26歳レオン(KH)inディシディア続き。
「コスモスひどい」
「…どうしたのですか?バッツ」
「コスモスひどい」
「ジタンまで」
秩序の聖域の中心で今日も神々しいオーラを放ちながら静かに座す女神に詰め寄る男二人は、子供のように「ひどいひどい」を繰り返す。
「俺らがいない時に未来のスコール呼ぶなんて!」
「ああ、そのことですか」
「こういうことは全員いるときにやってくれなきゃ。しかもスコールとクラウドとティーダとフリオニールは未来のスコールと仲良くなったって言うじゃないか」
何事かと集まってきたメンバーを指差して、ジタンが不満を漏らす。
「いや、仲良くなったと言うか…」
「スコールと区別つける為に「レオン」って呼んでいいって言われただけッスよ?あと頭撫でられた」
「…頭は撫でてもらわなくていいんだけどさ」
「子供じゃねぇしな俺ら」
バッツとジタンが顔を見合わせ頷きあう。いやジタンは子供と言っていい年齢だと思ったが、そこには誰も触れなかった。下手に絡まれると面倒だ。
「そのレオンとスコールは仲良しになれたんだろ?色々聞けたか?」
「…まぁな…」
斜に構えたような返答はスコールの常であるので、濁したような答え方も気にはならない。
肯定的ということは、それなりに距離は縮まったと言うことなのだろう。
なおさらその場にいたかった!と二人が騒ぎ立てるのも無理はなかった。
「コスモスー」
「コスモスー」
「……」
困ったように女神が微笑む。
ノリノリで召喚しますと言っていた前向きさはどこへ行ってしまったのだろうか?疑問を口にする前に、女神の傍らに佇む光の戦士が手を上げて制した。
「我々が為すべきことは、遊ぶことではないぞ。息抜きも大事だが、まずは目先の戦闘を念頭に置くべきだ」
「…ウォーリーは融通が効かないなぁ!」
「俺ら真面目に戦ってるよなぁ?バッツ」
「…ウォーリーも名前の選択肢に入れるべきなのか」
「認識できたらそれでいいんだろ」
「その通りだ」
「気分で呼ぶから気にするなよ、ウォーリア!」
「…好きにすればいい」
「好きにする。で、今度いつ呼んでくれるんだ?コスモス」
バッツが多少譲歩した。
だがコスモスは笑うだけで、返答を避ける。おかしい。
「コスモス、呼んでくんねーの?あのイケメン、好みじゃなかったっけ?」
「レオンは素敵な人ですね。呼べるものなら呼びたいのですが」
イケメン呼ばわりで即答するコスモスもどうかと思うが、躊躇いがちな内容の方が気になった。
「何か問題あるの?」
「ええ、いえ…」
「前回来た時、呼ぶなと怒られていた」
クラウドが補足してやれば、バッツとジタンが驚いた。光の戦士も目を見開いて硬直している。忠誠の対象が怒られたと聞いて理解が追いつかないようだった。
「え、コスモス怒られたの?」
「はい…」
神々しいオーラを発しながら女神が項垂れた。女神って落ち込むことあるんだな。
「神とはいえ、レディを怒るってのは感心しないな。優しく諭してやるのが男だろ!」
「…いえ、私が悪いのですジタン」
「コスモス…」
「むしろ、怒られるという貴重な体験が出来て良かったと、思ってます」
うわぁこれ恋は盲目状態?
胸に手を当て、思い出しているのだろう、微笑を浮かべる女神は美しかったがひどく遠い世界に飛んでいる気がした。
「…これじゃ、レオンと遊ぶ計画は当分無理かなジタン?」
「遊ぶっていうか遊ばれるっていうか、そもそも付き合ってもらえるかどうかも不明だけどな」
「何のことですか?」
女神が現実の世界に帰ってきた。早かったな。
「レオンとスコールをアルティミシアの前に連れて行って、「好きな方を選べ!」って言ったらどうなるかと思って」
「…く、くだらない…」
スコールが呆れた。
というより二人まとめて殺しますとか言いそうなんだがあの魔女は。
二対一か。タイマン張らなきゃならない理由はないので多対一でも問題はないだろうが、レオンと共闘か。…レオンは果たしてどれくらい強いのだろうか?
「レオンは強いのか?」
クラウドが代弁した。
「お、気になる?気になるよな?俺も気になる!未来のスコール、どれくらい強いんだろな?スコール知ってる?」
バッツに水を向けられたが、知るわけがない。
首を振れば、そっかーと言いつつコスモスに向き直った。
「コスモス、興味ない?」
首を傾げておねだりポーズを取って見せれば、コスモスは静かな瞳で空を見ていた。
「呼びますね」
早っ!
決断早い、決意を翻すの早すぎるッ!!
前回呼んでから日が経ってない。絶対呆れて怒られるぞ。
…それが狙いか!怒られたいのか!
全員が引き気味にコスモスの前を開けた。
光が落ちて、眩しさに目を閉じる。
人の気配がして目を開けたら、目を疑う光景が広がっていた。
「…またかよ…」
「おい、何だここ。いきなり異空間に引きずりこまれたぞ」
声は二人分あった。
どちらも聞き覚えがある声だ。
一人はレオンのもの。もう一人は…。
「クラウドがいる…!」
「うぉぉぉクラウドがいる!クラウドも一緒に来たーーっ!」
「…は?」
不躾に名を呼ばれ、黒衣の男が振り向いた。
レオンの左腕を掴んだままだったが、手を離して周囲を見回す。
「あー…、お前が言ってた変な世界って、ここのことか」
ぐるりと視線を一周させながら言えば、レオンはため息混じりに頷いた。
「…そうだ」
「なるほど…。お」
興味津々と言った様子で黒衣のクラウドが歩き出し、レオンは後姿を見守ったが声はかけなかった。
立ち止まった先はわかりきってはいたが、クラウドの前だ。
「ちょっと前の俺がいるな」
「……」
目の前に現れた全く同じ顔をした男に、クラウドが引いた。周囲にいた仲間達も、双子の如く似通った二人に言葉もない。
これか、これがレオンが言っていた「変な奴」か。
見た感じ「変な奴」臭はしなかった。というより、そっくり過ぎて何も言えない。
じろじろと遠慮の欠片もなく爪先から頭の先まで視線が行き来するその姿は、髪型が落ちついて服装が黒で統一されているくらいで造作は変わりない。
いや、多少は大人びてはいるのか。というより、随分と大人びた雰囲気がするのは服装のせいなのか。
黙って真面目な表情を向ける男の視線が周囲に移り、スコールの上で止まった。驚愕に目を見開いたが、すぐ納得したように頷いた。
「若いレオンがいる。あいつが言ってたこと、本当だったんだな」
「……」
かつてのレオンと同じような反応だった。クラウドに対して言っていたことを思い出す。
レオンに視線を向ければ、腕を組んでコスモスに何かを言っているようだった。文句か。まぁ、当然だろうな。
だが大人しく項垂れて聞いている女神の表情は妙に明るい。もうダメだアレ、仕える対象があんなのでいいのか不安になった。
「黒服のクラウドさんは、おいくつですか?」
バッツが果敢に質問を繰り出した。何が起こっても動じないのはさすがだと感心する。
確かレオンは二十三だと言っていた。
「二十三」
合っていた。
「お、こっちのクラウドより年上じゃん。レオンと同い年くらいに見える」
「俺が?」
「うん」
「俺はあんなに老けてない」
「…ふ、老けてるっていうか、落ち着いて見えるっていうか」
「ほう。俺が?」
「う、うん…?」
「悪くないな」
クラウドが口元だけで笑ってみせた。
…クラウドの笑みって貴重じゃね?と、誰もが思ったが口には出さない。
「……」
バッツが首を傾げた。落ち着いた大人の反応ではない気がした。例えばレオンと比べた場合、違和感がある。…が、明確にどこがおかしいとは言えなかった。
考え込んだバッツの代わりに、ジタンが手を上げた。
「レオンとどういう関係?同じ世界にいるのか?」
レオンに対しては丁寧語だった彼らだが、クラウドに対してはフランクだった。年上であることに変わりはないのに、何故だとスコールは疑問に思う。
「どういうと言われてもな…同じ世界にいる。同じ街にいるが、目的は違う」
「へぇ…でも知り合いなんだな。親しそうだし」
「…親しい…?」
黒衣の男が顎に手をやり首を傾げた。
「違うのか?だって一緒にこの世界に来たし」
「まぁ…親しいと言えば親しいな」
曖昧な表現だったが、レオンも「同郷の仲間だ」と言っていた。友達ではないとも言っていたので、微妙な距離感があるのだろうとスコールは納得した。
ここにいる連中も、「友達ではないが仲間」だった。いっそ友人だと言ってしまってもいいのかとも思うが、そういうことだろうと思う。
「おいクラウド」
コスモスとの話を終えたらしいレオンがこちらに向かって歩いて来る。
二人のクラウドが反応するのを見てレオンが苦笑し、黒衣の方を指差した。
「ああ、こっちのクラウドだ。…名前が同じだとわかりにくいな」
「何だレオン」
「お前がここに呼ばれたのは事故だそうだ。…俺の腕を掴んでただろう、そのせいだ」
「とばっちりか」
「そうとも言うな。…まぁ、来てしまったものは仕方がない。一時間、時間を潰せ」
額に手をやり、疲れたように言うレオンにクラウドの眉が寄った。
「一時間もお話するネタはないぞ」
「知るか。俺もない。皆さんのご質問にでも答えてろ」
「…答える義務でもあるのか」
「ない。ボランティアだ」
「興味ないね」
「まぁ、そうだろうな…」
レオンの視線がスコールに移る。目が合い、レオンが何かないかと問うてきていることを何となく悟った。
「…バッツとジタンが、あんたと遊びたいと言っていた」
「バッツとジタンというのはどちら様だ」
「あ、ハイ!俺がバッツでコイツがジタンです!」
茶髪でアクセサリをじゃらつかせているのがバッツで、金髪小柄な尻尾少年がジタンかとレオンは認識した。
「遊びたいとは?」
「ハイ、せっかくなのでこの世界の敵とか、戦ってみませんか?」
やはりレオンに対しては敬語だった。何故だ。
「一時間で可能ならば」
「急いで行けば多分大丈夫!アルティミシアは無理かもだけどイミテーションなら!」
「出かけるのか?」
横から口を挟む黒衣のクラウドに、レオンが頷いてみせた。
「そうだな…こちらの皆さんが俺達に用がないなら」
「ちょっと待ってもらおう」
静止したのは光の戦士だった。今まで静かに経緯を見守っていたが、出かけると聞いて黙っていられなくなったのだろう。
「何か?」
「何だよウォーリア、別にいいだろー?」
「そうそう、敵減らしに行くんだし、問題ないじゃん」
視線を向けたレオンと共に、バッツとジタンが口を出す。
「それは構わない。が、行く人間は絞ってもらう」
「えー?」
「全員で行くのは…ダメか、ダメだよな…」
「聖域をコスモス一人にすることはできない。休憩が必要なメンバーもいる上、出かけるにしても一箇所に集中する必要はない」
正論だった。
バッツとジタンが唇を尖らせるが、レオンは頷いた。
「ではバッツとジタンは連れて行く。お前は残るのかクラウド?」
「…残ってどうしろと?」
「ではこいつも連れて行く。…お前達は?」
スコールと、若いクラウドに声をかければ互いに顔を見合わせて頷いた。
「俺達も行こう」
「六名で行く。問題はあるか?」
「いや、構わない。健闘を祈る」
「ありがとう」
手早く無駄なくまとめてみせた。
反論の余地もなく、光の戦士が頷いた。隣で座っていた女神が悲しそうな瞳をしていたが、レオンは華麗に無視をした。
「行き先は任せていいんだな?」
バッツに問えば、勢い良く頷く。
「任せて下さい!んじゃ行こうぜ!」
「おう!」
バッツとジタンが先導し、聖域を出て荒野を進む。
六名のうち四名はそっくりさんというより同じ顔の本人同士で奇妙な道連れだった。クラウドなどは年齢も近く見かけも殆ど変わらない為、居心地は悪かろうとは思ったが仕方がない。
レオンと黒衣のクラウドが並び、スコールとクラウドが並んで歩く。
黒衣のクラウドが振り向いて、スコールを見た。
「…何か?」
問えば小首を傾げて、口を開く。
「若いレオン」
「…スコールだ」
言えば、男はレオンを見た。躊躇いがちな視線に気づいたレオンは、スコールを見やって視線を戻す。
「スコールは、スコールだ。若い俺ではない」
「…じゃぁスコール」
「何だ」
「…レオンじゃないんだな」
「違う」
「そうか」
それだけだった。一体何を言いたかったのか、男は言うだけ言って前を向き、レオンに小声で何かを話しかけた。
レオンは眉を顰め、ため息をつくが嫌がっている様子はない。友達ではないと言う話だったが、仲は良さそうに見えた。
隣を歩くクラウドは黙りっぱなしだ。
もう一人のクラウドを観察しているらしかった。
「とりあえず、ここのひずみ、入ってみませんか?」
立ち止まり、バッツがお伺いを立てる。
「ひずみ、というのが不明だが、どこでも構わない」
「あーそっか、ひずみっていうのは敵がいっぱいいるとこです!じゃ、ここで!」
バッツとジタンに続いて、レオンと黒衣のクラウドが入る。
スコールが入り、クラウドが最後に入った。
待ち構える敵の姿を見て、レオンが首を傾げる。
「…あの姿は見たことあるような」
「あれがイミテーションっていう敵で、俺らの姿を真似してる。意志を持たない人形だけど敵の言うことは聞くっていう厄介な奴ら。ごまんといるから減らして行くのが大変」
「なるほど」
ジタンの簡潔な説明で理解し、武器を出す。
「お、武器スコールと同じ!ガンブレード!」
「おおー!同じだ、同じ!」
「……」
外見だけではなく、色々と共通点があるようだ。
クラウドも武器を出すが、若い方の武器はかつてクラウドが使っていたものだった。
こちらも共通点があるようだった。
黒衣の男が、前に出た。武器を構えてレオンを見る。
「俺が行く。お前見てろ」
「…何偉そうに言ってんだ」
「ハートレス弱すぎて相手にならない。奴ら結構強そうだ」
「死んでも助けんぞ」
「誰が死ぬって?笑えない冗談だ」
鼻で笑い飛ばし、イミテーションに突っ込んで行く後姿を見送って、レオンが武器を納めた。
レオンが戦う所見たかったなーとのたまうバッツに苦笑で返し、腕を組んで傍観する。
「…ちょっと違うけど、クラウドの戦い方に似てるよな」
ジタンの呟きにレオンを除く全員が頷いた。
ということは、レオンとスコールの戦い方が似ていてもおかしくない。
「…あのクラウドは、あんたのことをお前って呼ぶんだな」
背後からかけられた声に、レオンが振り向く。ん?と聞き返せば、若いクラウドの目線が泳いだ。
「…あんたの方が年上なんだろう?ああいや、俺は年下でもお前とはそうそう呼ばないが」
「ではあいつにとって俺は気心知れた相手ということなんだろう。…舐められているだけとも言うが」
「……」
前半については納得するが、後半についてはどうだろう。疑問だった。
一人で突っ込んで行くだけあって、黒衣のクラウドは強かった。
手を出す必要もなくイミテーションの数が減る。
「楽でいいなぁ。あのクラウドとレオンさん、残りません?」
「せっかくだが遠慮する」
「ちぇー!ざんねーん」
最後の一体を倒し、地面に突き立った大剣を抜いた男が一つ息を吐いて呼吸を整えた。振り返り、レオンに向かってどうだと胸を張る。まるで子供のようだったが、レオンは良く出来ましたとこれまた子供を褒めるように言葉を投げて、小さく笑う。
変な関係。
だが、親しげだ。
「結構楽しめた」
「…俺の敵が残っていないようだが?」
「え?お前戦いたかったのか?」
「俺のストレス解消が」
「知るか。他探せよ」
「そろそろ時間だ。他を探している時間はないな」
本当に、親しげだ。
時間がないことに気づいたバッツとジタンが焦り出す。
「アルティミシア、出てきてくんねーかなー」
「いやーさすがにそんな都合良くは行かないんじゃね?」
「アルティミシア?」
レオンが怪訝に問えば、スコールの敵、と返答される。
「…ああ、魔女、だったか?」
スコールを見れば、頷いた。
「マレフィセントみたいな?」
「あれも魔女だったな」
こちらはこちらで意味のわからない会話を交わしている。
「騒がしい鼠がいるようですね」
「来たー!」
「来た魔女ーー!!」
バッツとジタンが喜び、両手を広げて大歓迎の意を表した。
現れたのは大胆に胸元と足元の開いた真紅のドレスを身に纏った奇抜な化粧と髪型の女だった。年齢不詳ではあったが美女と呼んでいいだろう。いいだろうが、気配は友好的とは言い難い。黒い翼を背に負って、腕を組み睥睨していた。
「お前のお仲間だぞクラウド」
「やめろ俺は露出狂じゃない」
「明らかに闇だな」
「…俺を闇扱いするな」
露出狂扱いされた魔女は奇妙な組み合わせに気づいた。
そっくりさんが二組いる。
「…一体どんな魔法を使ったのですか?」
問えばバッツが前に進み出て、スコールとそっくりさんを指差した。
「スコールとレオン、どっちがお好み!?」
「……」
「……」
「……は?」
スコールとレオンが沈黙し、アルティミシアは首を傾げた。
「ちなみにレオンはこの世界には関係ありません!」
「ではレオンで」
「……」
「……」
即答しやがった魔女め!
いやこの世界に関係ないと言ったからか。そうか、そうだよな。
「理由を聞かせろアルティミシア!」
ジタンが叫べば、魔女は愚問だと嘲笑った。
「魔女の騎士、空いてますよ」
「……」
「……」
敵だと騎士は難しいが、関係ないなら可能だということか。
「…魔女の騎士とは何だ?」
レオンがスコールに問いかけた。スコールが口を開く前に、魔女が遮る。
「魔女の騎士とは魔女を守護する男のこと。魔女の心を支えることが最たる役目」
「……」
心を支えるとは随分と意味深だった。
「ぶっちゃけて言えばパートナーと言うことです。恋人とか夫とか」
「ご期待には添えそうにないな」
「では殺します」
「二者択一かよ」
こめかみを押さえるレオンの前に、黒衣のクラウドが立ちはだかる。
「あの魔女、敵なんだよな?」
「…待てクラウド、あれはスコールの敵だ」
「じゃぁスコール、殺せ」
「…あんたも極端だな」
スコールが呆れた。
黒衣のクラウドがスコールを見て、ため息を漏らす。
「…おいレオン、スコールはお前に魔女の騎士とやらになれと言ってるぞ」
「「いや、言ってないし」」
二人同時に否定した。
なるほどこのクラウドはちょっと変な奴かもしれないと、スコールが納得した。
同時に気づく。
あれ?
「…俺達が手を出すべき相手ではない。大人しくしてろ。というよりもう時間だ」
クラウドの袖を引っ張りながらレオンが言えば、バッツとジタンが不満を漏らす。
「一時間、早すぎるよなぁ」
「もうちょっと遊びたかったなー」
「その一時間のせいで俺は仕事が遅れているんだがな」
「おお、レオン社会人!?」
「大人だもんな。できる男って感じするし」
「褒めても何もでないぞ。…ではな、あまり次回があって欲しくはないがまた次回」
不機嫌な表情のまま黒衣の男が消えて、レオンが消えた。
放置された魔女は事情が飲み込めぬまま、興味を失くしたのかいつの間にか消えていた。
「さて、帰るかー」
「次回何して遊ぶか考えとこうぜ!」
「おー!」
帰ろうと歩き出した二人に続いて、スコールとクラウドも歩き出す。
終始考え込んでいたクラウドが、小さな声で呟いた。
「あいつやっぱり」
「え?」
「……」
問い返せば、視線を寄越す。見つめ返すがすぐに逸らされた。
「何だ?クラウド」
「いや…何でもない」
仲が良さそうで羨ましい、とは言えなかった。レオンが大人な分、距離が近そうで羨ましい、とも言えなかった。
自分が努力しなければ。
クラウドは一人頷いた。
不審に金髪を眺めやるが、追求する気にはなれずスコールはため息をついた。
レオンの相手はおそらくあいつだ。
あのクラウドはレオンに対して酷く無防備だったのだ。
それに、あの態度。
気づいてしまった。
…それがどうした、という程度の話ではあるのだが。内心少しだけ複雑なスコールだった。