手を取り合い力を合わせて強敵に挑む、それはまるでゲームの中の勇者のように。
薄暗く雷鳴響く空の下、荒涼たる大地を歩く。
すれ違う人間はいない。
発達した文明を思わせるような建物もない。
ただ大地があり、山があり、空があり、海がある。
そして各地に点在する、異空間へと続くひずみがあった。
行こうと思えばこの世界の中、どこへでもいけた。
制限は、ない。
混沌の神をトップとして仰ぐ「仲間」達の邪魔さえ入らなければ、何をしようとも自由だ。
「仲間」であるのに、連中は互いを監視しあい、腹の底を探り合う。
他者を出し抜き己の目的を達成する為、「仲間」として同じ陣営にいようとも一枚岩ではなく、敵よりも「仲間」の方が何倍も厄介で鬱陶しい存在であった。
連中が力を合わせて何かを為そうと言うときは、他者を陥れる時のみだ。
連中の原理は単純、利己主義というやつだった。
馴染まなかった。
連中の監視は心配ではない。
連中の干渉は思いやりではないのだ。
仮にそんな温かな感情を向けられても迷惑なだけだったが、悪意を向けられるのは苦痛で、かといって言う通りに働いてやる気もなかった。
この戦いに興味が持てなかったし、意味も見出せなかった。
この世界に召喚された当初、「敵と戦わねば死ぬぞ」と言われ意味もわからず戦い続けた過去は遠く、この世界に「存在する」ことが当たり前となった今では、己が存在すること自体に疑問を感じ始めるようになっていた。
蘇る記憶は、温かなものだった。
楽しいばかりではなかったし、辛いことも苦しいことも、壊れた心を取り戻すまでの道程はひたすらに長かったが、どれだけ苦しもうともそこにはいつも仲間がいた。
支えられ、共に戦った仲間がいた。
だがこの世界には、何もなかった。
カオスに属する「仲間」は、仲間であって仲間ではない。
今回の戦いで呼ばれた同じ世界にいたセフィロスは、敵だったが今は敵ではなかった。
仲間としてある矛盾。
記憶を失い己の存在を知らぬ男は、知った男であって知らない男でもあった。
積極的に関わりたいとは思わない。
いずれ思い出すだろう記憶は、決して楽しい思い出などではないのだから。
何故今更、とクラウドは問いたい。
そして何故自分はこちら側にいるのだろうと、自問せざるをえなかった。
神の気まぐれと言われればそれまでだったが、こちらの「仲間」は、到底理解できぬし受け入れられない資質を持つ輩ばかりだった。
…いや、きっとそう思うようになったのは。
ひずみの一つに手を伸ばす。
ライフストリームの中にいるかのような空間は、落ち着いた。
己の世界を思い出すのだ。
下を見下ろせば、戦闘を追えたばかりの若い男と、若い女が立っていた。
コスモス陣営に属する二人は、「敵」だった。
気配を消して、クラウドは静かに様子を見守る。
戦うつもりはなかった。
ガンブレードと呼ばれる特殊な形態の武器を納めた褐色の髪の男は、先日列車内で戦った。
強かったが、クラウドを殺す事ができなかった時点で甘さを露呈している。
あれではカオスには勝てないし、本気で戦ったらこちらが殺してしまうかもしれなかった。
「スコール、また勝手に行動してる。一緒に行こうって、言ったでしょ」
「…放っておいてくれ」
「もう、皆心配してるんだから!」
スコールと呼ばれた男に詰め寄る女は、長い黒髪がばらけないよう、腰の辺りで緩くまとめて流していた。
見事なプロポーションを誇る女は格闘を専門とし、嵌めたグローブは無骨だったがこの世界においては華奢にすら見えた。
「…ティファ」
疲れたように漏れるため息を隠しもせずに、スコールが女に振り向く。
「何?スコール」
「…あんたの説教は、聞かないからな」
「ちょっ…!説教って何ー!?心配だから、言うんでしょ!」
「それが説教…」
「も~!」
構わず歩き出す男に反応しきれずしばし見送った女はだが、すぐ我に返ってその背中を追い始める。
「聖域に戻るまで、お供しますからね!」
「勘弁してくれ。俺は子供じゃない」
「かよわい女の子を一人で帰そうなんて考えてないよね?」
「……」
かよわい?
首を傾げるスコールに、ティファは大きくため息をついた。
「言葉に出さなくても、聴こえてるんだから!さ、帰ろう帰ろう」
「……」
並んでひずみを抜けて行く様子を見送って、クラウドは額に手をやりため息を零す。
何故ティファがコスモス側にいるのだろう。
…否、ティファがコスモス側にいるのは別に構わない。
己が何故、カオス側にいるのだろう。
やりきれない思いがあった。
いざというとき、俺はティファとは戦えない。
戦えない相手が敵として存在するという、矛盾をどう消化していいのかわからなかった。
誰にも邪魔されたくない時、誰とも話したくない時、一人になれる時間と空間を作ることは意外に容易かった。
大量のイミテーションをひずみに配置し、その奥で茫洋と佇む、それだけだ。
突如沸いた人形共は、カオス側の言うことを良く聞いた。というより、意志など持ち合わせていないのだろうが、それらは非常に優秀な駒として機能した。
こうやって戦う姿勢を形ばかりでも見せておけば、策略を巡らせ戦わせようとする連中はひとまず干渉はして来ない。
地面に直接寝転んだ方が楽なのでは?と問いたくなるような体勢で頭と肩だけ壁に凭れて座り込み、背から下は地面に投げ出しクラウドは空を見ていた。
愛用のバスターソードは隣で寝転び昼寝中だ。
同じ世界からやってきた、ティファとセフィロスは呼ばれたばかりでまだ記憶が覚束ないようだった。
セフィロスなどは自分が記憶を持たないことが許せないようで、クラウドと戦闘することを望んだが、記憶を取り戻す手助けなどをしてやる気はなかったし、無駄な戦闘をしたくもなかったので関わらないよう距離を置くことを心がけていた。同じ世界の人間と戦えば早く記憶が戻るよ、などといらぬ助言をしたケフカが疎ましい。
日々記憶を取り戻す為各地を回っては色々なことを調べているようだったが、どうでもよかった。
そういえば昔、調べ物を熱心に屋敷に引きこもってやっていたなと思い出したが、それこそ心底どうでもよい記憶であった。
ティファの様子が気になったが、敵である己が接触することは憚られた。
後にも先にも、ティファを守る為にセフィロスと戦った、一回きりだと心に決めている。
中途半端に思い出し、今の自分のように苦しむことにならなければいいと願わずにはいられなかった。
「…ん?」
風の流れが変わって、僅かに爆発音のようなものが聞こえた。
誰かがひずみに侵入し、イミテーションと戦っているようだった。
ご苦労なことだと呟いたが、クラウドはまだその場から動こうとはしない。
ここまで来れるものなら来ればいい。
イミテーションは無限に使える人形だった。使役することは容易く、しかも弱くはない。
連続する爆発音に、金属音。
ランダムに生成されるイミテーションの中には弱いヤツも混じっている為、なぎ倒そうと思えば可能だったが、しかし。
躊躇いもなく打ち砕いているのだろう、戦闘音は止むことなく続いている。
うるさいな、と思った。
静かに一人の世界に浸りたかったのに、わざわざ大量の敵を蹴散らしながらやって来なくても良かろうに。
ここは辺鄙な場所にあるひずみの一つで、普通に歩いていればまず気づかれることはないはずだったのに、今誰かに見つかり邪魔をされている。
腕慣らしのつもりか、それともただの暇つぶしなのか。
どちらにしても迷惑な存在にクラウドの眉が不機嫌に寄った。
音は段々近づいている。
コスモス陣営の連中の顔を思い浮かべ、誰が来るのか予想してみようかと思ったが、爆発系の技を使うヤツは限られていた。
視線を動かし、来るだろう方向を見つめること数分、やってきた相手は予想通りの形をしていた。
「…貴様は確か、クラウドか」
「名前を覚えてもらえたとは、光栄だ」
先日戦ったばかりの獅子だった。
さすがに大量のイミテーションを相手にするのは骨が折れたのだろう、男は肩で息をしていた。
さてどうするかと思案するクラウドを見下ろす男は呆れと怒りが入り混じった視線で睨みつけ、小奇麗な顔を歪めてみせた。
「貴様、戦う気はあるのか?」
対峙した今でさえ、クラウドはだらしなく崩れ落ちそうな姿勢で身体を投げ出したままだった。
ない、と答えればこの獅子は大人しく退くのだろうか?
正直な所、戦闘に入れば消耗した相手にクラウドが負けることはないだろう。
殺すことは容易いが、殺すことは望んでいない。
戦闘することは容易いが、戦闘することを望んでいない。
さて、どうするか。
堂々と敵を前に考え込むクラウドという名の金髪の男が何を考えているのか理解できないスコールは、眉を顰めて見下ろしたままだ。
何だコイツ。
放置しておいていいのか?
いや、でもコイツは敵だ。
前回は逃がしたが、始末できる時にしておいた方がいいのではなかろうか。
「…立て。構えろ」
言えば、だらけてやる気のなさそうだったクラウドの視線がスコールを射抜く。
蒼とも碧ともつかぬ不可思議な色合いの瞳は、強い力を秘めているかのように煌いた。
「…うるさいな。勝手に、やってろ」
「何、…」
クラウドが言い終わると同時に、イミテーションが二体姿を現した。
「これに勝ったら、考えてやる」
同時に襲い掛かってくるイミテーションを飛び退ることでかわし、スコールの武器が光を放つ。
爆ぜる音と、イミテーションが仕掛ける魔法が空を切る音が間近で響いてクラウドは耳を塞いだ。
ああしまった、遠くでやれと命令すべきだったと思いながら、緩慢な動作で身体を起こす。
クラウドより若そうな獅子の動きは見事だったが、悲しいかな体力の限界が近そうだった。
イミテーションは容赦がない。
二体は多かったか、と後悔するが、そこで死ぬならそれまでだった。
ぼんやりと戦闘を見学していると、スコールの視線がたまにこちらへ向くことに気がついた。
間隙を縫って攻撃してくることを警戒しているようだった。
クラウドは立ち上がる。
スコールがクラウドに対し警戒の色を強めるのを嘲笑うかのように、一瞬の隙を突いてイミテーションの一撃がスコールの腕を掠めた。
「…ッ」
息を詰め、飛び散る血に構わず身体を捻って追撃をかわし、爆発音を立てイミテーションに一撃を返す。
砕け散って空中に飛散した残骸に目もくれず、もう一体に対峙したスコールの背後に、クラウドが立った。
「っ!」
スコールに攻撃する隙は与えない。
急所を狙ったのは刃ではなく柄であったが、いかんせん愛用のバスターソードは重い。
打ち下ろされた衝撃でスコールの武器が空を舞い、意識が飛んだようだった。
とどめを刺そうと剣を振り上げた人形に消えろと命じ、くず折れるスコールの身体を抱え上げた。
地面に下ろし、仰向けに転がす。
これで戦えとはよく言えたものだと感心するが、先日全く本気ではなかったクラウドの実力を計り損ねていたのなら仕方がないと言うべきなのか。
…いや、甘いな。
もっと現実を直視しなければ生き残れない。
「…おい、スコール。起きろ」
スコールの上に馬乗りになり、頬を叩く。
血の気が引いて表情の消えた顔は人形のようだったが、額に走る一条の傷だけはやけに鮮やかで印象的だった。
「起きろ」
もう一度、両手で頬を挟みこむようにして至近で呼びかけてみる。
ぴくりと眉が動き、次いで瞼が震えた。
長い睫が揺れて、蒼の瞳がゆらりと覗く。
「……」
夢見るような覚束ない表情で近すぎるクラウドと見つめ合う。
「…、…ッ!?」
驚愕に目を見開くまで、数十秒。
鈍いんじゃないかと、クラウドは思った。
力いっぱい振り払おうと上げられた手は、クラウドに掴まれ地面に縫い止められる。
「…な、んだ、貴様…ッ!」
「さて、質問だ」
「…何?」
両手首を地面に押さえつけられたスコールは、覗き込んでくる男を睨み上げた。
両膝も固定されている為、身動きは適わない。
このまま殺されても仕方がない無様な有様に、自嘲する。
「…ティファは記憶を取り戻したか?」
「知るか」
「質問に答えろ」
親しげに話していたのだから、情報の共有は当然あるのだろうと思っている。
カオス側の連中ならば考えもつかないが、コスモス側の人間はよほど「人間」らしいのだから。
「知るか。直接聞け」
だが期待した答えは返ってこなかった。
失望したと言わんばかりに眉を顰めるクラウドを見上げ、スコールは僅かに戸惑う。
何だ?コイツは。
「…俺は知らない。親しくもないし」
「嘘だな」
即否定されて、さらに戸惑う。
何なんだろう、この男は。
およそ「敵」らしくない相手だった。
「…どうでもいいだろ、そんなこと」
呟いたが、これは嘘だ。
失った記憶を取り戻したいと誰しもが願っていることを知っている。
己もまた、その一人だから理解はする。
何故敵であるクラウドがこちらの事情を気にするのか不審に思うが、ティファと余程親しい関係だったのだろうと思えば納得できた。
だが俺に聞かれても困るのだ。
他人の事情に踏み込む酔狂ではなかったから、記憶の戻り状況など関知する所ではなかった。
言えばクラウドは僅かに表情を改めた。
「…そうか」
「納得したなら、離せ。…殺すなら、殺せ」
殺せと言う割に、その瞳は虎視眈々と反撃の機会を窺っているようだった。
こちらに敵意はないというのに、全く警戒心の強い獅子だと感嘆と同時に呆れもする。
「俺は誰とも戦う気はない。金輪際、俺に関わらないというなら離してやってもいい」
「…信用しろと?」
「しなくていいが、そうするとここで殺さないとならなくなる」
「……」
一方的な選択肢を突きつけられた。
ここで頷けば解放される。
だが関わるなと言われても、保証はしかねる。
混戦乱戦になったとき、この男がそこにいないという確約はできないし、かと言って退くことなどできようはずもない。
無表情に考え込むスコールの生真面目さに、思わず笑いがこみ上げた。
「…何だ」
「…いや、あんた、馬鹿だなと思って」
「は!?…貴様、何て言った…!?」
「馬鹿だなと思って」
「……っ!」
律儀に繰り返したクラウドは笑っている。
いい加減上に乗られたまま見下ろされて不快指数は高まる一方だと言うのに馬鹿にもされた。
顔に血が上るのを止められない。
元々は己の不甲斐なさが原因であり、今も大人しく組み敷かれているのは体力が足りないからだということは嫌と言うほど痛感している。
屈辱だ。
敵意がなくとも敵は敵だ、約束事などしてはならない。
「…今ここで、殺さなければいつか殺す」
「なるほど、賢明だが愚かな答えだ」
「…ッ!」
癇に障るヤツだと思った。
率直に言えば、ムカつくヤツだ。
何だコイツ。
何だコイツ!
「……」
己の下で顔に朱を上らせて絶句し喘ぐ美形というのはクるものがあった。
見つめれば、睨み上げてくる瞳も威嚇と思えば可愛らしいものだ。
しばし逡巡する。
さて、どうするか。
手を離せばおそらく殴りかかってくるだろう。
膝を解放すれば蹴りが飛んでくるだろう。
今のスコールに、抵抗されずにダメージを与えるには、どうすればいいか。
クラウドに殺気もなければ敵意もないことはスコールも気づいている。
素直に離してくださいと、言うべきだった。どれ程ムカつく野郎であろうとも。
プライドを捨てても、言うべきだったと理性では理解していたが、感情は制御し難く無理だった。
今や見下ろしてくる男は実に楽しげな表情をしていた。
無表情な作り物めいた女顔の男が、目を細めて笑っている。
「…おいクラウド」
「何だ」
「いつまでこの体勢でいる気だ」
「ああ、そうだな…」
「さっさと離せ!…もしくは殺せとさっきから言っている」
「ああ、わかった。相手してやる」
「え…?」
至極あっさり、クラウドは退いた。
腕も膝もすでに感覚が麻痺して動かず、内心歯軋りしながらも男の心変わりの理由がわからず目線で問えば、無言でクラウドが愛用の武器を取り出しスコールの首筋一センチの所を水平に貫いた。
「…っ!」
地面に突き立ったそれは鉄の塊であり、風圧でスコールの髪とジャケットのファーが揺れた。
動けずにいるスコールに再び跨ったクラウドは、スコールのシャツを引っ張り首元までたくし上げた。
「っ、な、にしやがる貴様!」
汚い言葉遣いだと思ったが、気にすることなく金髪の頭が胸元に落ちた。
音を立てて強く吸い付かれ、スコールの背が引き攣る。
「な、…なっ?」
状況把握に時間を要した。
やっぱりコイツ鈍いんじゃないのかとクラウドは思ったが、髪を掴もうと伸びてきた腕を再び捉えて地面に押し付ける。
意味がわからないと叫び出しそうなスコールの額に、キスを落とせば呼吸が止まった。
「っ…、…っお、まえ…」
「相手してやる。相手してくれ」
言い間違えたのではない。
スコールに、要求したのだった。
「何で!?」
最もな質問を、最も幼稚な言葉で、簡潔に質問するスコールの疑問は最もだ。
「殺す気はない。殺したければ殺しに来るといい。だがタダで解放してやるのは癪だし、あんたもプライドがあるだろう。そういうことだ」
どういうことだ。
クラウドの言葉を、理解したが納得したくはないスコールだった。
「……」
何かを言いかけては閉ざすその唇に舌を伸ばすが、当然のことながら顔を背けて避けられた。ならばと露になった項を舐め上げ耳たぶに食いつけば、首が竦んで上半身を捩って逃げる。
だが地面に突き刺さったバスターソードが間近にある為、逃げることは適わない。
「やめろ、クラウド!」
「溜まってるんだ。ヤらせろ」
「……、……」
直裁すぎる言葉にスコールが絶句した。ビキ、と音がしそうなくらいに、身体が硬直する。
気にすることなくこめかみや頬にキスをしながら、頭を撫でた。
手触りもよく滑る髪は指に絡まることはなかった。
「…あんたはなかなか悦さそうだ。勃つし」
耳元に囁きながら、下半身を押し付ける。
スコールの腰が、震えた。
「ッ…、下種かよ…」
「それは初めて言われた。…他にはないのか」
「知るか、死ね!ていうか、殺す!」
「…つまらないセリフだな…」
スコールの腿を掴んで持ち上げ着衣のまま挿れるべき所に密着させて、擦り上げれば腰が逃げる。
腰も押さえつけ逃げ場をなくせば、背が震えて仰け反った。
「…悪態をつく割に、随分…」
「う、るさい黙れ…!くそ、死ねクラウド…っ!」
「…名前付きで言われると、ゾクゾクするな」
「下種の上に、変態かよ…」
「何とでも」
頬に手を伸ばし、今度こそ唇にキスをした。
諦めた様子のスコールからの抵抗はなかった。
「楽しめばいい」
「…うるさい」
スコールの腕がクラウドに絡む。
安心した。
楽しめそうだとクラウドが笑う。