緋の残照-07-

  リノリウムの床に散乱した硝子の破片を踏みしめると、細かく砕ける音がした。   廊下の奥、開いた扉から覗く部屋内には書籍や機械類がまるで空き巣に荒らされた後のように潰れて床に落ちている。酷い有様だった。   レオンは鍵

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緋の残照-06-

  ここ最近、同じ夢を見る。   二十階建てのこのマンションは神羅が大部分を借り上げている為、住んでいるのはほとんどがサラリーマンだ。平日夜は遅くとも一時か二時頃には殆どの住民が就寝し、駅から徒歩十分程の住宅街に聳え立つ

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緋の残照-05-

  陽光は嫌いだった。   能力が著しく低下し、制限される。   嗅覚や聴覚など、五感はそのままでいられるが身体能力は人間並みに落ち込んだ。   吸血鬼という生き物は闇に紛れ人間の生き血を啜って生きているが、何故「闇に紛

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緋の残照-04-

  十九時半ぴったりに『SEVENS HEVEN』に着き、扉をくぐろうとしたが、狭い通路から出てくる黒いスーツに身を包んだ男女に阻まれ、脇に避ける。男女は軽く会釈をし、無言で階段を上がって立ち去って行ったが、食事や酒を楽

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緋の残照-03-

  午後、駅前で待ち合わせをした。   その日は朝から曇っており、残暑厳しいここ最近にしては風も涼しく過ごしやすい一日だった。   待ち合わせの五分前に到着したクラウドだったが、レオンはすでに待っていた。 「…悪い、レオ

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緋の残照-02-

  二十二時を過ぎて『SEVENS HEVEN』にやってきたクラウドは、憔悴しきった顔をして指定席へと座り込んだ。   今日も漏れなく満席であったが、毎日来店する事がわかっている為、カウンター奥の端の席はリザーブされてい

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緋の残照-01-

  時刻は十九時を回ったばかりだった。仕事を終え自宅の最寄駅へと向かう車窓から見える都市は、日没を迎えたはずなのに明るい。上空は暗い闇と星空に支配されていたが、高層ビルの強化ガラスに反射した残照とネオンと車のヘッドライト

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非言語コミュニケーション-02-

  耳元でごそごそと音がして、暗闇一色だった視界に明かりが灯る。   瞼の向こうが明るいのは、おそらく室内の照明のせいだろうと見当をつけて目を開ければ、視線の先に照明があり眩しさで目が眩んだ。   眉間を絞ってやり過ごし

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非言語コミュニケーション-01-

「大真面目に、真剣に戦ってくれよな!」   世界を救う勇者ご一行はそう言って、屈託のない笑顔を見せた。   参加する裏ハデスカップの参加レベルは決して低くはないのだが、少年達は優勝する気満々だった。 「…俺達に当たるまで

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ルール:名前呼び禁止。敬語を使う。

  白の開襟シャツに、パンツと揃いのネクタイは青と白のチェック柄が目に涼しげだ。靴はもちろん学校指定の革靴で、靴下は紺、スクールバッグもおまけのように置かれていたが、さすがに教科書は詰まっていない。あっても使い道がないの

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