Kyrie eleison-04-

祈りはどこに届くのか。   雲がなく直接地上に降り注ぐ真夏の陽光は強かった。   舗装された石畳は照り返しで白く輝き、立ち上る陽炎を見て誰もがげんなりとため息を吐く。   風がなく、ひたすら肌に突き刺さる日差しは過酷であ

続きを読む

Kyrie eleison-03-

祈りはどこに届くのか。   晴天の下、草原を歩く。   砂利を敷いただけで平坦とは言い難い道の両脇に広がるのは、のどかな牧草地だった。   駅を降りてすぐは店や家が立ち並ぶ商店街の様相を呈していたが、十分も歩けば草原が広

続きを読む

Kyrie eleison-02-

祈りはどこに届くのか。 「あー!今日も終わった終わったー!帰ろー帰ろー!」   帰宅時間になり、ユフィは伸びをして立ち上がった。「早くシャワー浴びてゴロゴロしたーい!」と言いながら帰り支度をする様子は元気そのものだったが

続きを読む

Kyrie eleison-01-

祈りはどこに届くのか。   穏やかな風が吹いていた。   高く澄んだ空は蒼く、列を成して街へと向かう鳥の羽ばたきも軽快であり、真白く伸びた雲も薄く、緩やかに風に流されるまま浮かんでいる。   降り注ぐ日差しはすでに肌を灼

続きを読む

Beautiful Life.

たまにはこんな日があってもいい。   冷たい風が頬を掠めて路地を走る。   思わず首を竦めて寒さから身を守るが、露わになった顔に当たる寒さは容赦のない季節になろうとしていることを如実に物語っていた。   日中陽光の当たる

続きを読む

Foe Lullaby-02-

眠れ、眠れ、手の中で。   客室に用意された露天風呂と言えば、温泉ではなく通常の湯であることも多いが、ここは源泉掛け流しのれっきとした温泉を利用しているようだった。   木製の衝立のようなものが壁代わりに立てられている為

続きを読む

Foe Lullaby-01-

眠れ、眠れ、手の中で。   すでに日は落ち、深夜と呼べる時間に突入しようとしていたが、扉を開けた先に部屋の住人はいなかった。   よくあることと気にも留めずに我が物顔でリビングへと侵入し、明かりをつけソファへと座り込んだ

続きを読む

緋の残照-最終話-

  己よりも身長が高く、体重もある男を背負って上がる螺旋階段は想像を絶する過酷さだった。   汗で担いだ手は滑る、柔らかい人間の身体は服を擦り振動に合わせて動いて滑る、担ぎ直す度にかかる重力の負担は足へとかかって膝が笑い

続きを読む

緋の残照-09-

  明かりが漏れ入ることのない暗闇は狭くて不快であった。   酷い貧血状態から解放される為の手段として教えられた行為は不快であった。   血と細胞の変化を目に見えて自覚したのは己の瞳の色が血の色をしていた時だ。   日を

続きを読む

緋の残照-08-

  周囲で誰ともつかぬ声が、幾人も同時に話しかけてくる。   男女の入り混じる高低音は重なり合い、互いに譲ることを知らぬかのように我先にと語りかけてくるので内容は理解できない。   ただ何かをしよう、何かをしてくれという

続きを読む

Scroll Up