「夜神くん夜神くん」
「…竜崎…今何時だと思ってるんだ…?」
「3時半を3分25秒回ったところです」
「…何か急用でも?」
「眠そうですね夜神くん」
「今の今まで夢の中だったんだから当たり前だろ…!…で、何なんだよ一体」
「眠れません」
「は?」
「ですから、眠れないんです。何とかしてください」
「…竜崎が眠れない、という理由で、眠っていた僕が起こされたのか…?」
「そうです」
「…えーと…」
「今夜神くんと私は手錠で繋がれていて、いわば一心同体です。一心同体の私が眠れずにいるのに、夜神くんだけ安らかな眠りについているなんて許さざるべき大罪です」
「わけわからないこと言いながら、僕の上にのしかかるのはやめてくれないか」
「捜査で疲れてるので、寝たいんです。寝たいんですが、寝れないんです。何とかしてください、夜神くん」
「お前は腑抜けた顔で甘いもの食ってるだけだろ!捜査は僕と捜査本部の皆がやってるだけじゃないか!」
「甘いものを食べながら脳はフル活動してるんですよ。これでもLですよ?世界の切り札なんですよ?その私が眠れないなんてありえない」
「…自分が寝れないからって、他人を巻き込む『世界の切り札』の方がありえないよ、僕的には」
「聞こえませんね」
「聞こえてるじゃないか!」
「ああ、こんな会話をしている間にもさらに4分13秒が経過してしまいました…」
「僕の4分13秒を返せ」
「私が眠れれば夜神くんも眠れますよ」
「何それ僕が寝れないのは強制なのか?」
「世界の摂理です」
「お前がまるでキラに見えるよ」
「そんな噂もありましたが、私はLですから。ありえません」
「……」
「心配なさらなくても、今の夜神くんはキラには見えませんよ」
「…起き抜けで脳が働いてないと思って、言いたい放題言ってるな竜崎…」
「いつも言ってることですよ。そんなことより」
「…ああもう、重い、重いよ。男に迫られる趣味はないんだ。どけ竜崎…眠れる方法を一緒に考えてやるから!」
「それを聞いて安心しました。私も男に迫る趣味はありません」
「安心するのはそっちじゃないだろ!」
「手錠で四六時中一緒にいるなら、必要なことですし」
「考えたこともなかったよ」
「……え?」
「え?ってなんだよ」
「……いえ」
「……」
「……」
「…で、考えたんだが竜崎」
「私にも迫られる趣味はありませんよ?」
「だからソッチじゃないって言ってるだろ!」
「そうですか…」
「…なんだか竜崎と話してると頭痛がするよ」
「キラだからですかね」
「僕はもう寝る」
「あああ嘘です夜神くんすいませんいえ嘘じゃないですがとりあえずここは一歩妥協してキラとは言いませんので眠れる方法を考えて下さい」
「棒読みかよ…もういいや…。眠れないのは大抵精神が高揚してる場合だから、精神を落ち着かせてやれば眠れるんじゃないかな」
「なるほど、確かに私はLとして考えることが多すぎますからね」
「ははっ僕はもうツッこまないよ!これ以上お前と話してると僕が寝れなくなりそうだからね」
「私と会話すると興奮するんですね?」
「頭痛がするんだよ。…さて、ホットミルクでも飲めば、よく眠れるらしいよ。あとは軽いストレッチで身体を解すとか」
「キッチンは遠い上に移動が面倒です。ストレッチなどせずとも私は十分身体は柔らかいです」
「じゃ、僕には打つ手がないな。おやすみ」
「問題の解決を見ずに放棄とは、夜神くんらしくありませんね。ズパッと解決してみせよう!という気概が窺えません」
「なんでお前がそんなに偉そうなのかが僕にはわからないよ」
「いいでしょう。私が答えを教えて差し上げます。夜神くんはそこに座りなさい」
「うわ、何この人」
「まず私が横になります。夜神くんはそこで…ああ、いいですねこの体勢」
「僕に膝枕させるとはいい度胸だ、竜崎」
「夜神くんがキラだったらこれはすごいことですが、所詮夜神くんですからいいんですよ。…で、このまま」
「お前は僕のことを何だと思って…」
「友達ですよトモダチ。ハイ、私はこのまま目を閉じてますので、子守唄を歌ってください」

「死ね」

「…今極悪な笑顔ですごい台詞を吐きませんでしたか…?」
「ははっ!何馬鹿なこと言ってるんだ竜崎。馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、ここまでとは思わなかったよ!」
「3度も馬鹿と言いましたね…」
「ワタリさんにやってもらえ」
「文句のつけようのない笑顔で切り捨てないで下さい」
「ワタリさんにやってもらってたんだろう?」
「ありえません、私は世界の切り札ですよ。Lですよ?」
「…なら」
「あ、夜神くん急に動くと私の頭がベッドにめりこみます」
「世界の切り札らしく潔く寝ろ!」
「ぶっ…私を窒息死させようとは、キラらしくもない稚拙な手口…!」
「やかましい!誰がキラだ!まったくお前は…!」
「案の定、男の膝枕は固いですね…まぁ夜神くんの膝枕ということで百歩譲るとしても、やはり女の方が…」
「なら女の所へ行けーーー!!!!!」
「そうなると夜神くんももちろん一緒ですよ?手錠ありますからね」
「僕にそんな趣味はない!」
「私もそんな趣味はありません」
「もういいからおとなしく寝ろよ!もう4時回っちゃったよ!」
「夜神くんがおとなしく膝枕しないからですよ。さらに譲って子守唄だけでもいいですが」
「僕のせいかよ!唄まで歌わせる気かよ!」
「そうしないと私眠れませんよ!どうする気ですか!」
「なら一生起きてろよ」
「うわ、そんなところで笑顔全開とは卑怯ですよ夜神くん!!」
「僕はいい加減寝るよ。夜中に付き合ってあげたんだから、満足したろ?」
「私が眠れないのですから、満足しようもありませんよ!」
「はいはい、おやすみ竜崎。良い夢を」
「夜神くん!起きてください夜神くん!」
「……」
「…イタズラしますよ?」

「もうハロウィンは終わったよ、竜崎……」

WEB拍手お礼05-眠れぬ夜にささやきを編。

投稿ナビゲーション


Scroll Up