縷縷として病む-03-

どこにも、行けない。   「スコールくん、泊まって行っていいんだよ」 「約束なので帰ります」 「そうかね。今日は私はここに泊まるよ。犬の朝食の見守りは任せてくれたまえ」 「…よろしくお願いします」  玄関先で一

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縷縷として病む-02-

どこにも、行けない。    トラヴァースタウンの二番街と三番街は、一番街とは違い、区画整理が行き届いた閑静な住宅街である。  一番街は外の世界から流れ着いた者の為に解放されているが、二番街以降は元からいる住民達

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縷縷として病む-01-

どこにも、行けない。    暮れ行く夕陽が茜色に街を染め上げ、闇空に居場所を明け渡す時刻、ぽつりぽつりと建物には明かりが灯り始め、食事の支度を始める家が増えて、煙突からは白く煙が立ち上る。ネオン輝くトラヴァース

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拾い猫のディストピア-02-

理想と現実。    寒い。  己の身体を抱き込むように蹲るが、全身が冷たい。  指先を曲げることすら億劫になるほど動きが鈍く、触れた二の腕は、グローブの冷たさすらも感じない程冷えていた。  膝は詰め物でもしたか

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拾い猫のディストピア-01-

理想と現実。    初夏から夏へと移り行く日々の変化は、日差しの強さと吹き抜けていく風の温度が物語る。夏を感じさせる強さで肌を灼き始めた陽光も、風に吹かれれば優しく流れて心地良い。  灼熱を思わせる真夏へと向か

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レオン先生の特別授業

  バスルームを出て、洗面台に備え付けの鏡で己の姿を確認する。   よし、オーケー。   家から持ってきたパジャマに着替え、濡れた髪をタオルで拭きながらリビングへと戻れば、長い足を組んでソファに座るレオンと目が合い思わず

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うち払う、熱を。

  朝から突き刺すような強い熱を発していた陽光は、夕方には黒い雲に覆い隠され見えなくなった。   周囲が少し暗くなったなと思った時には涼しい風が肌を撫で、空を見上げれば遠雷が煌めき、数秒後には激しい音が身体を駆け抜けそこ

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最終兵器彼氏-04-

  言わねばならないことがある。   レオンには知って欲しいが、受け入れてもらえなかったら殺してしまうかもしれなかった。   言うか、言わないか。   もしこのまま親しくなっていけるのならば、言わねばならない。   もっ

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最終兵器彼氏-03-

  一日の業務を終了し、事務所を閉め住居部分に足を踏み入れた瞬間スイッチが切り替わる。   明かりをつけ、開きっぱなしのカーテンを閉めて、着替えを取り出し風呂へ行く。   舗装されていない荒地を走る事が多く、舗装されてい

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最終兵器彼氏-02-

  翌日、朝一番で依頼主の元へ向かう為にバイクを出そうとしたザックスは、事務所の前で佇む男に気がついた。 「あれ、レオン?」   鍵を開け、ガレージのシャッターを開けて声をかければ、レオンは初対面時と同じ穏やかな笑顔で会

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