「桐生さん、聞いてるか?」
「ああ、聞いてる」
「あの時はホントに死んだと思ったなぁ…」
「…そうだな」
「風間さんの弟だったなんてなぁ…」
「…そうだな」
「沖縄の件では俺、間違った選択はしてないよなぁ…?」
「……」
「桐生さんを、守れたよなぁ…?」
「…ああ、そうだな」
「ムショ入ってた時はアンタのこと、殺してやりてぇと思ってたんだよな…」
「……」
「すっげぇ裏切られた感ハンパなくてさ…」
「…すまなかったな」
「謝んなよ…アンタが殺したんじゃねぇってもう、知ってるんだからさ」
「……」
「堂島の龍の抜けた穴、でかすぎんだよ…」
「……」
「桐生さん、アンタ、四代目、マジでさ、もう、どうにかしてくれよ」
「何をだ?」
「あ、そうか。ココにいんだよな。じゃぁいいか」
「……」
「そうか、アンタ戻ってきたんだもんな。じゃぁもう平気だよな。いいや」
「……」
「なぁ聞いてるか?桐生さん。俺の話」
「…聞いてる。が、相当酔ってるな大吾」
「酔ってねぇ。ぜんっぜん、酔ってねぇ。俺六代目になってから酔ったことねぇ。マジで。酒もほとんど飲んでねぇ。マジで。信じられっか?なぁ桐生さん。俺六代目なんだぜ、マジで」
「ああ、知ってるよ六代目」
「ぜんっぜん六代目に対する態度じゃねーし。桐生さん偉そうだ。偉そう」
「そうか?」
「そうだよ。偉そうだ。いっつもそうだ。いっつも俺の前歩いてたクセにいつの間にいなくなったんだ?アンタ四代目あっさり辞めすぎ。俺四代目の下で働きたかった」
「……」
「あ、ウソウソ、今のウソ。俺六代目だからな。今のはナシな、聞かなかったことにしてくれ」
「ああ、わかった」
「何あっさり頷いてんだよ。そこはあれだよ、「大変ですね六代目」とか労わってくれたりするとこだろ」
「……」
「アンタがいないから大変なんだよ。柏木さんもいないんだよ。峯もいないんだよ。主だった連中、いないんだよ。もういねぇんだよ。あぁあの1000億があればなァ…空から金、降ってこねぇかなぁ…」
「……色々すまなかった、大吾」
「お、やっと出た。やっと出たよ桐生さんの殊勝な態度!そうだよそうやって大人しく東城会にいてくれりゃ良かったのに、カタギになるっつってあっさり四代目辞めたんだぜアンタ。あっさり。あっさり俺も見捨てたんだぜアンタ!」
「…すまなかったな、大吾」
「いーや、許せないね。あっさり謝る所がぜんっぜん反省してないね。許せないね」
「…目が据わってるぞ、大吾」
「あーん?んなこたねぇよ。俺はマトモだぜ。なぁ桐生さん、反省してるか?俺に悪かったってちょっとでも思ってんのかよ?」
「思ってるよ」
「じゃぁ決まりだな、アンタずっとここにいてくれよ。東城会に、いてくれよ。ちゃんと立て直さねーとヤバイんだ。マジでヤバイんだ。アンタがいないとダメなんだ」
「…真島の兄さんがいるし、冴島も直系として組を持った。ちゃんと大吾を支えてくれるさ」
「ああそうだな、そうだよな。けど足りねぇよ。ぜんっぜん足りねぇよ。やっぱアンタがいねぇと。伝説の極道がいねぇと。堂島の龍って関東だけの存在じゃねーんだぜ、わかってんだろ。アンタの存在でかすぎんだよ。マジで。どうにかしてくれよ。四代目。桐生さん!」
「重い、大吾」
「あ?重くねぇよ。東城会の重みに比べたらなんでもねぇだろ。アンタなら支えられんだろ。平気だよな」
「酷い酔い方だな…」
「酔っっっっってねぇー」
「……」
「ため息ついてんじゃねぇぞぉ桐生さん!」
「わかったから、退け。何でお前に押し倒されなきゃならねぇんだ…」
「あー?意味わかんねー。つか眠くなってきたな…」
「寝ていい。寝ていいが、どいてから寝ろ」
「…わかった」
「待て、膝枕は却下だ」
「めんどくせぇ…桐生さんはいつも思い通りになんねぇ…」
「何か言ったか?」
「おやすみ」
「おい!大吾!どけと言っただろうが!」
「…俺も思い通りになってやんねぇ…」
「おい大吾」
「…俺はもう寝ました」
「……」
「…もう、きこえませーん」
「……ガキか…!」
「さっきから大吾に桐生チャン独り占めされて、俺寂しいわぁ…」
「六代目ってああいう人間やったんか、真島」
「普段はちゃうで。普段はクソ真面目が服着たようなご立派な六代目であろうとしとるわ。桐生チャンに恥ずかしないようにーとか、思とるんかしらんけどなぁ」
「…なるほど」
「俺は滅多に本部へも来んし、個人的な話もせんからな。桐生チャンに頼まれて東城会に戻ったっちゅーだけやしな」
「お前に個人的な話をしようなんて酔狂はそうそうおらんやろ」
「おっ冴島の兄弟、わかっとるやないか~。俺にそんなん言われてもなぁ?興味もないしな。まぁ聞くだけなら聞いたるけどな」
「フン、まぁええ。桐生が東城会にとってどんな存在かっちゅーのはよぉわかったわ」
「これでも色々あったんやで?」
「六代目の話聞いとったら、まぁそうなんやろな」
「桐生チャン’sストーリー、聞きたかったらいつでも聞いてや兄弟!」
「…何でお前に聞かんといかんのじゃ」
「俺と桐生チャンの戦いの歴史!愛と感動のラブストーリーやで!全米が泣いた大巨編や!」
「アホくさ」
「おっやるか兄弟!表出ろや!」
「冴島組襲名祝いで何で殴り合いせなあかんねん。今日くらい静かに飲ませろや…」
「…なら飲め!吐くまで飲め!おーいビール樽ごと持って来いやー!」
「変わらんなぁお前は…」
「冴島の兄弟も歳は食ったが変わらんやんけ。俺は嬉しいで」
「そうか。まぁお前も飲めや。桐生はさっきから全然飲めとらんみたいやけどな」
「あっそうやった!大吾をひきはがしてこな!…桐生チャーン!飲もうやー!大吾はその辺に捨てとき」
「…兄さん、六代目を床に転がすわけにはいかないだろ」
「かまへんがな!どうせ寝とるんやろ。無礼講や!」
「…起きてるぜ真島さん…」
「お?なんやタダで桐生チャンの膝枕とは贅沢やの六代目」
「…起きてるならどけ、大吾!」
「やっぱ寝てる。おやすみなさい」
「……」
「……」
「六代目は肝が据わっとるな」

「「感心すんな、冴島!」」


END
六代目は桐生さんの前ではお子様になればいいと思う。

管を巻く人。

投稿ナビゲーション


Scroll Up