26歳レオン(KH)inディシディア続き。

  今日も秩序の聖域は平和である。
  聖域を一歩出ればイミテーションが徘徊し、殺伐とした空気に占拠された戦闘しかない荒野が広がっているが、女神のおわすこの場所だけは戦闘もなく守られている。
  …正確には敵があえて踏み込んでこない暗黙の了解という意味での平和であったが、そんなことは召喚された戦士達は知る由もない。
  ひずみの一つを潰し、戻ったスコールは静かな聖域内を見渡した。
  珍しく、人がいなかった。
  否、女神と傍らに侍る光の戦士は存在するが、いつも誰かしら休憩の為などで立ち寄る仲間が誰もいない。珍しいことだと思ったが、だからどうするというわけでもなく、女神達に近づきすぎない距離で、だが知覚範囲で距離を取る。
  だが、女神に手招きをされた。
  その顔は女神らしく静謐で慈愛に満ち、美しい。変なことを考えているわけではなさそうだとスコールは内心安堵し、呼ばれるままに歩み寄る。
  女神コスモスは仕えるべき対象であったので、拒否するという選択肢は存在しなかった。
「おかえりなさい、スコール」
「ああ」
「世界の様子は、どうでしたか?」
「…変わりなしだ」
「そうですか。丁度今、皆が出払ってしまって入れ違いになったようです」
「そうみたいだな。特に問題はない」
「ええ、そうですね」
  コスモスがちらりと隣に立つ戦士を見上げて、何かを言いたそうにした。察した光の戦士が頷いて、スコールを見る。
「スコール、実は先程まで皆で話していたのだが」
「…何だ?」
「鍛錬を兼ねて、メンバー総当りトーナメントを開催しようと思う」
「…はぁ…?」
  それは以前バッツやジタンが提案していた「遊び」の一つだったように記憶していたが、真面目な表情で語る男に「遊び」の要素は一つも見られない。スコールは何を言い出すのかと怪訝に眉を顰めてみせた。
「だが皆も日頃の戦いがあり、敵はこちらの事情など考慮してはくれない」
「はぁ」
「なので先にトーナメント表を作り、当たったメンバーは期日までに都合のつく日に戦闘を行い、勝者が次の戦いに望むという形を取ろうと思う」
「…それで?」
「まだ何人か承諾を得ていないが、承知してもらえるだろうか」
「…それは構わないが」
  鍛錬を名目にされて断る理由はなかった。仲間の実力を見ることも出来るし、実際に戦闘できるというのであればそれは十分プラスである。
  良かった、と頷く光の戦士と共に、コスモスもまた胸を撫で下ろして喜んでいた。
  …何故コスモスが喜ぶのか?
  見下ろせば、気づいた女神がはにかんだ笑みを浮かべた。
「レオンにも承諾を得なければ」
「呼ぶのかよ!ていうかメンバー入ってるのかよ!」
「当然だ。元々バッツとジタンの提案ではレオンもメンバーに含まれる。…対戦としては一人余るので、シード権を進呈しようと思っている」
  いや、そんなものあの男は欲しがらないと思う。
  むしろ参加しようとも思わないと思うのだが、こいつらは一体どこをどう間違えばレオンと一緒にトーナメントを楽しもう!という思考になれるのか不思議でならない。
  一時間限定で召喚される男をメンバーに入れようとすれば、対戦相手が都合を合わせなければならず、また同時に定期的に召喚しようとするならば当然レオンの都合も考慮してしかるべきだ。
  すでに召喚体勢に入っている女神にその辺の気配りは期待出来そうになく、光の戦士は言わずもがなである。
  正直レオンに同情したが、召喚すること自体は反対ではない。
  仮に時間制限がなく、あちらの都合がつくのであればずっとこちらの世界でいてもらっても構わないくらいであった。未来の自分の姿であるとかいう戸惑いはとうにない。同じ顔で同じ声だったとしても、あいつは他人だ。
  実際の所、自分が自分として発する声と他人が他人として発する声は認識として同じではない。
  同じ声だと言われても、実感はなかった。
「…来ます。今度はミスしません。スコール、前を開けてください」
  前回中身が入れ替わってしまったことを指しているのだろう、理解したスコールが素早く横にずれた。
  また同じミスをやられるのは絶対に遠慮したいところである。あちらはどうか知らないが、レオンの身体に入るのはものすごく苦痛であった。自分の身体がまともで良かったと、元に戻ってから一体どれだけ深く神に感謝をしたことか。…神はコスモスとカオスであるという世界だったが、そんなことは関係ない。
  軽くトラウマになっていた。
  見慣れた光が落ちて、レオンが現れる。
「…もういい加減慣れてきたがな…」
  漏れる感想もすでに諦め口調であった。
  迷うことなくコスモスへと向き直り、腰に手を当てため息をつく姿も堂々としたものである。
「…今回は何の用件だ」
「お久しぶりです、レオン。…今日はウォーリアからお話があります」
  ああ、久しぶりに見る大人のレオンだわ、と女神が胸の前で両手の指を組んで拝むような姿勢になった。一見すると祈りのようだが、一般的には夢見る乙女のポーズというやつだ。傍らに立つ戦士へ一瞥もくれることなく、真っ直ぐレオンを見上げたまま話を投げた。自分はずっと見つめている気だ。周到すぎる。
「…ウォーリアというのはそちらの戦士か」
「そうだ。…実はメンバー総当りのトーナメントを開催することになった」

「断る」
 
  即答で、即断だった。そりゃそうだろうとスコールは思ったが、光の戦士は沈黙した。断られるとは夢にも思っていなかったのだろう。楽観的にも程があった。
「…まだ全容を話していないが」
「言われずともわかる。参加する気はない。定期的に召喚されるのも断る。というより、召喚するなとあんたからもこの…、召喚主に言ってやってくれないか」
  そういえばレオンはコスモスの名前を知らなかったのだ。
  散々勝手に召喚して恋する乙女の視線で見つめておきながら、名乗ることすらしていなかったのだこの神は。
  奥ゆかしいと褒めてやるべきなのか、うっかりさんめとツッコミを入れてやるのが正しい選択なのか。スコールには不明だった。
「我々はコスモスに命令できる立場にはない」
  毅然と光の戦士が申し出を断った。毅然とする所を間違っている気がしたが、誰もツッコミは入れない。
「…とにかく、断る。無理だ」
「残念だ」
「コスモス、あんたも俺を呼ぶな」
「……」
  反応はなかった。
  名前を呼ばれてコスモスが照れていた。
  おいそこの女神様、あんたに命運を賭けなければならない俺達の気持ち、どうしてくれる。
  複雑な気分だったが、スコールは状況に気づいた。
  今この場に邪魔をしてくる連中はいない。
  前回散々な目に遭わされたことを、忘れてはいない。あの時誓った報復も。
  思い出したが最後、脳裏を占めるのは急げ!の単語のみである。コスモスと光の戦士との会話はひと段落したようだ。
  ならばもはや、構うまい。
  進み出て、レオンの腕を掴む。視線を向けた男に答えることなく容赦なく引っ張って、歩き出す。
「…スコール?」
「あんたに大事な用がある。…もういいよな?」
  後半は女神と戦士に確認したが、待てと言われても言うことを聞くつもりはなかった。
  走り出さん勢いで移動を始めるスコールにレオンが戸惑いの視線を投げたが、腕を解くことはしない。
「時間がかかる用件なのか?」
  問えば視線を後ろに投げて、スコールが頷く。
「邪魔はさせない」
「ん…?」
「このタイミングであんたが来てくれて良かった」
「……」
  何故だかあまりいい予感はしなかった。
  前回クラウドに見つかったあの場所はもう使う気はないらしく、通り過ぎて荒野を進む。
  そういえば、と思い出す。
「…あの玩具、どうした?」
「燃やして隠滅しておいた」
「そ、そうか…済まなかったな」
「この世界にああいうモノはない。見つかったらあんたが持ってきた物だってすぐにバレる」
「それは遠慮したい所だ」
「変態のくせに」
「俺は至ってノーマルだ」
「……」
  どの口がそんな戯けたことを言うのかとスコールは思ったが、無駄話をするより目的地に着く方が先だ。
  だがレオンはそんな気持ちにはおかまいなしのようだった。
「で、あれからクラウドは何か変わったか?」
  面白がっている。確実に、こいつは面白がっている。スコールは端的に事実のみを述べることにした。
「電波化した」
「は?でんぱ…?」
「あんた責任取れよこのド変態淫乱が」
「…いや、それ俺じゃないだろ…」
「あんたの身体のせいだ。あの腐れ、もうどうしようもない」
「…一体何が」
「知るか変態」
「……」
  え?あのクラウドに一体何が?
  レオンにとっての「クラウド」は、同じ世界に生きるあの男が基準であった。
  あいつも変態で阿呆でどうしようもない男であったが、電波と呼ばれる程痛い存在ではありえない。バックボーンの違うこちらの世界のクラウドは、何か容易に想像できない内面があったということなのだろうか?
  事情が飲み込めず説明を求めるが、スコールは答えない。よほど迷惑を被っているのだろう、ため息をつき不機嫌に刻まれた眉間の皺は深かった。
  クラウドのことは憎からず思っていたスコールであったが、あの日を境に総崩れした。
  何を勘違いしたのか思い込んだのか、見境がなくなった。悪夢だ。
  あの時のイロイロはレオンの身体だったから起こりえたことであって、元に戻ったスコールと同一だと思われては迷惑だったのだが、クラウドにとっては同一であり全て許容されると思い込んだようだった。レオンの罪は重い。重すぎる。生半可なことでは償えない。
「現在進行形で俺は被害者だ。俺にも責任取れ」
「…いや、済まなかっ…」
「謝って許されるか馬鹿。反省しろ」
  斬って捨てるような歯切れの良さにレオンは感心する。若いのにしっかりしているな、という感想だった。年寄りくさいが、キーブレードの勇者や共に活動している忍者娘を思えばその差は歴然としているように思えた。
  奥まった辺鄙な場所に存在するひずみの前で手を伸ばし、スコールは躊躇なく中に滑り込んだ。
  戦闘の手伝いをさせるつもりかとレオンは理解し、同じく中へと踏み込むが、敵はどこにもいなかった。
「…ここには敵がいるんじゃなかったか?」
「ついさっき、俺が掃除した。当分ここは安全だ」
「そうか、…?」
  では何故こんな所に連れてきたのか?
  見やった先のスコールの表情が剣呑だった。
「スコール?」
  ここに入る時ようやく離された腕をまた掴まれ、瓦礫の山が築かれた壁際裏へと連れ込まれた。何だと問うたが、返事の代わりに地面へと押し倒される。
「…おい?」
「前クラウドにやられたことをそのままあんたに仕返してやる」
「……」
  突っ込まれただけじゃないのか?とレオンの表情が物語っている。何でもないことのように受け入れているこいつの精神が恐ろしい。
「あんたホモか?男じゃないとダメなのか?」
「…俺は至ってノーマルな嗜好の持ち主だと、さっきから言っている」
「説得力がなさすぎる。突っ込まれることに対して抵抗はないのか」
「セックスに夢見ることを否定はしないが、俺はそこまで青くない」
「……」
  さりげなく子供扱いされたことに、気づいた。
  別にそんなものに夢は見てない。
  否定しても状況は変わらないだろうことは想像に難くない。スコールは無言でレオンのジャケットを脱がそうと掴んだが、レオンは自分で率先して脱いで見せた。
「……」
  もう呆れるしかなく、スコールがため息をつく。
  ダメだ、レオンに何を言っても通じない気がした。
「自分でヤる宣言をしておいて呆れるとはどういう了見だ」
  レオンが眉を顰めて呟いた。期待に応えてやっているのにと言いたげな様子だった。
「…あんたは嫌がるとか、断るとか、そういうのはないのか」
「誤解のないように言っておくが、お前の感情を理解したから構わないということだ。お前が、そうしたいんだろう?」
「……」
  だから何で許容するのかと聞いている。
  スコールを見上げ、今度はレオンがため息をついた。
「いつも言っていることだが、時間がなくなるぞ。…俺がこの世界に呼ばれたのはお前の為だろ。最近はどうも目的が曖昧なようだが、お前が望むなら構わない。二度は言わない」
「…わかった」
  レオンのスタンスは理解した。スコールは納得し頷いた。
「じゃぁ、服脱げ全部」
「…切り替えが早いのはいいことだが」
「俺も色々学んだ。時間がないなら尚更考えてもしょうがない」
「…ああ、大事なことを忘れていた」
「…何?」
  素直に服を脱ぎながら、レオンが今気づいたと言うように躊躇いがちに呟く。スコールは己のジャケットを脱ぎベルトは外したが、基本的に脱ぐ気はなかった。目の前の男の完成された身体が憎らしい。早く大人になりたかった。
「…この後重要な会議がある。その後視察があって、さらにその後には別の会議が」
「……」
  それは大変だな。
「今は研究施設に一人でいたから何とかなるが、時間はタイトに押している」
「…それが?」
  俺に何の関係が?
  脱いだ男の身体を再度押し倒し、鎖骨から胸のラインを指先で撫でる。前回この身体に入ってしまったおかげで、色々とこの身体のことはわかっていた。
  小さく息を吐き、レオンの視線が空を泳ぐ。
「キスマーク禁止。中に出すの禁止。外に出すのも禁止。身支度整える時間が必要だから、何回もヤるのも禁止」
「どうしろってんだ!」
  最もなツッコミをスコールがした。
  期待させておいてそれはない。
  憮然とするスコールに苦笑を投げて、レオンが己の服を漁る。
「ゴムつけろ」
「…うわ萎える」
「お前…女を前にしてそれは言うなよ?お子様の夢は時に危うい。常に覚悟を持ってだな…」
「うるさいぞあんた子供扱いするなよ。あんたは男だ。ていうかあんたこそそんなもの持ち歩いて、女とヤる気だったのか」
「…節操なくお構いなく召喚されるおかげで、用心の為に」
「……」
  前回のアレは余程レオンにとっても予想外だったのだろう。もしかしたら戻ってから困る思いでもしたのかもしれなかったが、何かあったのかと聞いてもレオンは笑って答えない。
「おかげで今この時役に立つんだから、持ってて良かったということだ」
  まぁ確かにそうかもしれないが。
  制限が多すぎて面倒だ。…いや、普通のセックスをしていれば制限など気にもならないはずだったが、先に禁止事項を言い渡されると精神的に圧力だった。
  微妙なスコールの態度の変化に気づいたレオンが、小さく首を傾げて笑う。
「ヤらないならそれはそれで構わんが、やめるか」
「…いや、ヤる」
  報復は出来る時にやっておかないと、次いつチャンスが巡ってくるかわからない。
  首を振ったスコールと向き合うように身体を起こし、手を伸ばしてスコールの首を引き寄せる。唇を塞いで、舌を伸ばせば絡んでくる舌は熱くて積極的だった。
  手首を掴んで、触れと促す。
  胸元に置いてやれば、的確にレオンが感じる所を爪と指の腹を使って擦り上げる。
「ふ、…っ」
  そうか、スコールは知っているのだったとレオンは気づく。
  脇腹を撫で上げ、左胸を手が弄ぶ。膝立ちさせられ、右は下りてきた唇で挟まれ先端を押し潰すように舌で転がされて走る快感に声が漏れた。
「っぁ、は…っ、…お、前、男抱いたこと、あるのか…っ?」
「ない」
「ん、…ふっよくヤろうと、思ったな…」
「…多分、もう思わない」
「は、そう、か…」
  笑み混じりの言葉に何故だか苛ついた。わかってる風に言われたくはなかった。
  先端を強めに吸い上げ、指先で摘んで刺激してやればレオンの背が撓って仰け反る。震える身体が、気持ち良さそうだった。
「…乳首で、イってろ」
  言われたセリフをそのまま返し、勃ち上がるレオンのモノに手を添え上下に扱く。
  本当にイけそうな程、ダイレクトに下半身を刺激する感覚は物凄い快楽だったのだから、これはたまらないだろうと思う。
「は、ぁ、あっ、アッ、…っふ、ぁ…っま、す、こーる、待て…!」
  力いっぱい手首を掴まれ手を離せと言われるが、意味がわからなかった。
「…何だよ」
「っから、外で、出すな!ゴム、を」
「…ああ、あんたもつけるのか」
  めんどくさいな。拭けばいいんじゃないか、どうせあんた裸なんだし。
  むしろ心配するのは俺の服だ。汚したくない。
  …つけるか。
「…あんたここでつけたらもうイけないけどいいな?」
「……、」
  何故黙る。
  余分にあるのかと聞けばないと言う。どうしろと?
  そのまま思いが口に出ていたようだ。困ったようにレオンが目を逸らすが、こちらとしても早く結論を出してもらわねば先に進めないのだ。 
「レオン、時間がないぞ」
  いつも言われるようにそっくり返す。
  言い返す事ができる立場というのは快適であった。
「…多分、」
「何?我慢するのか」
「…挿れて突き上げられたら何度でもイきたくなる」
「……」
  じゅうななさいのせいしょうねんになんてこというんだこのおとなは!
  鳥肌が立った。
  恐ろしい男だった。
  今すぐ地面に押し倒して突っ込みたくなる。
  クラウドが理性を飛ばした理由も納得だった。
「…じゃぁ我慢しろ。挿れる時につければ」
  そうしたら俺の服も汚れないし一石二鳥だ。
「…、…それは」
  レオンは不満そうだ。
  自分で言い出しておきながら何だこの大人は。
  眉間に刻んだ皺に口付けを落とされたが、そんなものでは誤魔化されない。
  さっさと決断しろと睨みつければ、頭を撫でられディープなキスで呼吸を奪われる。
「っ、レオン!」
「…俺のは、触らなくていい、か、ら」
  我慢するのだろうかと思えば、自分で自分のモノを触っていた。
  このおとなはほんとうにへんたいだ。
  結局イきたいのかと胸の突起を摘んでやり、空いた片手で腰から項までなぞり上げれば喉を鳴らして悦んだ。口端を流れ落ちる唾液を追って舌が這い、唇をぐるりと舐められスコールの舌がお返しとばかりにレオンの舌を舐め上げた。ざらついた感触を食み、尻を撫で上げ後ろを探る。レオンの背が引き攣って、大きく震えた。
「ん、ふっぅ…んぁ、は、はぁ…っア、ァ…ッ、っ…!」
  イったレオンが大きく肩を上下させながら息を吐き、入り口で遊んでいるスコールの指ごと濡れた己の指を含ませた。濡れているのはレオンの精液だろう、ぬめる感覚にスコールもまた息を吐いた。
「ん…っ、ゆっくり、奥まで、押し込め…っ」
  中を馴染ませる役目をスコールに押し付け、レオンは己が吐き出した液体を塗りこむことに専念しているようだった。
  大胆すぎてもう、大人しく従うしかない。
  指の付け根まで押し込んで内壁をぐるりと撫で、同じく奥まで入ってくるレオンの指を邪魔しないよう抜き差しする。中で掠めるレオンの指と、締め付けてくる肉が熱くて狭くて早く挿れたい。
  粘つく音を立ててレオンが指を増やし、お前もと催促されてそっと増やす。二人の指を自由に動かすことで予期しない場所を突かれ擦られて、レオンの腰が揺れた。イったはずのモノが再び首を擡げて、切なげに震えている。
「ッぁ、っく…も、挿れて、いい…」
  指で押し広げられかき回される感覚にレオンが熱い息を吐き、早くと強請る。
  どんだけエロイのかと、わかってはいたがこれはもう耐え難い。 
  男を抱く日が来るなんて、と思わないでもなかったが、報復だからいいかと思う。
  レオン相手にこれが報復になるのか?という疑問については考えないことにした。己の身の内に巣食う感情を拾い上げて分析するだけの理性はもうない。
  レオンのお望み通りゴムをつけ、レオンもつける。
  間抜けすぎる光景だったが、気にしては負けだ。服が汚れなければそれで良しとする。
「…座位がご希望か?」
  エロイ大人は恥ずかし気もなく、唇を舐めながら体位の希望を聞いてくる。どう答えろって言うんだ。
  肩を押して、地面に仰向けに倒す。正常位かと言われてもういい黙れと口を塞げば、腰に両足を絡めてスコールのモノに後ろを押し付けてくる。
  もうダメだこの大人。積極的に求められ、拒める男がいたら教えて欲しい。
  ぬるぬると滑る入り口に先端を含ませ、指で開いてゆっくりと挿入する。
  挿れられる側は経験した。とんでもない快感だった。
  さて逆の立場はといえば、…恐ろしい感覚だった。
「っ…、う、」
「は…ッ、ぁっ…」
  ずるりと熱く熟れた中に呑み込まれ、ざわつく肉襞に擦り上げられる。
  これはヤバイ。すごくヤバイ。
  根元まで埋め込めば、全部が締め付けられひくつく中がただ快感だった。背を這い登る強い感覚に震えが走る。持って行かれそうになるが耐え、大きく息を吸った。
  どちらの立場もヤバイくらいにキモチイイ。
  己がレオンの身体に入った時はただただ戸惑いばかりが先に立ったが、さすが本人は感覚のコントロールも効いており、時折締めては緩めるその手管に相当な慣れを感じた。
  言っておくが俺は十代だぞ。こんなの無理だ。耐えられない。
「い…っかいは、足りないかも、」
「…っダメ、無理」
「……」
  あっさりと拒否された。スコールがため息をつく。
  がっついたらあっという間にイきそうだった。
  ゆっくりと腰を引き、先端まで抜いて、押し込む。ナマで挿れたかったと思うが、仕方がない。
  狭い肉を押し開き突き上げる。もっとと絡みつく内壁の動きが容赦ない。
「っあんた、ちょっと、がっつきすぎ…っ」
「んっふ、は…っぁ、何言って、っ」
「足邪魔、だ、…っ締めるなよ…!」
  絡みつく両足を引き剥がし、腹につく程折り曲げる。小さく呻くレオンの身体の上から奥まで貫き、深々と突き入れればレオンの顎が仰け反った。
「あ…ッ、あ、っふ、んん…ッふ、ぁ、け、っこう、イイ、か、もっ…」
「結構って、何だよ…!」
  失礼な。
  大きくグラインドさせて注挿を速めてやればレオンが動きに合わせて腰を揺らして喘ぐ。
  引きずりこまれ絞り上げられる感覚に歯を食いしばるが、射精を抑制しようだなんて考えたこともないので辛かった。
  一回しかヤれないくせに、さっさとイけと促されるようなコレはどうすればいいのか。
  もう、持たない。
「っぁ、あ、っく、は…っも、も…っと、」
「何だ、」
「もっと、動け…っつ、ぁ、あ、奥まで、突っ込め、これじゃ、イけない、ぞ…ッ」
「……っ」
  せいしょうねんはひっしなんだよきづけばか!
  余裕がない。理性も飛びそう。
  …俺が。
  俺が!?
  愕然とするスコールだったが、もうそんなことを考えている暇もない。
  息が上がった。
  これじゃ報復どころか、レオンの思い通りじゃないか。
  思いっきり、奥まで。
  激しく突き入れ、擦り上げる。淫猥に絡みついて動くレオンの腰は、己のイイ所に導いているようだった。
  エロイ。プロのおねーさんって、こんな感じなんだろうか?
  詮無き事を思う。こうでもしないとイってしまう。ダメだホントにもう、限界。
「あっア、あぁっァッは…ん、い、い、す、こーる…ッ、ぁ、ぁ…っあ、イ…ッ」
  びくびくとレオンの身体が震えた。エロイ顔で眉を寄せ、快感に耐える姿はキた。この瞬間だけは同じ顔とか、そんなものはどうでも良く、意識の片隅にも存在しなかった。
「…っ、ふ、…ッ」
  急速にきつく締め上げられては、無理だ。精を吐き出し、レオンの中から引き抜いた。いつまでも突っ込んだままだと終わらないし、ゴムの処分もしなければならなかった。
  服は汗で湿り埃がついてはいたが、事後の汚れはない。
  さっさとゴムを外し、漏れないように口を閉めて地面に放り出す。
  この作業、萎えるよな…。
  手渡された布で拭いて、身繕いをすればレオンもまたゴムを外してさっさと服を着込んでいた。
「証拠隠滅」
  一言呟き、レオンは魔法であっさりゴムと布を焼き捨てた。こいつは魔法を使えるのだなと思うとその仕組みが知りたくなったが、追求している時間はもうなさそうだった。
  無言で灰となって消えた情事の痕跡を見つめるスコールに気づき、レオンが首を傾げる。
「…で、気は済んだか」
「済まない」
「それは困ったな」
  全く困った素振りも見せない男にスコールが呆れた。
「あんた、いつ召喚すればいいんだ」
「…召喚するな」
「今あんたの世界何時だよ」
「…昼だ。十三時から会議。…この世界は時計もないのか」
「ないな。時間感覚も曖昧だし、天候の変化もない」
「……」
  それは不便というべきなのか、ある意味便利と言うべきなのか。
「夜中に呼べばいいのか?」
「おい」
  レオンがため息をつく。この世界にいる連中は、人の話を聞かないのか。
「夜遅くまで仕事をしていることもある。…徹夜はほぼないが、だからといって深夜に呼ばれて睡眠不足というのも困る」
「…たまにならいいんじゃないのか」
「…スコール」
  こんなに聞き分けのない少年だっただろうか?
  戸惑い混じりに見つめれば、向こうもこちらを憮然とした表情で見ていた。
「おい、何だその顔は?」
「あんたはクラウドの責任も取らないとならないだろ」
「…はぁ?」
「あいつがおかしくなったのはあんたのせいだぞ。それまではまだまともだったんだ!」
「…俺のせいかよ」
「ああ、あんたのせいだ」
「……」
  電波化したクラウドとやらと話をしなければならないのだろうか。
  それは次回以降になるだろうが、面倒だった。
「俺はあの電波とずっと仲間としてやっていかなきゃならないんだぞ、わかってるのか」
  内心を見透かしたようにスコールに指摘されてレオンが唸る。
「…そんなに酷いのか…?」
「あんたも被害を被ってみればわかる」
「それは遠慮したい」
「あんたが言うな!」
「…わかった、わかったから」
  機会があればクラウドと話をする。
  それでいいなと言えば、不承不承頷いた。
「…そろそろ時間だ、まだ何か言いたいことはあるか?」
「…一時間は短い」
「俺にとっては一時間は長いんだがな…」
「今度ナマでヤらせろ」
「……お前…」
  最初の発言はどうした。
「色々不満だ。制限プレイなんてやりたくない」
「…ああ、お前まだ十七か、若かったんだな青少年」
「……」
  半眼で睨みつけられたが、レオンにとっては威嚇されても何ら痛痒を感じない。
「ヤりたい盛りに悪かったな。だがこちらも都合というものがある」
  ああ、もう時間がない。
  ポケットに手を突っ込み、スコールに手渡す。
「時計?」
「機械式で至ってシンプル、余計な機能は何もない。数日に一度はねじを巻け」
「……」
  ポケットの中に忍ばせていた割に、それは懐中時計ではなく腕時計だった。複雑な歯車のようなデザインが絡み合い、シルバーを貴重とした黒と紅の文字盤はなかなかに凝っていて高級そうだ。
「…呼ぶなら深夜に…と、言いたいところだが都合が悪いときもある」
「…ああ、あっちのクラウドか」
「え?…いや、まぁそれは置いておくとして、呼ぶなら今くらいの時間で頼む。…昼食時ならまぁ…」
「……」
  明らかに今誤魔化した。が、ツッコミは入れない。
「わかった」
「…じゃぁまたな。元気で」
「ああ、あんたも」
  ため息混じりの笑顔を残し、レオンが消えた。
  時計を渡して行ったと言うことは、召喚していいということだ。
  …元から向こうの都合もお構いなしに召喚していたわけだが、これは呼んでいいというお許しだった。
  時計を見つめ、腕に嵌めてみる。
  壊さないようにしなければ。
  スコールが立ち上がる。
  まだ敵は現れていなかったが、腹の底に燻る感情が解消しきれず気持ちが悪い。
  別のひずみへ行くか。
  …クラウドに絡まれないように移動しなければ。
  全く迷惑な話だと思ったが、レオンに話せたことで多少は気が紛れたのだった。


vs 電波 へ

目には目を、歯には歯を

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