私には両親はいませんが、おじさんがいます。
おじさんはとても頼りになって強いので、いつも誰かから何かを頼まれています。
自分が傷ついても、その人達を守る為に戦います。
死にかける程の怪我を負わされても、おじさんは相手を許してしまいます。
信じているから、だそうです。
私はおじさんが痛い思いをするのも、苦しい思いをするのも見たくありません。
アサガオの皆と一緒に、静かに暮らしていけたらいいのにと、いつも思っています。
でもおじさんはすごく頼りになって強いから、いつも誰かから頼られて、引き受けて、出かけていってしまいます。
私たちを置いて、出かけていってしまいます。
いつか、おじさんが帰って来なくなる日が来そうで怖い。
おじさんは優しく笑って言います。「必ず帰ってくる」って。
いつも、「大丈夫だ」って。
でも、私は怖い。
いつか、お母さんのように私の目の前で死んじゃうんじゃないかって。
お父さんのように、殺されてしまうんじゃないかって。
私はいつも、おじさんのことを「信じて待ってる」って言うけど、やっぱり不安です。
一緒におでかけした時は、おじさんは何でもわがままを聞いてくれます。
おじさんなりに、心配かけて悪いって思ってるのかな?
ささやかなおねだりをします。
おじさんは仕方ないなっていう顔をして、言うことを聞いてくれます。
普段は全然贅沢もしないし、無駄遣いもしないので、アサガオの皆は「うちは貧乏だ」って思ってるみたいだけど、そんなことないんです。
おじさんの教育方針なんだそうです。
ささやかで慎ましい暮らしをして、皆で助け合う大切さを学んで欲しいって。
お金の大切さを、知って欲しいって。
私もすごく大事だと思う。
おじさんは一年に一回くらいは、東京へ出かけます。
頼まれ事の為に、出かけていきます。
私も一緒に連れて行ってくれることもあれば、一人で行ってしまうこともあります。
どちらも共通しているのは、帰ってきた時、おじさんはすごくお金を持っているということです。出稼ぎに行ってるみたいだねって言うと、困ったように笑います。
いくら持っているのか聞いたことはないけれど、まとまったお金を銀行に預けているのを見たことがあります。
おじさんは「将来、アサガオの皆が一人立ちする時に金が必要になることもあるだろう」って言います。私たちが必要とした時に、助けてくれるんだって。
おじさんはとても頼りになって強くて、優しい人です。
私はおじさんが大好きです。
ずっと、一緒にいたいと思います。
おじさんが困った時には、私が助けてあげられるようになりたいです。
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「……」
「あっ作文、勝手に読まないで!」
「…遥、お前…」
「恥ずかしいから!返して!」
「ああ…だが机の上に出しっぱなしだったぞ」
「小学校のクラス文集で載せたやつなの。懐かしいなーと思って」
「…まだ懐かしむほど経ってないだろう」
「いいの!ご飯の用意するから、おじさんも手伝ってね」
「ああ、わかったよ」
「…ずっとこの気持ちは変わらないからね、おじさん!」
「……」
由美、遥は立派に成長しているぞ!
…と、一人心の中で感動する桐生であった。
END
出稼ぎ労働者、桐生さん。