。 適当に千切り取った紙に書かれた墨文字は、達筆と言える程流麗ではなかったが丁寧であり、およそ普段の人間性からは予想もつかぬ程には美しい文字であった。 内容を確認し、桐生は眉を顰める。 冒頭の
続きを読む神室西高野球部が有名になっていると聞いたのは、三年になってからだった。 何でもプロ球団からスカウトが来たらしく、校内はその噂で持ちきりになっていた。 「うちにそんなすげぇ奴いたんだな」 購買で買ったパンを頬張
続きを読む桐生さんが帰って来ない。 遅くなったら泊まるとは言っていたが、明後日来ると言った時、何も言わなかったではないか。 無人の部屋でいつものように勉強をし、横になって昼寝をする段になっても桐生は戻らず、帰宅の時間に
続きを読む認めて諦めたら、楽になった。 「…あー煙草吸いてぇ」 窓際一番後ろの席で外を眺めながら呟けば、聞き咎めた舎弟の一人が「えっ」と声を上げて飲み終えた牛乳パックを握り潰した。 「堂島さん、煙草吸うんですか?」 「マジ
続きを読む「堂島組長の一人息子の噂、知ってるか桐生?」 「…何だ、噂って」 グラスの中の氷が揺れて、高く澄んだ音を立てた。 カウンター席に並んで腰掛けた二人以外の客はなく、店内は静かで流れる音楽が心地良い。 グラスを目
続きを読む立入禁止の札の掛かった学校の屋上は静かで過ごしやすかった。 じりじりと焼ける陽光は肌に痛いが、日陰に潜り込んでコンクリートの壁に凭れてしまえば凌ぐに容易い。 照りつける日差しを屋上のど真ん中で倒れ付して浴びる
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