なまいき烏を撃ち落とす

 手にした一冊を本棚に収め、レオンは書庫を見渡した。  高い天井付近まで伸びる本棚は最上段まで分厚い書籍で埋め尽くされ、人の通れる幅を残して部屋中にずらりと並ぶ様はいつ見ても壮観であった。  現在ここに立ち入る人間は数え

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拾い猫のディストピア-02-

理想と現実。    寒い。  己の身体を抱き込むように蹲るが、全身が冷たい。  指先を曲げることすら億劫になるほど動きが鈍く、触れた二の腕は、グローブの冷たさすらも感じない程冷えていた。  膝は詰め物でもしたか

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拾い猫のディストピア-01-

理想と現実。    初夏から夏へと移り行く日々の変化は、日差しの強さと吹き抜けていく風の温度が物語る。夏を感じさせる強さで肌を灼き始めた陽光も、風に吹かれれば優しく流れて心地良い。  灼熱を思わせる真夏へと向か

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