最終兵器彼氏-01-

  手渡された数枚の書類と小さな電子記憶媒体を落とさないように受け取って、男はデスクの前に無造作に置かれた椅子に腰掛けた。   端から見れば尋問にしか見えない扱いを受けながらも、呼び出された男は顔色一つ変えることなく静か

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Kyrie eleison-最終話-

祈りはどこに届くのか。   遠くで弔鐘が聴こえる。   村一つを全滅させたハートレスはもはやいないが、失ったものは大きかった。   エアリスは常と変わりなく生活を送っているが、時折物憂げにため息をつく。   事情を聞いた

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Kyrie eleison-12-

祈りはどこに届くのか。   黒く小さな手が床を這い、壁を這う度音がする。   部屋の中に佇む二人以外のスペースを埋め尽くすように、闇に侵食され増殖するハートレスの多さに、部屋の明かりはついたはずなのにまた真っ暗になったと

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Kyrie eleison-11-

祈りはどこに届くのか。   心臓を揺るがす大音量が空を劈き、瞬間視界を白く染めて雷が落ちた。   地響きのような余韻を残しながら、空はゴロゴロと低い音で唸っている。 「…ん…あれ?」   肩を震わせ目を覚まし、ソラはソフ

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Kyrie eleison-10-

祈りはどこに届くのか。   フロアを埋め尽くす黒いモノ達は、対峙する二人を取り囲むように移動した。   輪の中に閉じ込められ、レオンは僅かに眉を顰めたが表情を変える事なく正面の影を見据える。   外は激しい雨になっており

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Kyrie eleison-09-

祈りはどこに届くのか。   今日は雨が降りそう、と、エアリスは空を見上げて呟いた。   朝から薄曇りの空は灰色をして重く、切れ間なく垂れ込め陽光を遮られた地上は涼しかったが、湿度が高く蒸していた。   時間が経つごとに雲

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Kyrie eleison-08-

祈りはどこに届くのか。   何の収穫も得られぬまま再建委員会本部へと戻ったレオンは苛立っていた。   今回、異常な事態が多すぎて自分の手には負えないのではないかと思い始めており、それは同時にやりきれなさと無力感を呼び起こ

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Kyrie eleison-07-

祈りはどこに届くのか。   朝目が覚めて身体を起こし、シーツからはみ出した金髪が枕の上にあるのを視界に認め、レオンは柳眉を顰めて見下ろした。 「…いつの間に…?」   呟くと同時に、思い出す。   ああ、何時間か前に来た

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Kyrie eleison-06-

祈りはどこに届くのか。   夕刻から夜にかけ、ほんの短い時間集中して降った豪雨が止んだ闇夜は分厚い雲で覆われていたが、雲の隙間からは淡い光が漏れていた。   聴こえるものは風の音ばかりの静寂の中佇んで見上げていれば、雲が

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Kyrie eleison-05-

祈りはどこに届くのか。   城の地下にある研究施設には、巨大なサーバーが存在する。   DTDシステムと呼ばれるそれには、「トロン」という愛称が存在した。   街のデータベースとしての役割と、システムを一元管理するメイン

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