「…土佐に行くとは言ったが、考えてみればあんたらまで来る必要はなかったんじゃないか?」
「あん?何言うとんねん一ちゃん。京を出て船乗ってもうすぐ土佐やで?言うにしても遅すぎにも程があるで」
「そやで斎藤。今更や。それにこれは、やらんとあかんことやろ」
「…ああ、まぁ、そうなんだが…」
「乗り掛かった船だ、斎藤君。伊東と佐々木も、野放しにはしておけないからな」
「土方…さん」
「船に乗っとるだけにな。歳チャン、おもろいこと言えるんやんけ!」
「何も面白いことなど言ってないが」
「おい笑たるなや、総司。副長は大真面目やねんぞ」
「大真面目にボケよる所がおもろいんやないかい」
「ボケてないが」
「聞いたか一ちゃん。鬼の副長チャンはな、無表情で人笑わせる天才なんやで。しかも爆笑ちゃうねん、小笑いやねん。微妙やろ、笑たってや」
「…今の、面白かったか?」
「一ちゃんの裏切り者!」
「え、なんで!?」
「ワシのこと慕ってるみたいに言うといて、弄んどったんかいこのドスケベが!」
「…いや、意味がわからないんだが」
「どういうことやねん総司?」
「おうおうよう聞いてくれた新八っちゃん!一ちゃんがワシのこと「頼りにしてる、兄さんみたいに思ってる」言うて告白してきよったんやで?それをやな」
「告白なんかそれ」
「愛の告白やと受け取ったでワシは。あん時の一ちゃんめっちゃ可愛かってんで新八。見せてやりたかったわ~」
「別に見たないわ」
「ほれ一ちゃん、新八が見たがっとるし、もっかい再現してぇや」
「…見たがってないだろ?」
「コイツの「いらん」は「どっちでもええ」やねんで覚えとき」
「どこをどう解釈したらそうなんねん?いらんもんはいらん」
「歳チャンも恥じらう一ちゃん見たいやろ?な?見たいやんな?…なぁ?」
「凄むな総司。…自分が見たいだけなんじゃないのか?」

「当たり前やろが!!」

「認めよった!」
「何遍でも見たいし聞きたいわボケェ!」
「…じゃぁ、好きにすればいいだろう。斎藤君、やって見せてくれ」
「はぁ?あんた真面目な顔して何言ってんだ。ボケたのか?」
「ボケてないが」
「…真面目に言ってんなら尚更やめろ。というより、止めてくれ」
「総司」
「あぁ?お前真面目な顔して何言う気や。ボケるんちゃうやろな」
「ボ」
「ここボケるとこちゃうわ!」
「……やめたれ総司。真面目な顔して副長が落ち込んどるで」
「落ち込んでないが」
「え、そうなん?庇って損した」
「……」
「お前ら…土方…さん…が、落ち込んでるぞ」
「一ちゃん、そのぎこちない呼び方やめたれや」
「そうやで斎藤。呼び捨てなら呼び捨て、さん付けならちゃんとつけて呼んだらな。半端が一番あかんねんで?」
「…何故俺が責められてるんだ…?」
「斎藤君、何なら「歳チャン」でも構わないが」
「いや、それは無理」

「……」
「……」
「……」

「…何だ?何で黙るんだあんたら…」
「歳チャン、落ち込んだらあかん」
「そうやで副長。斎藤に悪気はないねん」
「ああ、わかっている…」
「気ぃ落とすなや。歳チャンはふんぞり返って腕組んどんのが一番似合とるんやから、そんなしゃがみこんだらアカン」
「ああ、すまないな総司」
「しっかりしいや副長。大丈夫や、俺らがついとるで」
「…土方…さん、落ち込んでるのか?本気で?何で?」
「何でってそら、歳チャン渾身のボケが物の見事に空振ったら、落ち込むわなー。はー歳チャンかわいそーカワウソーカワセミー」
「…何?渾身の…ボケだと…!?」
「真の真面目はここにおったか」
「いや、待て、俺はそんなつもりじゃ」
「いいんだ、斎藤君。気にしないでくれ。私にも非はあった。わかりにくかったかな」
「…いやわかりにくいとかいう問題じゃなくてだな…」
「そうやなーもっと大袈裟にやらんとアカンかもしれんで?一ちゃん素直なええ子やからな。わかりやすいのが一番ちゃうか?」
「素直なええ子にボケツッコミの機微を要求したらアカンやろ。ありのままが一番やで、副長」
「そうか、なるほどな…再考の余地ありだな。今後に生かすことにしよう」
「俺を置いて話を進めるな!」
「で、何の話しとったっけ?総司」
「あん?一ちゃんの恥じらい場面よもう一度、っちゅうとこやった」
「ああ、そやったな。斎藤、どないすんねん?」
「だから、やらないって言ってるだろう」
「やらんのかい!」
「永倉…あんた見たくないって言ってたくせに、何なんだ」
「それはあれや、その場のノリっちゅーやつや」
「…何なんだ!?そのノリとやらに全くついていけないんだが!?」
「安心しろ、斎藤君。私もついていけないからな」
「仲間がいても嬉しくない!」
「……」
「こら一ちゃん!歳チャンいじめたらアカン!」
「こんな仏頂面でもお前のこと気に入っとるんやで副長は。いじめたんなや」
「ああもう面倒くせぇな!そんなヤワな精神で副長張れるわけないだろ!冗談だろ!?冗談だよな土方さん!?」
「やっとちゃんと呼んでくれたな斎藤君。ならば良し」
「……っあ?」
「っかー!つまらんわぁ。このよそよそしい感じがたまらんかったのになぁ」
「これから死地へ向かおうっちゅうんやから、団結できて何よりやんけ」
「ま、ええわ。ほんならワシの一人勝ちやな。毎度おおきに~」
「待て待て、金を出すな渡すな。…あんたら、何賭けてたんだ…?」

「「「いつ全員と打ち解けるか」」」

「…何!?」
「俺はもっと早い段階やと思てたんやけどな。意外とかかったな、斎藤」
「稽古した時には打ち解けてくれたかと思ってたんだが…甘かったようだ。努力が足りなかったな」
「……」
「いっちばんに打ち解けてくれたんはワシやろ?一ちゃん!」
「……」
「なー?一ちゃん!」
「永倉だが」

「何ぃ!?」

「…え、ホンマか?」
「あんたが一番マトモそうだと思ってたんだが…」
「なんで過去形やねん!」
「今過去形になった!!」
「あ、斎藤が拗ねよったで」
「斎藤君、怒るな」
「怒ってないが。…あんたら仲が良いな、ということはよくわかった」
「新選組以前からの付き合いだからな」
「…まぁいい。そこに俺がいるということが不思議だが、…助かる。ありがとう」
「…斎藤君」
「改まって言われると恥ずかしわ。やめぇや斎藤」
「ああ、…すまん。もうすぐ土佐に着く。さっき用意したんだがこの、」
「はーじーめーちゃーん…」
「…何だ?」
「一ちゃんが淫乱ドスケベっちゅーことはよぉわかった」
「何でだよ!」
「こいつらまでたらしこみよってからに!ひどいわぁひどいやっちゃで一ちゃんは」
「……っ!」
「斎藤君!こら総司!!」
「総司、関節きまっとるで!緩めたれや!」
「…じゃかぁしいわぼけぇ。ワシゃ傷心なんじゃ、お察し下さいっちゅうねんクソがぁ」
「……っ!……窒息するとこだっ…た!」
「斎藤…、お前どんな殺し文句使たんや総司に…?」
「ころし…?いや、別に俺は」
「んん?ワシを敵に回すんか一ちゃん?今ここで襲ったろか?ヤったろか?かまへんで?」
「…襲うの意味が違うような気がして仕方がない…」
「合うとるな」
「間違いなくそっちのようだな、斎藤君。察しがいいようだ」
「何で冷静なんだあんたらは…!?」

「「総司のやることだから」」

「…おいいい」
「はーじーめーちゃーん」
「…とりあえずちょっと離れてくれないか」
「あ?何でやねん」
「いいから。ほら、手を」
「…ん?手?つなぐんか?」

「…沖田の兄さん、あんたには感謝しきれない。その…ずっと俺の兄さんでいてくれ」

「……」
「総司が悶絶しとる」
「おお、総司を悩殺できる人間がいるとはな」
「さて沖田はとりあえず放っておいていい。さっき作った弁当があるんだが、持って行ってくれ」

「「手作り弁当…だと…!?」」

「美味くできた。ちゃんと特上だ。色々種類があるんだが、どれでも好きなものを」
「……」
「……」
「ん?どうした?」

「それ一番にワシに選ばせんかーーーーーーい!!!!!!」

「…ああ、正気に戻ったのか沖田」
「兄さん!」
「…沖田の兄さん」
「くぁーー!!!」
「…自分で呼ばせて悶絶しとるで。アホやなコイツ」
「総司を大人しくさせたいときには有効な手段だな」
「慣れるだろそのうち」

「慣れるまで呼んでくれや一ちゃん!!!!!」

「…いいから、好きな弁当選べよ沖田の兄さん」
「くぁーー!!!」
「…埒があかんな。革命ころころ揚げ弁当もらうわ。旨そうやな」
「でははなまる重を」
「…お前ら…!」
「もろたで総司。早いもん勝ちや」
「何やと…!」
「兄さんには鬼神弁当と、加須底羅とあと…長命丸も、持って行ってくれ」
「は、はじめちゃん…」
「ちゃんと、生き残ってくれ。…沖田の兄さん」

「結婚しよ」

「……はぁ?」
「一ちゃんの愛、受け取ったでぇええええええーー!!!!!」
「あ、壊れた」
「…幸せそうで何よりだな」
「…さてと。あんたらも薬持ってるか?準備は万全にな。長命丸、持って行ってくれ。死ぬな。生き残れよ」
「……」
「……」
「何だ?永倉も土方さんも、何か問題あるか?」

「「ああうん、淫乱ドスケベ納得」」

「何でだよ!?」


END
人物把握のために書いたはずが、なぜこうなった。
「結婚しよ」を書きたかっただけ!

進撃の侍(維新!)

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