「兄貴ィ!俺が選んだ渾身のコスチュームを見てください!兄貴が赤で俺は青にしました!マスクも完璧!やっぱ覆面レスラー最強っしょ!」
「子供に見せるだけのプロレスに、随分本格的だな」
「兄貴、子供相手だからってプロレスを舐めないでくださいよ!やるからにはリングサイズも一辺6メートル!ロープは3本!」
「床はないんだな」
「…砂地もアリです、兄貴!マットが全てじゃねぇ!」
「そ、そうか」
「あとで流れは合わせるとして…」
「八百長か」
「最初は強く当たってあとは流れで…って、ちがーう!」
「……」
「演出です、え・ん・しゅ・つ!相撲の八百長とは違うんスよ、兄貴!そこんとこ間違えないで下さい!」
「…ああ、わかった…」
「とりあえず、コスチュームのサイズ合わせてみてください。ピッタリだと思うんスけど」
「…サイズはぴったりだな。よくわかったな」
「当然でしょ!俺の目に狂いはないッスから!」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味です、兄貴。俺の目に、狂いはないッスから!見立て通り!」
「……、……そうか…。詳しく聞くのはやめておこう」
「聞いてくださいよ兄貴!何で兄貴のサイズがわかっちゃうのかを!」
「絶ッ対聞かねぇ」
「俺の愛のチk…ウゴフッ…!」
「聞かねぇと言ってんだろうが!」
「鳩尾狙ってくるとは…!」
「ああ、手が滑った」
「一緒にラブホに行った仲なのに!ひどいっしょ兄貴ィ!」
「あれは不・可・抗・力・だ!」
「本気で嫌そうな顔しないで下さい!俺傷ついちゃうでしょ!」
「ところで何で俺のは丈が短いんだ」
「…ホントはパンツにしたかったんスけど。馬場とか長州とかがはいてるみたいなピッチピチのヤツに」
「あ?何か言ったか力也?」
「…そう言うでしょ、絶対そう言うと思ったから、ショートパンツタイプにしました。俺の精一杯の妥協です。…そこでまた拳振り上げるのやめて下さいよ…」
「…お前と同じ足首までのでいいじゃねぇか。交換しろ」
「イヤです!お断りです!断固拒否します!」
「……」
「二人揃って丈長いと個性がねぇ!兄貴はそれじゃなきゃダメなんです!」
「お前が短いやつでいいじゃねぇか」
「さっきも言いましたが、イヤです!お断りです!もう決めたんです!」
「……」
「兄貴それいくらしたと思ってんスか!マスクと合わせて10万は下りませんよ!マジで!」
「えっ?…この衣装、そんなにすんのか…」
「プロレスを舐めないで下さいって言ったでしょ、コスチュームも高いんスよ!しかも俺渾身のデザインですからね!」
「オーダーメイドか!」
「当然ッス!やるからには徹底的にやるのが俺の主義ッスから!それに兄貴のプロレスコスチュームなんて二度と拝めないかもしれないでしょ!そりゃ本気でやるでしょ男として!」
「…意味がわからねぇが、意気込みはわかった」
「わかってもらえれば結構です。っつーわけで、着てくれますよね兄貴」
「…だがなぁ…」
「まだ言うか!…リングブーツ履いたら膝まで隠れるでしょ。絶対領域には届きませんがそれなりにイイ感じになる予定なんです」
「…何だ絶対領域って」
「兄貴は知らなくていいです。ていうかむしろ知らずに生きていて欲しい」
「お前の言うことが理解できねぇ」
「大丈夫です、一部のマニアがわかってればいいことですから。それに…」
「それに?」
「遥ちゃんも、そのコスチュームすごく喜んでくれました」
「遥が?」
「はい、「絶対おじさんに似合うね!早く見たいね!」って、言ってました」
「……」
「着てくれますよね?兄貴」
「…しょうがねぇ…」
「よっしゃぁー!幹夫ーッ!カメラ用意しろカメラー!!超高感度のやつな!エグイ角度から舐めるように撮れよコノヤロウ!!」
「わっかりましたぁー!桐生の叔父貴のベストショット、撮りまくります!任せて下さいッス!」
「………………」
「じゃ、リングに皆集めときますんで!用意できたら来てくださいね兄貴ィ!」
「………………」
「…あれ、おじさん?どうしたの固まっちゃってるけど…」
「……ああ、遥…。お前、コレ見たか?」
「え?あ、これプロレスの衣装?うわーマスクカッコイイねー!初めて見たよ!」
「………そうか」
「どうしたの、おじさん?」
「いや、何でもないよ遥。太一達を集めて待っててくれ」
「うん!楽しみだね!」
「…そうだな」

「…兄貴…」
「何だ力也」
「…神室町のど真ん中で、俺だけリッキーマスク姿って…すんげー羞恥プレイなんスけど…!」
「注目の的だな力也。ハブが誇らしげだぜ」
「いやいやハブはいいんスよハブは!そこはいいんスよ俺と沖縄の誇りだからッ!!いやそうじゃなくて、羞恥プレイなら兄貴もドラゴンマスク姿で一緒に歩いて下さいよ!!」
「俺にそんな趣味はねぇよ」
「俺にもないわ!!!アンタ鬼かっ!!!」
「クリア特典のコスチュームチェンジはなかなか使えるな」
「せめてかりゆしに!スーツとは言わないからかりゆしに!着替えさせて!兄貴ィ!!」
「遥のコスチュームは…今のままでいいな。俺もスーツのままでいいな。っていうかそれ以外選択肢ねぇな。神室町でかりゆしは合わねぇしな」
「…おいいいいぃ!ドラゴンマスクが!あるでしょ!兄貴!!!」
「ねぇよ」
「……」
「しばらくそのまま歩いてろ」

「…堂島の龍、桐生一馬のキワドイ絶対領域写真あるよー!!買いたい奴ァ前に出ろッ!!!!!!!」

「…前も言ってたな…それは何だ力也…」
「フッ…俺を怒らせたら怖いんスよ兄貴…!」

「その写真、全部買ったァーーーーーー!!!!!!!」

「…だ、大吾ッ!?」
「死の淵から舞い戻ってきた男、東城会六代目が買い占める!おいそこのプロレスマスク、いくらだ!?言い値で買ってやるッ!!!」
「おっ…さすが東城会六代目、アンタ漢だな…!よし、全部売ってや…」

「待たんかいワレェ!!!桐生チャンのお宝写真っちゅーたら俺も買う権利あるやろがー!!!」

「ま…」
「チッ…真島さん、アンタどこから沸いて出た」
「アホゥ!桐生チャンのいるところ、どこにでも沸いて出るんが真島吾朗や覚えとけ六代目!…ちゅーか桐生チャン!絶対領域ってなんやねん俺を悶え殺す気か!」
「………だから何だよその絶対領域ってのはよ…」
「おおっとぉ兄貴ってソッチの人達にやっぱ大人気だったんスね。俺の目に狂いはなかったぜ!」
「ソッチってドッチだこら力也…!」
「向こうの方に興味津々な連中も集まって来てるし…すげーなぁ兄貴!やっぱ兄貴は伝説の男だ!俺こんな兄貴持って幸せだなぁ!」
「……」
「俺が先に名乗りを上げたんだ。俺に買う権利があるよな?桐生さん」
「何言うとんねん大吾。ひよっこは黙っとけ」
「あ?んだとコラやんのかテメェ!」
「…六代目やからって遠慮はせんで?死んでも文句言うなや大吾…!」
「…だから絶対領域って何なんだ力也」
「兄貴は知らなくていいです」
「この状況でそんなこと言ってられるか!何でこいつらが知ってて俺が知らねぇんだ!納得いかねぇ!」
「それはこの人達が変態だからです」

「「お前が言うな変態マスクマンめ!」」

「んな…っ!誰が変態マスクだテメェら!兄貴とセットで作った俺渾身のデザインだぞゴラァ!兄貴は赤だ!使用済みコスチューム持ってんだぞ羨ましいだろへへーんだ!」
「なくしたとばかり思ってたが…」
「俺が持ってます。持ち歩いてます。肌身離さずです」

「「…な、何ィ…ッ!?」」

「見せてやんねぇ。この写真で抜いてろテメェら。半々で売ってやる」
「「……ッ!!」」
「おい力也」
「はい兄貴。反省してくれましたか?着替えさせてくれるなら写真データ渡しますよ(コピー持ってるし)」
「…死にたくなければとっとと逃げろ」
「…はいぃ?」

「「おいこらガキ、持ってるモン全部渡せ…!」」

「………え?」
「俺は助けねぇからな。生きてたらニューセレナで会おう」
「…って……え?」

「「殺してでも奪い取る!」」

「ぎ、ぎぃやぁあ嗚呼ああああーーーー!!!!!!!!」
「「逃げんなゴラァアア!!!!!」」
「……。…結局よくわかんねぇままか…あいつらもよくやるよな…」


END
コスチューム変更で力也だけプロレスコスにしたらすごい変態に見えた。

ドラゴンマスクとリッキーマスク

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