「レオーン！会いにきたよー！」
「ソラ…？友達に会えて、島に帰ったんじゃなかったのか」
「リクやカイリには会えたよ！今は島で仲良く暮らしてる！」
「そうか、良かったな」
「レオンに会いたくって抜け出してきたんだ」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。飲み物くらいは出してやるよ。マーリン様の家に行…」
「あ、そこのシーソルトアイスでいいよ！おじさん、アイスちょうだい！」
「お～、ドナルドのお友達だね。あげるよ、ハイ」
「やった～、ありがとーおじさん！レオンの分ももらっていい？」
「ほいどうぞ」
「ありがと～！はいレオン！これ食べながら街中歩こうよ」
「…俺も食うのか…」
「美味しいよ！」
「いい歳してアイス食べながら歩くというのはちょっと…」
「食べ終わってから歩いてもいいよ？」
「…いや、いい。どちらも大して変わらない…。で、街の様子が気になるのか？」
「んーと、えーと、うん」
「……」
「いや、うん、気になるよ！？まだハートレス達が出てきてるのかなぁ、とかさ！」
「…ああ、ハートレス達は消えたな。街再興も順調だ。ソラ達のおかげだな」
「えへへ、俺役に立った？レオンの為になった？」
「？ああ、とても感謝しているよ」
「やった！」
「ソラ？」
「何？レオン」
「…いや、思ったよりアイス美味いな」
「でしょー！レオン大人だからって、カッコつけてアイス食べなかったんでしょ！こーんなに美味しいのに」
「別にカッコつけてるわけじゃないが…」
「いいの！一人じゃ食べなくっても、俺が一緒なら食べてくれるでしょ！」
「押し付けたのは誰だ？」
「俺」
「…わかってればいい」
「へへ、まだまだ壊れちゃったところとかそのまんまだけど、やっぱ人が安心して外に出られる世界っていいよね」
「ああ、本来ならそれが当たり前なんだけどな」
「うん。俺も島にいたときは、リクやカイリや、セルフィ達とずっと楽しく一緒にいられるんだって思ってた」
「そうだな」
「そうだよ。それが当たり前なんだって、思ってたことが幸せだったんだなって、わかったことが悲しいよね」
「……」
「一度壊れちゃったものは、最初のまんま元通りにはなれないんだって、わかってしまうことも悲しいよね」
「ソラ」
「レオンはさ、今楽しい？今幸せ？」
「ソラは今楽しくない？幸せじゃないのか？」
「俺が聞いてるの！ズルイよレオン」
「…ソラ達が戦って勝ってくれたおかげで、俺は今幸せだし、楽しいよ」
「…本当に？」
「ああ」
「街が元通りになるから？」
「そうだな」
「皆が安心して暮らせるようになるから？」
「そうだな」
「レオンも安心して暮らせるようになる？」
「なるさ」
「この街で、暮らしていくんだよね」
「ああ」
「この街の人と、暮らしていくんだよね」
「そうだな」
「……そうだよね」
「ソラも、リクやカイリと一緒に暮らしていくんだろう？」
「うん」
「安心して、暮らせるようになるんだろう？」
「うん」
「やっと会えた友達と、楽しく暮らして行けるのに、お前は何を考えてるんだ？何が不満？」
「忘れちゃうでしょ、レオン」
「え？」
「エアリスが言ってた。俺達がこの街に来るまで、俺達のこと忘れてたって」
「…ああ」
「俺のこと、忘れてたって」
「ソラ」
「今もさ、街のことで頭いっぱいで、俺が来るまで俺のこと忘れてたでしょ、レオン」
「そんなことはないさ」
「嘘だね。いっちばん最初にレオンにめちゃめちゃにのされちゃったことも、一緒に戦ったことも、大事な武器をくれたことも、アイテムをくれたことも、アドバイスをくれたことも、助けてくれたことも、…俺がこうやってレオンに会いにきたことも、一緒にアイスを食べたことも、…きっとすぐに忘れちゃうんだ」
「忘れないよ」
「嘘。大人はすぐ嘘をつくんだ。レオンは大人だから、信用できない」
「俺がお前に嘘をついたことがあったか？」
「ない。けど、嘘だ」
「…子供だな」
「子供だよ！俺は子供なんだよ。だからレオンはもっと俺に優しくしてくれなきゃダメなんだよ」
「たとえば？」
「俺を抱きしめてよ」
「…それは子供のいう台詞か？」
「いいの！早く！レオン！」
「ソラ」
「そんな呆れた顔しないでよ！も～！レオンはいい大人のくせして、優しいフリして甘くない！」
「悪かったな」
「で…、抱きしめてくれないの？」
「この残ったアイスはどうする？」
「俺が食べてあげるよ！ホラ貸して！これで両手空いたでしょ！」
「ソラはこんなわがままな子だったかな…？」
「何言ってんの！俺今までわがままなんてひとっつも言ったことない！リクとカイリを探す旅に出てから今まで、ずっとずっと俺は……っ」
「わかった。わかったから、ソラ。…ホントに、子供だな」
「…子供だよ。俺は子供なんだよ。でも誰も子供扱いしてくれなかったよ」
「して欲しかったのか」
「まさか！まぁ子供扱いしてくれたらそれに甘えちゃうだけだけどね」
「……」
「どの世界に行っても、皆いい人ばかりだったよ」
「そうか」
「いつ行っても、皆笑って受け入れてくれるよ。仲間みたいに」
「そうか」
「でも俺が訪ねていかないと、それっきりになってしまう人達なんだ」
「…そうだな」
「俺のこと、待っててくれるかもしれない。忘れてるかもしれない。俺が行かなきゃ、わからないことなんだ」
「そうだな」
「レオンもそう。俺が来なきゃ、俺のことなんて忘れてるかどうかすらわかんない」
「…ソラ」
「レオン、あったかいね。背、高いね。一年前の俺よりずっと背も伸びたのに、でもまだ全然レオンに足りない」
「…俺は大人だからな」
「俺も大人になるよ、レオン」
「ああ」
「今は子供だけど、いつまでも子供ではいられない。いつまでも今のままではいられない」
「それがお前が考えてること？」
「俺は…」
「キーブレードに選ばれた者以外に、世界を渡る術はないんだ、ソラ」
「うん」
「俺はお前の島には行けないんだ、ソラ」
「…うん」
「俺はお前に何を約束すればいい？どうすればお前は安心して島に戻れる？」
「……」
「ソラ」
「レオンは俺の特別だよ」
「…そうなのか」
「そうなんだよ！喜んでよね。ずっとずっと、俺のこと助けてくれて嬉しかったんだ。俺のこと気にかけてくれて嬉しかったんだ」
「そうか」
「これからも、俺のこと気にかけてて欲しいんだ。俺のこと、忘れないで欲しいんだ。俺はいつか絶対レオンと対等になってみせるから」
「…対等？」
「いいの！俺がそう決めてるんだから。俺、絶対またレオンに会いにくるから。絶対遊びにくるから。だから俺のこと、」
「…ソラ？」
「……」
「…ソラのことを、忘れなければいいんだな？それが、お前の望みなんだな」
「口約束なんて、…信用できないよね」
「そうだな」
「だからさ、また会えますように、ってハグするんだって。これは次への約束」
「誰に聞いたんだ？そんなこと」
「トロン！」
「トロン？…アンセムのシステム内のトロンのことか…」
「トロンはあったかくなかったけど、レオンはすごくあったかい。俺も、あったかい？」
「ああ」
「良かった！忘れないでね、俺のこと。覚えていてね、俺のこと」
「約束するよ」
「今度来るときはリクとカイリも連れて来る。シーソルトアイスを一緒に食べて、レオンと一緒に街を回るんだ」
「また俺もアイスを食うわけか」
「レオンは食べなくていいよ！レオンは俺と二人のときに食べてくれればいいから！」
「なんで？」
「ナイショ！」
「……」
「レイディアントガーデン、綺麗な名前だよね。綺麗な街に戻るといいね」
「そうだな」
「レオンがいるんだから大丈夫だよね。この街の人は、幸せだね」
「リクやカイリも、お前と友達でいれて幸せだと思うよ」
「レオンも、そう思ってくれる？」
「ああ、ソラと友達でいられて幸せだよ」
「ちぇー」
「え、ソラ？」
「帰るね、レオン。次来たときは子供扱いさせないからね！」
「…はいはい、気をつけて帰るんだぞ」
「レオンはちゃんと街のことと俺のこと考えててよね！」
「？ああ、わかってるよ」
「他の人のことは考えなくていいから！」
「意味がわからんぞ」
「あんまリク連れてきたくないけど、カイリと一緒に連れて来るからね！」
「？？ああ…」
「リクはカッコいいよ」
「そうか」
「…興味ない？」
「どういう答えを望んでるんだ？お前は？」
「何でもない！じゃぁホントに帰ります！またね、レオン！」
「ああ、またな」
「またね」
貴方に追いつく、その日まで。
忘れないで、俺のこと。
END