忘れないで。
音楽は流れ続けている。
懐かしく郷愁を呼び起こすそれは、普通に聴けば名曲であったが、今は全く雑音にしか聞こえなかった。
「…ッぅ、ん…っ!」
恐ろしい程ゆっくりと、クラウドのモノが絡みつく肉壁を擦りながら先端まで抜けて行く。
抜けかけた先端を入り口に引っ掛けて、淵をぐるりと一周させてから、また中へ。
「は…ッ」
締め付ける肉の感覚に、クラウドとレオンが同時に息を吐いた。
じれったい程の速度で奥まで到達する頃には、レオンが腰を震わせ揺らしながら唇を噛んだ。
根元まで埋め込まれ捩じ込まれても、気持ち好くはあったが全く足りなかった。
焦らしているのだ。
悪趣味なことこの上ない。
「…、クラウド…!」
非難を込めて名を呼べば、上で笑う声がした。
振動で中が震えて身震いする。
「…こういう時、何て言うんだっけ…?」
「……っ」
「さっき言えたしな…?」
ああ全く、今日はこういうプレイがしたいのか。
乱れた呼吸を整えようにも、じりじりともどかしくも抜けて行くモノの存在に気を取られ、気づけばギリギリと締め付けてもっと刺激が欲しいと無意識に強請っている。
身体が快楽に忠実であるのは構わないが、理性と本能は相容れない。
「…ん、く…っ」
コイツの余裕が腹立たしい。
もう今にもイきそうな癖に、我慢してもいいことないぞと言ってやりたい。
先端をまた入り口付近で遊ばせながら、クラウドはレオンのモノに手を伸ばす。
「ッア、あっ、や、馬鹿、触るな…ッ!」
明らかに身体が引き攣って、ゆるゆると上下に動くクラウドの指に合わせて腰が揺れた。
「っ、反応がエロイって…!」
釣られて奥まで突き上げそうになり、寸での所で踏みとどまる。
危ない。
ついでにレオンをイかせてしまうと、反撃されそうなのでイかさない。
ギリギリの所でレオンのおねだりを聞きたかった。
「レオン、…」
「は、…悪趣味…ッ!」
「…それで?」
半分程埋まったモノを、一気に奥まで突き上げる。
「ッあ!…ッァ、あぅ…っ」
容赦なく締まる中がたまらなくイイ。
震えるレオンの身体はそろそろ欲求が理性を上回りそうな気配だった。
レオンの上に乗りあがり、腕を回して抱きしめる。
汗でぬめる背中が上気して熱い。
胸の突起を摘んでやり、項に舌を這わせれば、「やだ」と子供のように首を振った。
「…レオン」
こちらを向けと耳元に熱い囁きを一つ落とす。
諦めた様子のレオンの顔は上気し、流れる汗は床を濡らす。
絡む視線は溶かされそうに熱く潤んで、吐き出す息も熱かった。
唇を寄せれば、舌が絡む。
レオンの中が一段と締まって、クラウドは呻いた。
「っは、…クラウド、早く…!」
もっと壊れるくらい突き上げて、そして最奥で、ぶちまけろ。
流し込まれる誘惑の言葉に、クラウドは抗えない。
コレが、欲しかった。
身体を起こし、レオンの尻を掴んだ。
目いっぱい押し広げ、先端まで引き抜いて、一気に貫く。
「ぅあ…ッあ、あぁッ…っは、ぁッあ、あ…っ」
待ちわびた衝撃と感覚に、レオンの顎が仰け反った。
突き上げられ肉を抉られ、お預け状態だったレオンのモノが悦んでイった。
キツイ締め付けにクラウドは眉を寄せて耐え、床に散った白いモノを掬い取りレオンの背中に擦り付けた。
「んん…ッ、は…、何、やってる馬鹿…!」
「ふ…っ、俺がぶっかけた、みたいに、なってる…!」
ぐぷ、と音を立ててクラウドの先走りの精液がレオンの中に溢れて泡立つ。
「あぁ…、我慢しすぎた、…っ」
中を擦り上げながら、ダラダラと流れるモノに苦笑混じりに呟いた。
まるで何回も中に出した後のように、卑猥な音を立てるソコで早くイきたかった。
奥まで抉り、執拗に締め上げてくる肉を押しのけ、また押し込む。
「く、…ん、んん…ッぁあっ、ふ、ぅ…ッ」
再び首を擡げたレオンのモノを自分で扱けと囁いて、お望み通り最奥目指してクラウドは突き上げる。
レオンを抱きしめるような形で床にごろりと寝転んだ。
本来冷たくて気持ちがいいはずの床は、汗と白いモノに塗れた身体で寝転んだ所で滑って気持ちが悪かった。
肩を上下し荒い息を吐き出すレオンが気怠げにクラウドの手を払う。
「…熱い」
「俺も、熱い。…さて、何回ヤったっけ」
「知るか。…喉痛いんだから喋らすな」
風呂に入ったばかりだったというのに、結局また入らなければならなくなったとレオンがぼやけば、クラウドが身体を起こしてレオンの頭を撫でてみせる。
「よしよし、よく出来ました」
「……」
レオンが眉を寄せて不機嫌に睨み上げれば、察したクラウドは大人しく手を引いた。
「…すいません、調子に乗りました。風呂入るだろう?」
床の掃除もしなければならないし、風呂も入らなければならないし、服…は、大丈夫だった。
流れっぱなしの音楽を止め、立ち上がる。今まで無意識に音を捉えていた耳が途絶えたことで静寂に戸惑うが、一つ首を振って、クラウドはサニタリールームへと歩き出す。
湯船に湯を張るくらいは自主的にやるのだった。
「クラウド」
「ん?」
まだ床にへばりついたままのレオンが、頬杖をついて顔をこちらに向けていた。
何だと問えば、僅かに躊躇った後、どこかで聴いた歌のワンフレーズを呟いた。
「Whenever you need me, i’ll be there.」
クラウドは目を見開く。
何年ぶりかに聴いた歌は、やはりこの男が歌っていたのだった。
「…やっぱりお前だったじゃないか」
「起きてるとは思わなかったな…まぁいいが」
詰問口調のクラウドに、しらばっくれるレオンだった。
「…でも何でいきなり歌なんか」
「お前が買っただろうこのディスクを置いている店、再建委員会が噛んでいる」
「え」
かつての歌を復刻させたいと持ちかけられ、街中を駆けずり回って持ち主を探した。
残念ながらそのグループのメンバーは誰一人生存しておらず、契約していたレーベルももはや存在しない今、かつてのディスクを復刻させるには多大な苦労を伴った。
苦労の成果が、あの人気だった。
「当時のもの全てではないが、結構皆大事に持って逃げていたようだ。諸々の手続きが終われば、順次取り扱い商品は増える予定だ」
欲しいものがあるなら、また気が向いたときにでも行ってみるといい。
種明かしをされ、クラウドは納得した。
もう用はないとばかりに再び床に沈んで目を閉じたレオンを見やり、クラウドは呟く。
「Let me fill your heart with joy and laughter.Togetherness, well that’s all i’m after.」
レオンの目が開いた。
クラウドを見つめ、ため息混じりに笑ったようだった。
「…だから、言ってるだろう」
お前が俺を必要とするなら、俺はいつでもここにいる。
恥ずかしい愛の告白など、必要ない。
全てが終わったら、ここに帰ってくればいいだけの話だ。
言えば、あからさまに動揺した瞳を揺らして、クラウドは無言でサニタリールームへと消えて行った。
「…全く…」
恥ずかしいヤツだ。
よくそんなセリフを言えたものだ。
よく出来た歌詞は、一途に相手を想うラブソングだ。
そんなもの、必要ない。
過去の古き良き時代の思い出を、今生きている俺達は超えなければならないのだから。
I’ll be there.
これだけ、知っていればそれでいい。
END
歌はJackson5のアレのつもりで。