「罪を告白しようと思います」
「…どうぞ」
「私の罪は、神を殺したことです」
「…神とは?」
「私の持ち得ない物を持ち、私の成せない事を成そうとし、私より優れた頭脳を持ち、私より傑出した思考を持ち、行動することができる人間のことです」
「…人間が神であると?」
「私にとって偶像は神に非ず。存在しない者は神に非ず。私にとっての神とは私の心の中に在るどす黒い感情を体現してくれる他者を指します」
「…神が黒い存在であると、あなたは言うのですか」
「いいえ、崇高極まる輝く存在であると思います」
「…ご自身の言葉に矛盾を感じませんか」
「いいえ、全く。私にとっての神は、何よりも美しいモノ。何よりも気高いモノ。何よりも強く、何よりも賢く、そして世界を創るモノです」
「……」
「私が言っていることは矛盾しているとあなたは仰った。けれど矛盾など微塵もありはしないのです。私の心の中にあるどす黒い感情――これは私の欲望であり、汚らわしいものであり、排斥すべきものである。これは私にはいらないものだからです。なぜなら私はこの欲望を実行に移すことができないから」
「実行できないから、いらないのですか?」
「そうです。それは私の弱さだから」
「…何故できないのですか?」
「勇気がないからです。知恵がないからです。力がないからです。すべては、私が小さきものであるからです」
「…あなたの言う神は、それを実行することができると?」
「そうです。私に出来ないことが出来る存在。私の力の及ばぬ存在。輝かしくも美しい、私にとっての神です」
「…では、あなた以上の能力を持つ人間がいるならば、それらの人間はすべてあなたの神になりますね」
「けれど今までそんな者は一人として存在しなかった」
「…その人間だけ、と?」
「そうです。一人だけ。私の神は一人だけ」
「…その神は、あなたに何をもたらしましたか」
「すべてです」
「…すべてとは?」
「私が生きることを、赦してくださいました」
「あなたにとって生きるとは、なんですか」
「神に認められることです」
「…人間である神の手足となって、働くということですか?」
「そうです。そして神に赦しを得ることです」
「赦しとは?」
「私が生きることを、赦していただくことです」
「あなたの神は、人間なのでしょう」
「人間だから、どうだというのです」
「それはあなたが他者に抱く、単なる羨望ではないのですか」
「違う!」
「何故言い切れるのですか」
「私の神は、私を導いてくれる。私を在るべき姿へと戻してくれる。私を神と同じ高みへと登ることを赦してくださいました。私は神に愛されているのです」
「あなたが崇拝する神の名をお聞きしましょう」
「……」
「どうされましたか」
「……」
「何故答えないのですか。罪を告白すると仰ったのはあなたです」
「……」
「…神の名を、ご存知ありませんか」
「いいえ」
「言いたくないと?」
「いいえ」
「神の名を口にしてはならぬ、という既存宗教の教えに従っておられるのですか」
「いいえ、既存宗教の教えなど私の心に塵ほども留まるものはありません」
「…ではどうぞ」
「キラ」
「…キラは、大量殺人犯の通称です」
「違う」
「6年に渡って世界中の犯罪者およびFBI、警察関係者、世界的に有名な探偵を殺した殺人犯の通称です」
「違う!」
「違いません」
「違う!!」
「…どう違うのですか」
「キラは新世界を創造する神」
「新世界を創れなかった異常者です」
「キラは生きている!」
「…ついさっき、ご自身で神を殺したと仰いました」
「キラは生きている!」
「新世界を創るはずだったキラは、今どこにいますか」
「……」
「6年に渡って多すぎる人命を奪い続けてきたあなたの神―通称キラは、今どこにいますか」
「キラは生きている」
「今どこにいますか」
「キラは生きている」
「…ではあなたは、何故罪を告白しようと思ったのですか」
「あああああああぁああああああぁぁぁああぁあ」
「…あなたの神は、今どこにいますか」
「私の神はいまどこにいますか」
「…キラは、もういません」
「キラはもういません」
「…何故あなたが神を殺したと思ったのですか」
「私が神をころしたとおもったのは」
神が私に語りかけてくれないから
「あのときわたしが」
きょぜつしたからですか?
「いいえあれは神ではない」
神ではない
…ではあれは何だ
「…魅上照。あなたの神は死にました」
しにました
「しにました?」
「はい、死にました」
「死、にました?」
「死神に殺されました」
しにがみにころされたかみはしにました?
「いいえあれは神ではない」
「…何故神ではないと思うのですか」
「あれは私を導いてくれなかった。助けてくれなかった。ころさなかったいいえころせなかった?敵がいるのにころせもぜずにちゅかにころがってぶざまにころがってりまみれになってわたしのたすけを」
私に助けを
「ノートに名前を書けと、キラはあなたに言いましたね」
「神が私の神が私を導いてくれることはあってもたすけをもとめるなどあってはならないそう、あってはならない野田からあんな無様に助けを求める人間は私の神などであろうはずもなくまた私とてアレを神をt認めることができようはずも泣く私の神は私に出来ないことが出来るこうろうりょくがあってちえがあってゆうきがあって」
「落ち着きなさい、ちゃんと椅子に座って」
「キラはどこに」
「…キラは今言ったように、もう」
「キラはどこだ!!」
「キラはいません」
「キラを出せ!!!!!!!!お前が隠しているんだろう総に違いない早くキラを出せ神に神としての責務を全うさせろそして私に役目を私に仕事をわたしにころせとめいれいをはやくきらに!!!!!!!!!」
「…あなたは何故、今そこにいるのでしょう?」
「わたしはなぜいまここにいるのでしょうか」
ノートを奪われ、役立たずになって捕まった哀れな私
「ああああぁあああああぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁあ」
神、私は間違ったのでしょうか。
神、私が愚か過ぎたのでしょうか。
神、私はあなたの役に立たなかったのでしょうか。
「やくたたずなわたしをころせ!!!!!!!!!!」
「それは出来ません」
「はやくわたしをころせ!!!!!!!!!!!!!!」
「あなたはキラの手足となって働いた、大量殺人の共犯です。キラが死んだ今、もはやあなたしかいませんが一生牢獄に繋がれながら罪を悔いなさい」
「つみ」
「そうです、人の命を奪った罪です」
「あはああああははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!」
私の罪は神に多くを望みすぎたことです
私の罪は神に救いを求めてしまったことです
私の罪は神を信じてしまったことです
私の罪は
私の罪は
私の罪は
わたしのつみはいまここにこうしてとじこめられていることです
「しんでしまえ」
「…何ですか?」
「何故私は生きている」
「あなたに死ぬ勇気がないからです」
「ゆうき」
死ぬ勇気
「キラですら死にたくないと泣いて縋ったくらいです、あなたにそれを求める気はありませんし、そんなに簡単に死んでもらっても困ります」
「きらですら」
「はい、キラですら」
でもキラは死んだのだ
「…死んだ?」
「はい、キラは死にました」
死んだ?
「私が殺した」
「…消極的に殺したかもしれませんが、直接的に手を下したのは死神です」
「私が殺した」
「…そうかもしれませんね」
私が殺した
そして神が死んだ
神は死ねたのだ
私は死ねないのに
「…はははははははあああああああぁあはははははははっ!あはははははははははっははははははは」
あの男は神だったのか
では私は
私は
私は
神ではないと
「あああああぁあああああああぁあぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ」
神ではないと
クズだと
「ぁああああぁあああぁああああああぁぁぁぁぁぁあぁあああああああああ」
クズですらない私は
「ウソだ神は生きている神は生きている神が射るんだ神は私を救ってくれる助け出してくれるココからこんな汚いとこr個から光の世界へ罪におない世界へ綺麗な世界へ全てを削除するんだぁあああぁぁああ嗚呼あああああああああぁぁぁぁぁあ」
「罪を悔いなさい」
「あああああああぁぁぁぁっぁああああああああああああああ」
「…もう一度聞きましょう。あなたの神の名は?」
「…夜神月」
「その名を抱えて、一生生きていきなさい。殺人者魅上照」
「ああアァアああああぁぁぁぁぁぁや嗚呼ああああがあああああああみあああぁぁぁぁぁらあぁぁぁぁぁいあああああああと…」
私の罪は、神を見殺しにしたことです。
…もはや私に生きている価値はない。