忘れないで。

  近づいてきた雷鳴と共に、泣き出した空は一瞬で激しい豪雨へと姿を変えた。
  視界を白く埋め尽くす瞬間の光の後には、耳を劈く落雷の音が地面を揺らして心臓を震わせる。
  室内の音も聞こえなくなる程の雨音に、急ぎ家の中に入った街の人々は一斉に空を見上げ、容赦なく部屋へと降り込む強風交じりの雨から逃げるように窓を閉ざした。
  通り雨だろうと思われたそれは一時間を過ぎても降り続き、予報は朝方までと嬉しくない宣告をするのだった。
  出先での仕事の予定が全て流れたレオンは、窓から空を見上げてため息を吐く。
  今日の仕事が流れると、明日以降に影響した。
  調整しなければならず、だが今日はもう無理そうだった。
「おうレオン、やることねぇなら今日は帰れ」
  パソコンのモニタを見つめたまま、再建委員会の最年長は声をかけた。
「…しかしな」
「レオン、今日はもう、仕方ないよ…私達はまだ、仕事あるけど、レオンはないから」
  たまには早く帰ってゆっくり休んで。
  言外にそう気遣って、エアリスが笑う。
「俺らも早めに切り上げて今日は帰っからよ」
  シドのぶっきらぼうな背中にもまた、同じように気遣いがあった。
「早退できるなんて滅多にないよー?あーでも今台風みたいになってるから、飛ばされないように気をつけてよレオン」
  大の大人でも飛ばされる程酷いとは思えないが、確かに風は強くなってきているようだった。
  羨ましい!と零しつつも、レオンが帰ることには賛成らしいユフィがまた明日!と手を振った。
  全員の気遣いを無にしてまで強硬に残る理由は見当たらなかったので、レオンは皆の言に甘えることにした。
「…すまない。明日は早めに来る」
「いつも通りでいいぜ。どうせ先方と連絡取れなきゃ進まねんだからよ」
「…ああ」
  シドの言葉にそれもそうだと頷いて、「じゃぁ、また明日」と一歩外に出れば、真横から叩きつけるような痛い程の雨に晒され、傘はあっても無駄だと悟った。
  折ってしまわないよう傘を閉じ、濡れるに任せて街中を走る。普段より少ないながらも現れるハートレスを日課の様に倒しながら、家路を急いだ。
  熱めの風呂に入って、ゆっくりしよう。
  読みかけの雑誌を読んで、途中で放置していた本の続きも読まなければ。
  目に入って視界を塞ぐ雨は拭っても拭っても途絶えることなく、手をかざして雨避けにしてみるが全く効果はない。
  髪も服も、皮膚に張り付いて不快だった。
  おまけに風が雨の方向を縦横無尽に変化させる為、もはや抵抗は無意味にも思える。
  家に辿りつくことだけを頭において、無心に走った。
  鍵を開け、中に入る。
「……」
  明かりがついていて、がっかりした。
  外出する際、常に気をつけている事がある。
  窓を閉めること。
  明かりを消すこと。
  空調設備は使用していたら止めること。
  水回りなども確認をすること。
  当たり前のことだが、大切なことだった。
  明かりがついているということは、誰かがいるということだ。
  この部屋を自由に使う無礼な人間など、一人しか知らなかった。
「おい、クラウド。いるのか」
  声をかけるが、返事はない。
  全身ずぶ濡れのレオンの身体から雨水が間断なく流れ落ち、玄関に黒い染みを作る。
  額に張り付いた髪をかきあげ、ジャケットを脱いで絞れば吸い込んだ雨水が大量に玄関口に落ちた。外と変わらぬ水溜り加減にうんざりする。
  水を含んで重くなってしまったグローブやベルトも外し、片手に抱えて中に入るべきか逡巡した。
  中にクラウドがいるのなら、タオルの一つでも持ってこさせようと思ったのに、反応がない。
  顔を伝って流れ落ちる水が気持ち悪いが、拭く物を玄関に用意するほど周到ではなかったことに後悔する。
  仕方なく、肩口で顔を拭くがシャツも水を吸っていて、爽快感は全くなかった。
  これからタオルを一枚、玄関口に常備しようと決意する。
「…クラウド?」
  もう一度呼びかけてみるが、中にいる気配はあるというのに、出てこない。
  寝ているのだろうか?
  全く役に立たないヤツだと心中で悪態をついて、レオンは諦め濡れたまま室内へと入った。短い廊下を抜け、リビングダイニングへと通じる扉を開けようとして、漏れ聞こえる音に気づく。
  聞き覚えのある、歌だった。
  中に入れば、床に直座りしてソファに凭れかかったクラウドが、膝を抱えて蹲っていた。
「おい、寝てるのか?」
  ここはレオンの家である。
  気遣いの必要を感じなかったので声を投げれば、緩慢に顔を上げた男は虚ろな目をしていた。
  怪訝な表情をするレオンの姿を認め、クラウドは目を見開く。
「おかえり。…ずぶ濡れだな」
「ただいま。外は台風並だ。おかげで仕事が流れた」
「ああ、通りで。…声かければタオルくらい取ってやったのに」
「……」
  時刻はまだ帰宅するには早い時間だった。
  流していた音楽を止め、クラウドが立ち上がる。
  タオルを取りにサニタリーへと向かうレオンの後ろに、ついて歩く。
  さっきも同じようなことをしたな。
  思い出したが、どうでもよかった。
  洗面台の上に手にしたジャケットとアクセサリ類を置き、レオンはタオルを二枚取り出し一枚をクラウドに手渡した。
「…?」
  受け取ったはいいものの、どうせよというのかわからずレオンを見れば、外を指差し「拭いてきてくれ」とぞんざいに言った。
「…は?俺が?」
「床が濡れてる。ついでに着替えも取って来てくれ。風呂に入る」
「……」
  俺はお前の奥さんか。
  こんな亭主関白面をする旦那はいらん、と思ったが、さっさと濡れて張り付いたシャツを脱ぎ始めるレオンを見て考え直した。
  己もグローブを外して、洗面台の上へと落とす。右手を伸ばし、触れたレオンの頬は冷えていた。唇を辿り、顎のラインをなぞって首筋へ下り、鎖骨を撫でる。肩を掴めば、その冷たさに驚いた。
「冷たいな」
  言えばレオンはため息を吐く。
  土砂降りの雨に晒されて来たのだ、当然だった。
「…お前の手は熱いな」
  冷えた身体には、平熱だろうが熱かった。
  掴まれた部分が急速に熱を持ち、じりじりと細胞が焼けるような感覚を伴う。
  小脇に抱えたタオルを邪魔だと言わんばかりに小物の散らばる上に落とたクラウドが、自由になった左手でレオンの腰を引き寄せた。
  腰はもちろん、背中も腕も濡れて冷たく、抱きしめ顔に当たるレオンの髪もまた、冷えていた。
「服が濡れるぞ」
  クラウドはきっちり服を着込んでいるが、それでも人の体温は熱くて心地良い。
  押し返して拒絶すべきか迷ったものの、レオンもまた腕を回してクラウドの背を抱きしめる。
  温かかった。
  …が、右胸にぶつかるクラウドの金属の留め金は頂けない。
  狼を象ったそれは冷たく無骨で、しかも皮膚に直接当たって痛かった。
  耐え難くなり、そしてレオンは我慢しない。
  すぐに手を離し、背から腰を這うクラウドの左手を引き剥がす。
  不満そうな顔をする男に「それが邪魔だ」と言ってのければ、見下ろし察して頷いた。
「脱げってことか。積極的だな」
「いや、違う」
  人肌も悪くはないが、早く濡れた身体を温めたかった。
  重要なのは、コイツに邪魔されず、ゆっくり、風呂に入ることだ。
  すでにその気になっているらしいクラウドが、自らの肩に手をかけ装飾を外そうとするのを止める。
  じっと見つめてくる男の色素の薄い瞳は常と変わりないように見えたが、部屋に入った時の様子が気にかかっていた。
「…クラウド、濡れた床を拭いて、着替えをここに持って来てくれないか」
  先程よりは丁寧に低姿勢を心がけてみるが、クラウドの反応は同じだった。
  眉を寄せて、唇を尖らせた。
  子供か!
  クラウド、ともう一度名を呼ぼうと口を開くが、飛び出たくしゃみに阻止され呼ぶことは適わなかった。
「……」
「……」
  落ちた沈黙に、クラウドが呆れた様子が窺えた。
  このまま問答が長引けば確実に風邪を引くな、と頭のどこかで呟く声が聞こえ、全くその通りだと頷く己の判断は正しい。
「…クラウド」
「お願いしますは?」
「…おねがいします…」
「…わかった」
  不承不承頷いたクラウドは、タオルを取り上げサニタリーを後にする。
「風呂に押しかけてくるなよ!」
  背中に声を投げれば、濡れた床で足を滑らせクラウドが見事に転倒した。

  着替えを持ち込むついでに、というクラウドの目論見は儚くも破れた。
  何も言われなければ風呂に押しかけるつもりだったが、先制攻撃をくらっては諦めるしかなかった。
  気にせず行けよ、と囁く声より、事前に釘を刺して拒否したレオンの意志を曲げる方が後々面倒だという思いが勝る。
  そもそも拒絶されたわけではないのだから、大人しく待てばいいのだ。
  レオンの歩いた道筋が、小さな水溜りとなって玄関へと続いているのをタオルで吸わせて拭いて行く。
  思い出すのは、学校でやった床拭きだ。
  何年ぶりだ?子供じゃないぞ。
  しかしやると頷いてしまった以上は、やらねばならなかった。
  玄関まで進めば、ドア付近に大量の水が落ちていた。
  これはもうどうしようもない。吸い取れる範囲で吸い取ってみるが、タオルが許容を超えた分については自然乾燥を待つことにする。
  立ち上がり、戻ろうとした所で足元に転がるアクセサリに気がついた。
  チェーンを摘み上げ目の前に翳して見れば、それはレオンが常に身に着けている獅子のペンダントだった。
「…おい、これ大事な物なんじゃないのか」
  小物を外した際に転がり落ちたのだろうが、気づかないとはレオンらしくない気がした。
  まぁ、あれだけずぶ濡れで動きにくい状態では、感覚も鈍ろう。
  仕方がないので、テーブルの上にでも乗せておいてやればいい。
  リビングに戻ってテーブルにペンダントを置き、勝って知ったる様子で寝室へ踏み込み適当に着替えを見繕ってやってサニタリーに置いておく。
  甲斐甲斐しく世話を焼く自分の姿は、自分で言うのも何だが気持ちが悪かった。
  ここまでしてやる意味はあるのかと自問するが、やってしまった後では何を言うのも手遅れだ。
  飲み物でも淹れようと思い立ち、湯が沸くのを待つ間に、途中だった音楽を再生させる。
  店に出来ていた人だかりは、懐かしいかつての音楽を求めていたのだった。
  新規開店と見られる店は小奇麗で、復刻されたと思われるディスクやジャケットは当時のものではなく最近作られた物であったが、デザインなどは同じだと言うことだった。着の身着のままで街から逃げざるを得なかった人々の内、当時の物が手元に残っている人間が一体どれ程いるというのだろう。
  かつての思い出、かつての輝き。
  多少なりとも、復興が目に見えて形になってきた今だからこそ、受け入れられる物なのかもしれなかった。
  過去を見つめ、未来を見つめる希望を持ったと言うべきか。
  知らない楽曲も存在したが、それでもこれは懐かしい。
  思い出す過去は霞みがかったように遠いものもあれば、思い出したくもないような吐き気を伴う不快感に苛まれる物まで様々あった。
  音を聞き流しながら、思考が沈む。
  目に浮かぶのは一面の闇。闇。闇。
  そして耐え難い恐怖と、怒りと、…どうしようもない絶望だった。
  頭を振って、陰鬱な記憶を追い出した。
  囚われてはいけない。
  これは、すでに終わったことだ。
  いつのまにか床に座り込んでいたことに気づいて、立ち上がる。
  湯が沸騰して煮立っている音がした。
  キッチンへ向かおうと足を向けたが、レオンが扉を開けて出てきたので目が合った。
「…沸いてるな」
「ああ、今止めようとしてた」
「そうか」
  近いレオンが、火を止めた。
  そのままカップを取り出しコーヒーを淹れ始める。
  やることのなくなったクラウドは、今度はちゃんとソファの上に腰かけた。
  クッションを枕にして、寝そべる。
  今日の仕事は終わったとばかりに目を閉じるクラウドに、カップを持って戻ってきたレオンが苦笑したようだった。
  テーブルにカップを置いて、乗せられたペンダントに目をやる。
「これ、どこにあった?」
「…玄関に落ちてた」
「そうか、すまないな」
  触れることはせず、それはそのまま残された。
  どうせ明日も必要とするのだから、置いておいて問題はなかった。
「…床拭いた」
「ああ」
「…それ拾った」
「ああ」
「…着替えも持っていってやった」
「ああ、助かった」
「どうせすぐ脱ぐのに」
「……」
  目を開ければ、床に片膝をついたレオンが静かな表情で覗き込んでいた。
  頬に置かれた手は、風呂上りでしっとりとしていて熱かった。
「…熱いな」
「冷えて冷たいよりはいい」
「まぁ、確かに」
  熱い手が額に置かれ、クラウドは目を閉じる。
  髪を撫でる指先は優しかった。
  ボーカルの優しいバラードが部屋を満たし、無言の落ちる空間は静かで心地良かった。
  緩やかに意識が眠りへと落ちていく浮遊感があり、身を委ねようとしたクラウドだったがぱちりと目を開け、頭を撫でるレオンの手首を掴んで身体を起こす。 
「あ、危ない。寝るとこだった!」
「寝れば良かったのに…」
「…お前…」
  確信犯が目の前にいる。
  残念、と呟く憎たらしい口を塞いでやるが、抵抗はなかった。
  レオンの身体がどこもかしこも熱い。
  引きずり出し合わせた舌も、伸ばされ絡みつく腕も、床に押し倒しボタンを外して露になる胸も、腰も、背中も全部熱い。
  舐め上げ噛んだ耳朶も、熱を持って溶かされそうだ。
「…っ」
  息を詰め顔を背けて現れる項に舌先を這わせれば、濡れて擽られるような感覚にレオンの背が粟立った。
  そこかしこに唇を落とす金髪の頭を一撫でし、レオンは未だ着衣のままの男の服に手をかけた。
  留め金を外して床に転がし、布も外して同じく床へ。
  ジッパーを下ろして前をはだけさせ、手を差し入れれば手首を掴まれる。人差し指と中指の第二関節から先を甘噛みされ舌で嬲られてゾクソクと背が震えた。
  離され唾液に塗れたそれを口に含んで舐め上げてやれば、見ていたクラウドが明らかに欲情した目をして小さく笑う。
「ヤバい、キた」
「…それは良かった」
「淫乱発言も来た」
「…黙れ」
  レオンの腰に強く吸い付き、痕をつける。
「っは…」
  柔らかな皮膚の上を爪で擦るように滑らせながら、下半身へと降りる感覚にレオンが濡れた息を吐き出した。
  クラウドの手が緩く勃ち上がり始めたレオンのモノを掴み、根元からなぞり上げて先端を親指で押し込むように刺激する。同時に濡れた指先で後ろを探り侵入する。入り口を広げるように中から押し、淵を辿るように動かせばもどかしげに腰が揺れた。
  肉壁を確認するようにゆっくりと一本突き入れ、付け根まで押し込み抜き差しする。
  絡み付く中は熱くて狭くて、侵入する異物に絡みついては蠢いた。
「っぁ…、く…ッ」
  前後を刺激され、クラウドの指を食い締めれば快感が生まれる。
  増やした指に中を蹂躙され、前は先走りでぬめり始めた指で擦られたまらなかった。
「は、…ッァ、あ…っ」
  絶頂が近づくにつれ、レオンの腰がもっと欲しいと押し付けるように揺れ始める。
「…そろそろ、欲しい?イきたい…?」
  確認するように聞いてみるが、こちらもそろそろ限界だった。
  ぐちゅ、と濡れた音を立てるいやらしいココに、早く挿れたくて仕方がない。
  揺れる腰を押さえつけ、自身の先端を押し付ける。
  熱く太く弾力のあるソレを少し含ませてやれば、期待で後ろがひくついた。
「…ホラ、レオン。挿れて下さいって、言ってみろ…っ」
  中には入れず、腰を動かし先端を押しては引いてを繰り返す。
  粘ついた音を立てながら熱い質量が入り口に押し付けられ、ぬるぬる滑る。
「ふ、ァッ…、は、ぁっバ…ッ」
「…レオン、ホラ」
  前を弄る手が止まり、後ろに当たって押し込むようにぶつかっては離れていくモノが欲しいと、疼きひくつく己の浅ましさにレオンが切ない吐息を漏らす。
  背が震え、腰が揺れた。
  最奥まで貫き擦り上げるその熱い肉が早く、欲しかった。
「…は、」
  見下ろしてくるクラウドはにやけていて、勝ち誇ったような顔をしていた。
  馬鹿め。
  羞恥プレイというものは、羞恥を感じなければ意味などないのだ。
「どうした?レオン、これ…欲しいだろう?」
  ぐり、と先端を入り口の襞を抉るように動かされ、背が跳ねる。
「…ッ…っ!」
  脊髄を駆け上る快感は大きかったが、イきつく程の強さではなかった。
  レオンが欲に塗れた蒼い瞳でクラウドを射抜く。
  上がった息が整わず、覗く赤い舌が扇情的だった。 
「…早く、挿れて、突き上げて、抉って、イかせろ…っ」
  欲情しているのは、レオンも同じ。
「…ッうわ、…」
  犯罪だ。
  乗せられる言葉が犯罪的だ。
  クラウドが真っ赤になって絶句した。
「…ッ、クラウド…!」
  コイツは馬鹿だ、間違いない。
  言わせておいて照れるなアホめ。
  含まされたクラウドの先端を、締め上げてやれば我に返る。
  我に返れば、クラウドの行動は早かった。
  レオンの足を掴んで、裏返す。
「ッおい、クラ、…ウ、」
  うつ伏せにされ、腰を掴まれ高く上げさせられた。
  両手を床について四つん這いになり、肩を押さえつけられレオンの眉が顰められる。
「重…、…ッ!」
  抗議しようと口を開くが、余裕の欠片もなく肉を抉って突き入って来る質量と熱に全身が震えて悦んだ。
「ッは…、…ッぁ、あ、アッ…」
  思わず床に爪を立て、己を犯すモノを締め上げる。
  目も眩むような快感だったが、イくことはできなかった。
「っく、キツ…ッ」
  上に乗る男が汗を滴り落としながら小さく呻き、ぴったり奥まで収まったモノの質量は増していた。
「…んん…ッ」
  押し広げられた襞が異物を取り込もうとざわつく感触がたまらなかった。
「…は…っ、全く、お前エグイ…」
「…ッ、く、ふ…っ」
  何を言っているのか、馬鹿なヤツだとレオンは思う。
  言い返してやりたかったが、言葉は表に出る頃には喘ぎに変わった。

 一旦最後まで再生を終えた音楽ディスクが、リピート機能で始めに戻る。
  一曲目はポップでアップテンポなメロディーだったが、全くこの場にそぐわなかった。


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I’ll be there.-02-

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