ないものねだりとあるものさがし -最終話-

「きさまが人間であった頃の記憶はあるか」  地下室にランプを灯し、ソファに腰かけ肘置きに頬杖をつく金髪の若者は、今までと変わりなく、ワインボトルとグラスをサイドテーブルに用意して、手酌で注いで飲んでいた。  これから死に

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ないものねだりとあるものさがし -03-

 特にこれといった事件もなく、日々は過ぎていく。  ローエングラム公の神出鬼没ぶりにも随分と慣れ、おおよその滞在時間は把握できるようになってきた所であった。  フェルナーがいる間に姿を見せない時でも、深夜にはふらりと現れ

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ないものねだりとあるものさがし -02-

 首都星オーディンの中でも田舎と呼ばれる地方都市の一つに、オーベルシュタインの館はあった。  数年前まで軍籍にあり辺境惑星を転々としていたが、執事夫妻の死と同時に退役して、隠居生活に入った。  夫妻の死に関わることになっ

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ないものねだりとあるものさがし -01-

 床に血で描いた円環と三角形が光り輝いている。  蔵書を保管する為の広い地下室が、地響きで揺れていた。  一冊の古書を抱え、円環の中で身動き取れず片膝をついた男は、これから起こるであろう奇跡を固唾を飲んで見守った。  俗

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