1月28日京都某所。 AM0:00

「ついに来た…この日が…!」
男は喜びを隠しきれぬ様子で、日頃表情の乏しい顔に笑みを浮かべた。
キーボードの上に置かれた指先が興奮で震え、文字を打つのも酷くもどかしく、一字一字をモニタへと打ち込んで行く。
1月28日。
ついに来たのだこの日が。
64日。
神より裁きの力を与えられてより、64日。
想像していたよりは早い。
けれどついにこの日が来たのだ。

神の尊顔を拝する日が来たのだ。

忘れもしない、11月26日に封筒に入れられ送られてきたノート(フェイクだが)を見る。
何の変哲もないノートのようで、名前を記せば記された者が死ぬ恐るべき神の道具だ。
私に与えられた、神の力だった。
私が神に認められた証拠だった。
本来ならば決して神は表に顔を出してはならぬ存在であった。
それが今日、神に拝謁する栄誉を与えられたのだ。
そして神に歯向かう愚者を削除する栄誉すら与えられたのだ。
これが喜ばずにいられようか。
午後には東京へ向かう。
午後には、神との対話がかなうのだ。
神の御名を知ることすら可能だ。

何たる至福。

指先の震えは止まらない。
1月28日は、神の新世界の幕開けを宣言する日になるだろう。
その場に居合わせ、己が神の片腕として傍らに在れる喜びは、何物にも代えがたい。

必ず役目を果たして見せます。
確実に。

すでに午後の予定はシミュレート済みだった。
監視の目が離れたら即京都駅から新幹線で東京駅へ。
東京駅から埠頭までの場所もすべて記憶した。
あとはノートを使って、愚者共に死を。
指示の通り、完璧に任務を遂行することが私の役目。
だが、言われたことしかできない無能ではないという所も、神に知って頂かなくては。
キーボードを打つ手を休め、キラを神と崇拝するサイトを複数開く。
どれもこれも似たり寄ったりで個性にも情報量にも乏しいサイト達だったが、神を崇拝しているという点においては評価していた。
キラを取り扱った内容のサイトは肯定的なもの、批判的なもの全てをあわせれば星の数ほど存在したが、男はそれらのほぼ全てに目を通していた。
キラの正体、キラの裁きリスト、キラの次の犠牲者予想、どれもこれも信用に値するものなどない。
「……」
一際目を引く、一面ピンクと黒で構成されたサイトを開く。

『キラと共に創る世界』

ありがちな名前、ありふれたセンス。
内容はキラが今まで裁いてきた者リスト(公表分)、キラとLの対決の軌跡(公表分)、キラが徐々に世界の神へと認められて行く過程、そして神としてのキラを崇拝する日記に、キラを崇拝する者達が集う掲示板。目新しいものはない。
だが、極ありふれたモノだからこそ語れる事実もあった。
エディタに作った文章をコピーした。
そして、ペースト。

『明日ゎマジぶるぅー(>_<)
しけんが始まっちゃぅよぉ(;_;)
たくさんべんきょぉしたけどぉー頭はいんなぃっていうかぁマジヤバイっつーかぁ(*T^T)
カンニングしても見つかんなきゃ平気だよね(≧▽≦)って考えたりするんだけどぉ(*u_u)
られつ?てぃぅの?文字見てると眠くなっちゃぅのゎ学生としてゎちめぃてき?(*゚ー゚)
しんせきからゎ「かゎぃぃから芸能界でアイドルになればぃぃょ」ってゆゎれるけどぉ(* ^ー゚)
んーいくらかゎゆくても、やっぱべんきょぉくらいできないとダメだょね?(>_<)
せんせぃも「頑張れば東大くらぃよゆぅだょ」ってゆってくれてるしぃ(〃▽〃)
神さまのキラさまも、きっとかしこぃ子が好きvvvvだょね♪(*’-^)-☆
いっぱぃべんきょぉしていつかキラさまのおゃくにたつのがゅめなんだぁ(/ω\)
学校だってマジめんどぃけどぉキラさまのおゃくにたつために頑張ってるょ!(≧▽≦)b
はゃくキラさまに会ぃたぃなぁ(>_<)
じつゎすぐそばにいる人がキラさまだったり?(〃▽〃)したらどぅしょぅとか
まさかそんなことゎなぃょね!キラさまはきっとすっごくカッコよくて頭もよくて芸能人でゅぅとー?
ルー大柴
よめなぃししらなぃんだけど、この人ってルーおおむらさき?』

「……」
日記に貼り付けられた本日分の更新を見やって一人頷く。
魅上照、己の文章能力に欠片の疑問も感じない28歳の冬だった。

「神、もうすぐ参ります」

WEB拍手お礼12-がんばれ魅上くん!編。

投稿ナビゲーション


Scroll Up