コンビニで買った安物のロープが軋んで音を立てた。
  桐生が自らの身体の下敷きになった両手を動かしロープを外そうと試みているようだったが、簡単には解けないようにできている。関節を外しでもしない限り、外れることはない。
  伝説の極道と呼ばれ数々の死線を超えてきた男であっても、自由に関節を外せるという話は聞いた事がなかった。
「締まりすぎると感覚なくなっちまうから程々にしたほうがいいぜ、桐生さん」
  心配そうな言葉とは裏腹に、大吾は浮かぶ笑みを隠しもせずに桐生の両脚の間に身体を割り込ませ、シャツのボタンに手をかける。
  射殺す勢いで睨み上げられたが、ボタンを外し項から腹まで遠慮なく撫で回す手を振り払えない桐生は怖くない。
  蹴りと頭突きだけ、食らわないように気をつければいいのだから、大吾の勝ちは揺ぎ無かった。
「かっけー身体してるよな、桐生さん。俺ももっと鍛えねーと」
  僧帽筋、大胸筋、腹直筋と呟きながら順に指を滑らせて、その弾力を確かめる。
  素晴らしい筋肉バランスだと思う。
  おそらく己の理想とする男の身体がここにあり、今自由に触れているのだと思えば喜びで背筋が震えた。
  這い回る手の感覚に桐生が眉を顰めて向ける抗議の視線を消えることのない笑みで返し、項から鎖骨にかけて舌で辿れば首筋が緊張したのが伝わった。
  引きつる項を執拗に舐め上げ、首を竦めて逃げる上半身を追いかける。元々狭いソファに逃げ場はなく、背凭れに顔を押し付ける形になった桐生が不満の声を上げた。
「…お前いい加減、に…っ!」
  強く吸い上げれば言葉が途切れる。
  皮膚の薄い首筋に色づいた紅は鮮やかで、大吾はその出来に満足した。
「ココ、隠れるかな?…恥ずかしー痕ついちまったぞ桐生さん」
「…大吾…!」
「ん?全然足りないって?んじゃ次ココ」
「コラやめろ!」
  ココ、と指差した場所は右胸だった。身を捻って逃げようとするのを肩を押さえつけて留め、唇を寄せてまた吸い上げる。
  ギリ、とロープが音を立てたが、引きちぎることが叶わないばかりか、逆に苦痛を呼び起こしたようだった。
「痛っ…」
「無理すんなって…」
  痛みに呻く顔を覗き込み、視線が合ったところで大吾の視線は右胸に落ちる。
  つられて視線を向けて、桐生は違う意味でまた呻いた。
  右鎖骨の少し下、シャツを着ても明らかに見える位置につけられたキスマークは、当分消えそうにない程明瞭で赤かった。
「大吾、場所を考えろよ…!」
「ちゃんと考えてつけたぜ」
「何だそれは。嫌がらせか!」
「男なら見える所につけたい、なぜならそれは独占欲だから!」
「……馬鹿だろお前」
「まぁまぁ。俺も酔ってるっつーことで、勘弁してくれよ桐生さん」
「できるかッ!」
「ところで乳首は感じるの?」
「……っ!」
  立ち上がった突起を摘めば腰が跳ねる。素直な反応に大吾は目を細めて笑った。
「…なんだ、桐生さんヤラシーな」
「…おい、やめろ」
  ベルトの留め金を外して引き抜き、床に落とす。蹴りを繰り出してくる右足をかわして膝を掴み、自らの肩に乗せて押し倒すように体重をかけて圧し掛かる。浮いた尻に手を回してズボンと下着をずり下ろし、硬直し抵抗する両脚から引き抜いて、これも床へ放り投げた。
  露になった桐生のモノに手を沿わせて撫で上げる。
  表情を窺えば眉根を寄せ唇を噛み締めて感覚に耐えていた。
「イイなぁ…その顔、俺好き」
「寝言は寝て言え!」
「…やっぱ男はココいじられんのサイコーだよな。じゃぁさ、コッチは?桐生さん。桐生さん、ココ、気持ちイイ?」
  ゆるゆると上下する指はそのままで、後ろに右親指を第一関節まで含ませた。入り口の狭さを確認するように角度を変えながら抜いては入れてを繰り返す。爪が引っかかるのが刺激になるのか、押し込めばきゅっと締まって指先を銜え込む。
「…ッ」
「んん…?桐生さん、括約筋も鍛えてんの?すげぇ、早く挿れてみてぇ」
「…っば、」
「ローションで前も後ろもグッチャグチャのヌルヌルにしてさ、なんつーの、汁まみれってヤツ?うわヤベェ想像したら勃ってきた。早くやろう今すぐやろう我慢できねぇよ」
「…ガキじゃあるまいし…っ」
「こんな機会滅多にねぇじゃん。普段からヤらせてくれんならともかく…サカって何が悪い」
「女とヤってこい!」
「アンタとヤれんならそっちのがいいね。あ、ヤベ俺変態?ホモじゃねーんだけど」
「お前は十分変態だ。変人だ。馬鹿だ。阿呆だ」
「うーん…」
  首を傾げて考え込む大吾から身を離そうと桐生はソファをずり上がるが、肩に乗せられ固定された右足を掴まれ引き戻される。
「…桐生さん、この期に及んで往生際が悪いぜ」
「……この期もクソもあるか」
「キモチヨクなろーっつってんだから、いいじゃんか…っと」
「…ッう、…っ!」
  掌に落としたローションを指先にたっぷり絡めて、桐生の中に押し込んだ。
  中指を付け根まで、熱い肉壁に擦り付けるようにかきわけながら奥まで入れて、締まる内部をかき回す。柔らかい肉が絡みつく感覚と熱さに下半身が疼いた。
  指を増やして押し広げ、ローションを追加する。
  ぬちゃぬちゃと立つ水音と増やされた指に擦られる肉の感覚に、たまらず桐生はため息をついた。
「は…っ、だ、いご…!」
「…何?もう挿れて欲しい?挿れていい?」
「ちがう、っ」
「ん?ああそうか、コッチも触って欲しいよな。ヌルヌルになったらすげーイイと思うぜ…」
「待、ちがう、やめろと言ってるんだ…!」
  また逃げようとする身体を難なく押さえ込み、透明の液体を溢れる程に掌に落として桐生のモノを握り込む。
「…ッ…う、ぁ…っ」
  あまりの冷たさと突き刺さる感覚の大きさに桐生の身体が仰け反った。
  最初の衝撃を過ぎ冷たさに慣れた後には、ぬめる大吾の手がいやらしい音を立てながら上下し、強弱をつけて追い上げられる快感に身震いする。
「ふ…ッ、く…ぅっ」
「すげ、気持ちよさそう…もう、イっちゃう…?」
「……ぁ、大…ッ」
  縛られた両手でソファを掴む。身体の下で自重を支え続ける力も感覚ももはやないが、腕の上で跳ねる腰を抑える術もない。
  逃げないように桐生の身体を固定して、大吾が優しく囁いた。
「イくとこ、見せて…桐生さん。ホラ、後ろも指入れてあげる」
「ッ…!っア……ぅッ…」
  奥まで入れた指が付け根から締め上げられた。
  キツイ中を、かき回す。
  グリグリと肉を押し返してやれば、身体が一度大きく跳ねて痙攣した。
「…ヘヘ、桐生さんのせーえきだ、せーえき」
「……ッ…!」
  掌に当たって下腹部に散った生暖かいソレを、桐生の胸から腹へ塗りつけた。
  ローションと混じる白が部屋の明かりに反射して、肌色の上に散っている。
「…エロイ。…っていうか、エグイ。もうダメ、俺たまんねぇわ」
  上がった息が整わない桐生は、大吾の言葉を聞き逃した。
  右足を肩へ担ぎ直す大吾の後頭部を見下ろした瞬間、顔を上げた大吾と目が合った。
「…桐生さん、ちゃんと鳴いてくれよ?」
「…何、を」
  言ってるんだ、と、最後まで言えなかった。
  笑みを浮かべたままの大吾の瞳に余裕はなかった。
「…ッア…っ…、ッ!」
  ミシ、と音がしそうな程に、無理矢理入り口を抉じ開け侵入してくる大吾のモノは容赦がない。
  先端を飲み込んでしまえば奥まで到達するのはすぐだったが、引きつる背中と拒絶する内壁が、異物を排除しようと締め付ける。
「っ…!」
  大吾が呻いて、動きを止めた。
「は…ッ、く、るしい…、大吾…ッ!」
「ヤバイって…!力抜いて桐生さん、イっちまうだろ…!」
「っく…!…の、ヘタクソ…ッ!もっと、気を遣え…っ!」
「へ、ヘタクソて…!ひどくね!?ちょっと焦っちまっただけだし…っ!」
「るせぇこのヘタクソ!…ッふ、ぅ…っ動くな…!」
  ズルリと先端まで引き抜かれ、引きずられるような肉の感覚に桐生の声が震えた。
「ぁーぁーもーいいよ…一回イっとく…中に出してやる」
「う、大吾、待て…!お前、ゴ…」
「やっぱー、ナマがいいよなーナマがー」
「……ッッ!!」
  制止など聞けるはずがない。
  追いすがるように絡みつく肉を先端で押しのけて、奥までブチ込むのは言いようのない快感だった。
「…ッ、グッチャグチャのヌッルヌルになったアンタの中、ヤベェマジで…!」
「は…ッ!」
「保たねぇ…ッ、は、ま、いいけど…ッもっかい、イくから!」
  両腕が下敷きになっている分、桐生の腰の位置が高い。
  打ち付けぶつかる肉が、深く繋がるたびに不安定に揺れて違う場所を擦るのがたまらないのか、桐生が安定を求めて大吾の身体に両脚を絡みつけた。
「…ッ、手、痛い?感覚、ない…っ?」
「と…っくの昔に、感覚なんざ、ねぇよ…ッ!」
「一回、イったら、外してやる、か、ら…っ」
「んん…ッ!っ…ァッ…は、やく…!」
  早くイけと言っているのか、早く外せと言っているのか。
  わからなかったが、求められているのは嬉しかった。

 
「すげー、ここシャワーもあるんだな」
「……なかったら地獄を見るところだ…」
「桐生さんが足腰立たねぇとか…エロすぎ」
「…聞こえねぇ。何も聞こえねぇな」
「はいはい。滑らねぇようにしてくれよ。身体洗うの手伝おうか?」
「失せろクソ大吾め」
  シャワーのコックを最大に捻り、大吾に水をぶっかける。
「ぎゃー!ちょっ…アンタ大人げない!」
「こっちは力入んねぇんだ。邪魔すんな」
「…だから手伝うって…ついでにラスト一回イっとく?」
  温まった湯を手をかざして避けながら狭いシャワーブースに踏み込んで、大吾が桐生の両脇に手をついた。
  そういえばキスをしていなかったと思い立ち、顔を近づけたが頭を拳骨でぶん殴られた。
「ぃ…ッ痛ぇし…!」
「両手の感覚はやっと戻った。ボコボコにされてぇか」
「……、いえ、結構です…」
「部屋に戻って片付けしてろ」
「…ハイ…」
  すごすごと抵抗することなく出て行く大吾の背中を見送って、桐生はがくりと項垂れた。
「…クソ…」
  二度とこんな醜態は晒さないと心に誓い、力の抜けた足をバシッと叩いた。

「くっそー…やっぱロープ外すの最後で良かったな…」
  色々なモノが飛び散って無残な姿を晒している革張りソファを拭きながら、次なる作戦を考える大吾であった。


END
へこたれないヘタレ大吾が大好きだ。

コンビニはお好き?(大×桐)-02-

投稿ナビゲーション


Scroll Up