指定されたホテルの部屋の扉をノックする。
 開いた扉の向こうに立った男は笑みを浮かべ、「待っていた」と一歩引いて中に入るよう促した。
 腰掛けるように指示されたのはベッドであり、男自身は備え付けの椅子に座り、飲みかけと思しきティーカップを口へと運んでいる。 向かいにあるもう一脚の椅子に座らせる気はないようだった。
 指示されたとおりベッドの縁へと浅く腰掛けるが、マットの柔らかさで腰が埋まる不快に眉を顰める。
 大人しく従う様子を満足そうに眺めやりながら、男はティーカップをテーブルへと戻し重々しく口を開いた。
「スコール、君に新しい仕事をお願いしようと思っていてな」
「…どのような内容でしょうか」
「最近、他の世界から流れてくる者が増えているだろう?一番街に新しくアパートメントを建設する予定なのだが、知っているかな」
「はい。予定地に測量が入っているのを見ました」
「そうか。可能な限り早急に建設しなければいかん。だが大きすぎると時間がかかるし、小さすぎるとあぶれる者が出るかもしれん。それは避けたい」
「はい」
「現状どの程度の者が新築のアパートメントに居住する気があるのか、調査をしてもらいたい」
「…すでにこの街に住んでいる者を優先で、新築のアパートメントに住まわせる、ということでしょうか」
「その通り。新規に流れてくる者は、立ち退いた所に入ってもらう。先住民が優先だ」
「……」
 言葉だけ聞けばとても素晴らしい案だった。
 すでにこの街に住んでいる者達は、働ける者は働いて収入を得、税も納めている。とはいえ新しい住居に移るだけの蓄えがある者はまだほとんどいない状態であり、手狭であっても我慢するしかない者もいた。それを街が支援してくれるのだという。
 希望する者は多そうだった。
「今後も増えるようなら建設予定はもちろんある。まずは調査をしてもらいたいのだ」
「わかりました」
「一人では大変だろう。依頼はシドにするから、一緒にやるといい。詳細はそのときに話す。それでいいな?」
「ありがとうございます」
 素直に謝辞を述べれば、男は「だが」と、もったいぶった。
「…これは金のかかる依頼だ。やりたがる連中は、山のようにいる」
「……」
 ホラ来た、と、スコールは思う。
 最初からシドに依頼すれば済む話であるのに、この男がわざわざスコールを呼び出し、先にスコールへ話したのには理由があるのだった。
「君達がこの街に来て、どれくらいになるかな」
「…半年ほどです」
「まだまだ新参だ。大きな案件を任せるに当たって、信頼できるのか、という声があってな」
「……」
「無論私は君達に頼みたい。君達…とりわけ、君のことは高く買っている。その意味はわかるな?」
「……」
 男は立ち上がり、黙したままのスコールの元へと歩み寄る。
「初めて依頼をしたのは三ヶ月前だったな。君は完璧に仕事をこなしてくれた。私はとても満足した。…それに」
 頭を優しく撫でた後、髪を掴んで上向かされ、痛みにスコールの顔が歪む。
「私はとても優しいだろう?」
「……」
 どこがだ、と思う。
 顔を背けることを許さず、男はスコールの瞳を覗き込み、笑みの形に唇を歪めて見せた。
「スコール、君は賢い子だ。私が何を言いたいか、わかっているな?」
「……」
 わかりたくない。
 だが男が要求して来るだろう内容を、知っていた。
「君はとても素直で、いい子だ。いつだって私を満足させてくれる。そう、初めて君を抱いた時もそうだった。君は私のことが好きだろう?」
「……」
 肯定も否定もしなければ、この男は一人で勝手に都合のいいように解釈するのだった。
 大人しく抱かれたのは好きだからだ、という安直な思考は羨ましくなる程だ。
 拒否した後必ず起こるだろう面倒を考えれば、大人しく言うことを聞いた方が得策であることは明白で、事実この街で随分と楽に暮らせるようになっていた。
 食うに困ることはない。
 仕事は定期的に入ったし、エンジニアで器用になんでもこなせるシドの評判も上々だった。
 この男が関わらない仕事の依頼も増えてきており、流れ者であるスコール達が、この街での立場を確立することもそう難しいことではなくなっている。
 だが、まだダメだ。
 拒否するには早すぎる。
 この男が持ってくる仕事と、報酬と、今後の評価を考えれば、まだ大人しくしている必要があるのだった。
「…何を、お望みでしょうか」
「ああスコール、君は本当に可愛いな。君と、君が共に生活する彼らの生活は保証する。約束しよう」
「…ありがとうございます」
 満足そうに笑う男は、この街で一番の権力を持っていた。
 厄介な絡まれ方をし、運が悪かったというしかないが、己の身体一つ差し出すだけで、生きていく上での大部分の苦労がなくなるのだから、安いものだと思う。
 相手は権力者であり自己保身能力が高い為、身の破滅を招くような要求はしてこなかったし、口が堅いのはもちろんのこと、他人に妙な噂を流される心配もなかった。
 抱かれたからと言って別段、困ることもない。
 どうでもいい範疇のことであった。
 己の最優先は闇に落ちた自分の世界を取り戻し、そこで生活を再建させることにある。
 それ以外のことは、瑣末時でしかないのだった。
「では、服を脱ぎなさい。抱いてあげよう」
「…はい」
 抱いてくれなくて結構だったが、この男はスコールもそれを望んでいると本気で思っているようなので、訂正するのも馬鹿らしい話であった。
「心配せずとも、今回の依頼は私が責任を持ってシドにする。安心しなさい」
「…ありがとうございます」
 棒読みになるのは仕方がない。
 相手の胸先三寸、嫌な言葉だと思うのだった。
 服を脱げば、男も脱ぎ、ベッドに横になっていた。
 手招かれるまま男の上に跨がって見下ろせば自分で慣らせとオイルを渡され、「ここで?」と問えば「そう、私の上で」と返されため息を飲み込んだ。
 大人しく左手をベッドについて自重を支え、右手で後ろを探ろうとするが、男の手が背に回され抱き寄せられた。尻だけを高く突き出す形になったが構わず指を突っ込む。
 男の舌が胸を舐め始め、片手で先端を摘まれ腰が揺れた。
「っぁ…ッふ、」
「まだまだ、もっと感じるようになってもらわないとな…」
「は…っ」
 強く吸われ、押し潰すようにこね回され、執拗に舐め回されて後ろに力が入り、思わず己の指を食い締める。動かなくなった指を無理矢理押し込み、力を抜いて数を増やして押し広げ抜き差しする頃には、己のモノが勃ち上がって震えていた。
 男は腹をスコールのモノに押しつけて、スコールの指の動きで揺れる身体に合わせて擦り上げた。
「あっ…ぁ、あ、ふ…ッ」
「そうか、やはり男の子だな、擦られると気持ちイイか」
「は、…ッん、ん…っぁ…!」
「だがまだイっちゃいかんぞ。我慢だ。私がいいと言うまでな」
「…っく…」
 震えるスコールの腰を撫でさすり、男は下品な笑みを浮かべながら身体を起こす。
「どれ、私のモノを舐めてくれるかな。…どうも最近歳でな、君を悦ばせてやろうとしても、なかなかね」
 あぐらをかいて半勃ちの己のモノを取り出して、腕を引っ張り引き起こしたスコールの頭を押さえて、眼前に突きつけた。
「……っ」
「しっかり銜えて、舐めるんだ」
「……」
 逆らわず、モノに手を添え舌を出して舐めるスコールを見下ろして、男は笑う。
「ああ、可愛いな…本当に可愛い、スコール」
「…ん…っ」
 声を出さねば、不機嫌になる。
 気持ち良さそうにしてやらなければ、不満そうな顔をする。
 本当に、面倒くさい男だった。
 歳だからかどうかは知らないが、確かにコイツは勃ちが悪かった。
 さっさと勃たせて、さっさとイかせて、終わらせなければいつまでもダラダラと時間だけを浪費して、疲れるだけなのだ。
 その為にはテクニックが必要で、本当にどうでもいいことであるのにどこがイイのか、どこが感じるのかを勉強しなければならなかった。
 寝ているだけで終わってくれたら楽でいいのに。
 指先で撫でながら、口腔全体でモノを包んで締め上げる。
 カリを唇で挟んで上下してやれば、男が気持ち良さそうに喉を鳴らして悦んだ。
「そう…上手になった、スコール」
 全く嬉しくなかった。
 口の中でモノに力が入って勃ち上がり、自立する。
 髪を掴んで引き剥がされ、痛みに呻くが男は気にかける様子もなく、横になれと当然のように命令をして、スコールの上にのし掛かった。
「胸は自分で触りなさい。…こちらは、触ってはいけないぞ」
 スコールのモノを一撫でして触るなと指示をして、スコールの両足を広げて一気に奥まで突っ込む勢いで、先端を押し込んだ。
「ぃ…ッ…っ…ぁ、ぐ…ッ!」
 痛みに仰け反り顔を顰めて呻くスコールを見下ろして、男がああ、と声を漏らす。
「痛かったか…少し興奮してしまったな。ああ、大丈夫だ、優しく挿れてやるから、力を抜け」
 なら最初からちゃんとやれよとスコールは言いたかったが無言で頷き、従順に足を開いて、ソコに手を添え開いて見せた。
 男は大層喜んで、一回り大きくなったモノをスコールに押しつけた。
「そんなに待ちきれないか。いい…淫乱な子は大好きだよスコール…っ」
「ぁ…っゆっくり、挿れて…っ」
「もちろん、今度は、優しく…っ挿れて、あげよう…ッ」
 言葉通りゆっくりと、先端が飲み込まれればあとは奥までスムーズだった。
「んん…ッん、ぁ…っ」
「ああ、…とても熱いよ、スコール…っ」
 男の抽挿は独りよがりで全くスコールに配慮することがない。
 ダッチワイフでも相手にしてろと言いたくなる程に、最初からガツガツ突き上げられ位置も微妙にずれていて、正直なところ不快であった。
 不快から逃れる為に胸を触って紛らわせながら、不快のない場所、感じる場所へ導く為に腰を揺らして、位置をずらす。
 力任せに掴まれた腿に痛みが走るが、ヘタクソな突っ込まれ方をする事に比べればまだ我慢できた。
 ヘタクソ、と指摘することはできないのだから、自分でなんとかするしかなかった。
 不快に対する反射的な締め付けでも、男は満足げに息を吐く。
「スコール…っスコール…っああ、本当にイイ…ッ」
「あ…ッ、ぁん、ん、ん…ッ」
「もうイくよ、…っ出すよ、っスコール…ッ!」
「っぁあ、ん、ふ…っ」
 さっさとイけよこのヘタクソが。
 中に出され、引き抜かれて精液が流れ出す生温かな感覚すら不快だった。
 男はスコールの足を広げたまま、ソコから溢れてシーツに落ちる己が出したモノを指先で掬い、スコールの眼前にそれを突きつけ舐めろと要求した。
「ん…っ」
 舌を伸ばして男の指先を舐めてやれば、頭を撫でて喜ばれた。
「美味しそうに舐めてくれるじゃないか、嬉しいよスコール」
「……」
 美味いわけがなかった。
 だがこれで終わりなら、それくらいのサービスはしてやっても構わなかった。
 スコール自身はイってもいないが、どうでもいい。
 いや、どうでもよくはないが、男が去ってから後でどうとでもできることだった。
 早く帰れと願うスコールの身体を引き起こし、男は細長い布を取り出して、スコールの目を覆って頭の後ろで結んだ。
「…あの…?」
「今日は私からのプレゼントを受け取ってもらおうと思ってな」
「…は…?」
「若い君を十分満足させてやれないことを、私なりにとても気にしているんだ」
「…いえ、そのお心遣いだけで、十分です…」
 目隠しをされた時点で、嫌な予感しかしなかった。
 なんだ。
 何をする気だ。
「本当に可愛いなぁ君は…大切にするよ。これは誓おう」
「……」
 誓ってくれなくて結構だった。
 扉が開く音がして、誰かが入ってくる気配があった。
「ああ、時間ちょうどだな。この子を満足させてやってくれ」
「…は…!?」
 腰が浮いた。
 冗談ではなかった。
 気配は二つ。男のもので、おそらく見知らぬ者だった。
 無意識に逃げようと浮き足立つスコールの腕を掴み、耳元で囁く男の声は偽善に満ちていた。
「君を傷つけるようなことはせんから安心しなさい。私もそこで見ているから、たくさんイイ声で鳴いてくれ」
「……ッ!!」
「たくさんイって、たくさん気持ち良くなって欲しいだけだ…大丈夫、彼らは若い。たっぷり可愛がってくれる」
 最悪だった。
 望まぬ行為を見知らぬ男に強いられることも、そんなものをこの男に見せることも、最悪だった。
「私は君に淫乱になって欲しい。…自ら乗って、腰を振ってくるような。大丈夫、君ならすぐだ。まずは彼ら相手に、やってみろ」
「……」
 ふざけるな、と言いたかった。
 別方向から腕を掴まれた。
 だが今更拒絶など、不可能だった。
  
 
「楽しみなさい」
  
 
 最後通告は、残酷に響いた。
 逃げられない。
 拒絶もできない。
「……」
 前向きに楽しもう、と思える精神力が必要だった。
 行為自体はどうでもいい。
 拒否反応が出るのは、見知らぬ男だったり、ヘタクソで自己中心的な男だったりするからだ。
 だが。
 考えてみれば矛盾する。
 …行為自体がどうでもいいなら、相手が誰でもいいはずだ。
 どうでもいいことだ。
 どうでもいいことのはずだった。
 己にとって重要なのは、小さな自尊心を満たすことではない。
 些末事に拘ることでもなかった。
 ならば効率を上げる為に、さっさと受け入れてしまった方がいいのでは、と思う。
 淫乱という言葉自体に違和感はあるが、なれるものならなった方がマシなのでは、と思う。
 不快な思いをすることも減るだろう。
 どうせなら気持ちイイ方がいいに決まっているのだし。
 今後がやりやすくなる。
 この街にいる限り、この男がいる限り、これからも付き合わされることになるのは確実だった。
 ヘタクソ相手に、自分も気持ち良くなりながらさっさと終わらせることができるようになるのなら。
 これ以上の効率化は存在しなかった。
 ベタベタと胸を触り、後ろを探ってくる手に己の手を乗せ、スコールは小さく息を吐いた。
「っ…は、…っもっと、…ッ」
 四本の手が伸び、ベッドに横になった男の勃ち上がったモノの上に腰を落とされた。
 ぐぷ、と音を立てて飲み込む感覚にスコールは震え、背を反らせて息を吐く。
 太くて長いモノがぎっちりと中を満たし、肉襞がひくついて絡みついた。
 男に背を向け受け入れている腰を両手で掴まれ、ベッドのスプリングを軋ませながらゆっくりと突き上げられる。抉られ押しのけられ、ギリギリまで抜いて奥まで犯されるたびに声が漏れた。
「あっあっぁ…っふぁ、…ッァあ、い…ッ!」
 ゴツゴツと擦られ突き上げられて、たまらずモノを締め上げる。
 イイ所を狙って突いてくる的確さが、とても気持ち良かった。
 声を上げるスコールのすぐ側に立ったもう一人の男が、スコールの手を取り自らのモノを握らせた。
 勃ちあがったソレは固く反り返り、スコールが指先でカリから先端を撫でれば口元に押しつけられ、銜えさせられた。
「んぐ…ッん、っぁ、ふ、んん…っんっ、ん…ッ」
 下から突き上げられ、口に突っ込まれて呼吸もままならず、スコールは喘ぐ。
 歯を立てないようにだけ気をつけながら、突き上げられる動きに合わせてモノを出し入れしてやれば、後頭部を掴まれゆるゆると動かされる。唾液が溢れてスコールの顎を伝い落ちた。
 下に集中する為に、銜えたまま舌を這わせ、絞り気味で放置する。男は自分がイイように、スコールの頭を動かした。
 一定の速度で下から突き上げてくる男のモノは、スコールの中で質量を増していた。
 ぐちゅぐちゅと音を立てるソコを突き上げてくる動きに合わせて腰を動かし、肉を打ち付ける。
「ん…ッん…ッんん…っ、ぁん、ん、ァ…ッ」
「……っ」
 男達は一切口を開かなかったが、呼吸が乱れ、息を詰める音だけは確かに聞こえた。
 突き上げるスピードが上がり、ガツガツと肉を打つ音が立ち、激しさにスコールはたまらず口から男のモノを引き抜いた。
「あ、っあ、ぁ、ッア、あん、んふ、…っぁあ、っや…っあ…ッ」
 すごくイイ。
 奥まで抉られ、擦られて、体温が上がった。
 汗が流れた。
 追い上げられ、熱が溜まってたまらなくなる。
「ぁ…っあ…ッイ…ッい、…んん…ッ」
 もう少しで、イけそうだった。
 イけそうだったのに、男が先にイった。
 ぴたりと動きが止まって、下にいる男が呻いた。
 びくびくと下半身を震わせて、スコールの中に、出している。
「…っふ…っ、ぁ…っ」
 なんだコイツも、最悪だな。
 俺を気持ち良くさせるんじゃなかったのかと思いながら中を締め付けてやれば、男が小さく呻いた。
 腰を掴んだままの両手がスコールの身体を持ち上げ、モノを引き抜く。
 今度は両腿を掴まれ、開かれた。
 スコールは後ろに倒され、男の身体の上に仰向けになる。
 その不安定さに重心をどこに置くべきか瞬間迷ったが、すぐに下の男の手が胸に伸び、先端を摘んでぐりぐりと動かした。
「っ、ぁ」
 ビクリと跳ねた腿を掴んでいたもう一人の男のモノが、スコールを犯す。
「っ、…ッあ、ぁぁ、っあ、っや…ッ!」
 ずぶずぶと、容赦なく奥まで抉られスコールの身体が跳ねる。
 イきかけた身体はすぐに熱を持ち、ぬめる中が擦られ、前立腺を狙って突かれてスコールは震えた。
「い…ッイ、…っく、や、っぁ、あぁっあ…ッア…ッ!」
 大きく震えたスコールの身体を、下にいた男がしっかりと抱き留める。
 飛んだスコールの精液が、腹から男の手を汚した。
 脱力するスコールに構わずスコールの中を蹂躙する男のモノの感覚に、すぐに身体は反応した。
「っぁん、待…っあ、や…ッあ、っぁ、あぁァ…ッ」
 しっかりと抱き留めていたはずの手はいつの間にか胸を触り始めており、敏感になった身体には刺激が強い。
「んっ、やめ、さわ、るな、…っひ、ぁ、っぁ、あ…っ」
 下の男のモノもまた勃ち上がり、スコールの尻に当たっている。
 終わらないのではないか、と思うと恐怖すると同時に、ぞくぞくと背を走り抜けるのは闘争心に似た快感だった。
 ああ、そうか。
 そうだった。
 こいつらを、ころしてしまえばいいのだ。
 俺はまだ、イける。
 こいつらは、あと何回イくのか。
 限界は、ある。
 かならず、ころす。
 全員まとめて、ころしてやる。
「は…っん、ん…っもっ…っと、奥…ッ」
 ああ、若くて良かった。
 こいつらに、ころされる前に、ころす。
 俺が、ころす。
 かならず、ころす。
    
  
 俺がそう簡単に落ちると、思うなよ。
 
 
 
 
   
「スコール…君は素晴らしい…」
「……」
 感動に打ち震えたような男に向かって、スコールは冷めた視線を投げた。
 目を覆っていた布が取り払われた時にはすでに二人の男はいなくなっており、ベッドの上には元凶である男と、汗や精液や唾液で汚されたスコールがいた。
 早く風呂に入って綺麗にしたいと思うスコールの思いなどおまかいなく、男はスコールの身体を俯せて、散々蹂躙され溢れる精液で汚れたソコを指で開いてまじまじと眺めている。
「…あの…」
 のどが痛い、と思いながらスコールが声を上げれば、男はうっとりと細めた瞳で見つめながら指を中に突っ込んだ。
「っ…ん、な…んですか、…っ」
「ああ…すごい、いっぱい出してもらったんだな…」
「……」
 どう答えるのが正解かわからなかったので、スコールは沈黙を守る。
「スコールもたくさんイったな。気持ち良かったかな?」
「…はい…」
 望んだわけではない。
 内心を隠したスコールの返答に、男は満足げに頷いた。
「君が犯されているのを見て、また勃ってしまった。私もまだまだ若いと言うことだな」
「……」
 知るか、と言いたかったが、もしやという思いで男を見れば、男は下衣を寛げていきり立つモノを出していた。
「…っちょ」
 さすがに勘弁しろよと、言いたかった。
 言いたかったが、言えなかった。
 問答無用で突っ込まれ、スコールの背がしなった。
 シーツを掴み、奥まで一気に押し入ってくるモノの衝撃に耐える。
「っ…は…ぁッ…」
「ああ…スコール、素晴らしい…っ」
 衝撃はあっても、痛みはない。
 散々に擦られ熟れた肉は悦んでモノに食いつき、根元から締め上げながら先端を絞る。
 ひくひくと腰を震わせるスコールを押さえつけ、男はじゅぷじゅぷと音をさせながら抜き差しをした。
「っすごい…ああ、すごい、スコール…ッ素晴らしい…ッ」
「っあぁ、っは、ぁん、ぁ…ッあ、っ…ぁ…ッ!」
 容赦なく抉るモノは、相変わらず微妙な所を突いていくが、もはや不快は感じなかった。
 自分が感じる所へ導くように腰を振れば、男は熱いため息を吐いて喜んだ。
「素晴らしい…っなんていけない子なんだ…ッもう、イきそうだよ…っ!」
「ぅん、んん…ッは、ぁ、あ…ッ」
 さっさと、イけ。
 震えるモノを、絞り上げる。
 力の加減は、もう覚えた。
 今後この男の相手は楽になるはずだった。
 あっさりイった男が呼吸を荒げながらスコールの背を抱きしめるようにのしかかってきて、こればかりは不快で殴り飛ばしたくなるのを耐えねばならなかった。
「もう、君以外を抱く気になれないな…っ」
「……」
 いや、正直他を探して頂きたかった。
「また彼らを呼んでやろう。犯されている君は、とても素敵だった」
「……」
「嫉妬で狂いそうになる。そして勃つ。ああ、本当に素晴らしい…」 
「……」
 ああ、帰りたい。
 こんな奴らに絡まれることなく、普通に暮らしたかった。
「次はいつがいいかな。私もスケジュールを調整しよう」
「……」
 ころしてしまえば、楽になる。
  
   
 こいつらよりも上位に立てば、楽になる。
 
   
 一方的に犯されるのはごめんだった。
 こいつらを、ころして黙らせる。
 命を奪うわけではない。
 絞り尽くして、骨抜きにしてやればいいのだった。
 結局淫乱になるしか道はないのか。
 …ああまったく、望んだわけではない。
 望んだわけではないのに、どうしようもなかった。


END
リクエストありがとうございました!

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